[ ICT ]

【電子版】松岡功の「IoT&AI最前線」(8)IoTだけでなくAIにも求められる“リアルタイム性”

(2017/7/14 05:00)

 IoT(モノのインターネット)の活用において求められてきた“リアルタイム性”が、人工知能(AI)の活用でも求められるようになってきた。そんな印象を強く抱いた医療分野での新たな発表が先頃あった。今回はこの話を取り上げたい。

AIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステムを開発

  • (写真1)記者会見に臨む国立がん研究センター中央病院内視鏡科の山田真善医員

 その発表の内容は、国立がん研究センターとNECが、内視鏡検査時にAIを用いて、大腸がんや大腸腫瘍性ポリープ(前がん病変)をリアルタイムに発見するシステムの開発に成功したというものだ。

 このシステムは、大腸の内視鏡検査時に撮影される画像で大腸がんや大腸腫瘍性ポリープをリアルタイムに自動検知し、内視鏡医の病変の発見をサポートするものである。

 また、臨床現場でリアルタイムに医師にフィードバックするため、画像解析に適した深層学習を活用したAI技術と独自の高速処理アルゴリズム、画像処理に適した高度な画像処理装置(GPU)を用いて、1台のPCで動作するプロトタイプを開発したという。

 発表会見では、とくに大腸腫瘍性ポリープは大腸がんの前がん病変であるため、内視鏡検査時に見つけ出して摘除することにより、大腸がんへの進行を抑制できると説明。ただ、ポリープは内視鏡医が肉眼で見つけるものの、サイズが小さかったり形状が認識しにくかったりすると、見逃されることもある。

  • (図1)リアルタイム内視鏡診断サポートシステムの概要(出典:国立がん研究センターとNECの発表資料)

 今回のプロジェクト担当である国立がん研究センター中央病院内視鏡科の山田真善医員(写真1)はこの点について、「肉眼での認識が困難な病変や発生部位、医師の技術格差により、24%が見逃されているという報告もある」とし、「医師による見逃しを防ぐのが、このシステムの最大の狙いだ」と強調した。

 このシステムの開発にあたっては、国立がん研究センター中央病院で所見を得た約5000例の内視鏡画像をNECのAI技術に学習させた。そのAI技術を用いて新たな内視鏡画像を解析したところ、前がん病変としてのポリープと早期がんの発見率が98%に達したという。(図1)

 今後はさらに、肉眼での認識が困難な平坦・陥凹病変をAIに学習させてシステムの精度を上げ、臨床試験を行った後、日本のみならずグローバルでの実用化を目指す構えだ。

IoTだけでなくAIにもリアルタイム性が求められる理由

  • (図2)ポリープ検出の例(出典:国立がん研究センターとNECの発表資料)

 会見では、内視鏡によって大腸の内部が映し出され、移動するにつれて瞬時にポリープなどを検知し、モニターに該当部位を丸印で表示し、音で知らせてくれるといったデモも行われた。そのうえで、山田氏は「このシステムにおいてAIを活用したリアルタイムな自動検知は大きな特徴の1つ」と強調した。(図2)

 以上が、国立がん研究センターとNECによる発表の内容だが、筆者が非常に印象深かったのは「AIの活用でもリアルタイム性が求められる」ということだ。「AIの活用でも」と述べたのは、リアルタイム性はこれまでIoTの活用において求められてきた印象が強いからだ。

 だが、考えてみると、これまでIoTの活用に求められてきたリアルタイム性は、すなわちIoTが生み出したビッグデータを素早く分析してさまざまな用途に反映させることにあった。その分析にAIが活用されるようになれば、当然ながらAIのアウトプットもリアルタイム性が求められるようになるわけである。

 本連載は「IoT&AI最前線」と銘打っているが、IoTとAIは密接な関係があるだけでなく、リアルタイム性が非常に重要な要素であることを強く意識して取材を続けていきたい。

(2017/7/14 05:00)

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