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[ 商社・流通・サービス ]
(2017/9/23 21:30)
世界市場(東京都港区、村田卓弥社長、03・5785・3968)は、日本産の野菜や果物といった青果物の輸出・販売で、台湾市場の開拓に乗り出す。同社が市場開拓を進める国・地域は香港に次いで2例目。現地パートナーを探し、ブドウ、ミカン、柿など、日本産に競争力がある青果物を台湾内で流通させる。実績をつくり、日本の農家に海外輸出・販売のメリットを示す。その上で、インターネットを通じて日本の農家と海外の販売店が直接受発注をやり取りできるプラットフォーム「ニッポンイチバ(NIPPON ICHIBA)」を生産者側、販売側の双方に訴求する。
店頭までの時間、コストを抑制へ
ニッポンイチバは、世界市場の親会社である農業総合研究所(農総研)が提供する流通システム「農家の直売所」の海外版と言える。これまで青果物の流通には複数の中間業者が介在していたが、これを世界市場だけにすることなどで、青果物が店頭に並ぶまでの時間を短くし、さらに流通コストも抑える仕組みだ。
村田社長は、台湾の流通の仕組みが日本とよく似ていることから、「ニッポンイチバを利用した日本産の青果物の輸出だけだなく、将来、『農家の直売所』という仕組み、それ自体を台湾に導入してもらい、現地に流通の変革をもたらしたい」とし、同社による台湾展開で目指す最終的なゴールを言葉にした。
近くパートナー契約に合意も
現地パートナーについては、台湾内の商流・物流を一手に引き受けられる企業を中心に探す。
台湾の新光グループと日本の三越グループが共同出資で設立した新光三越のほか、頂好超市(ウェルカムスーパー)とすでに踏み込んだ交渉を進めている。それぞれ価格などに両者が合意でき次第、契約する運びだ。
すでに台北市のシティスーパーに商品を卸す地元企業1社と契約している。9月前半に、台湾で人気があるシャインマスカット、種なしピオーネ、種なし巨砲といったブドウ3品種(計1トン程度)を出荷した。
今後、10月4日の「中秋節」から2018年2月16日の「春節」にかけて、中華圏では一段とモノの動きが活発になる。村田社長はこうした動きを見据え、「これから秋に向けて、日本でもさまざまな青果物が旬の時期を迎える。現地パートナーを増やし、出荷する青果物の種類、量ともに伸ばしていく」とする。
台湾への輸出を促す呼び水に
同社の市場開拓で先行させている香港と違い、台湾には難しい面もあるという。村田社長によると、「台湾は青果物の自給率が高いのに加え、味も良い。中には日本産の青果物に比べても遜色ないものもある」。競合した場合、手ごわい相手になりそうだ。
さらに、残留農薬の規制が厳しく、日本と異なる基準で運用されていることも、日本の農家が台湾に輸出しようとする際のモチベーションを引き下げる一因になっている。
その一方で、現地では日本産にブランド力があるほか、ブドウ、ミカン、柿など一部のフルーツについては、現地で収穫できなかったり、収穫できても日本産の方が味が良かったりなどで、日本産が競争力を持っている。
世界市場では、台湾市場の開拓を通じて、現地で売れる日本産の青果物の種類、合理的な価格などを調べ、日本の農家に情報提供し、それを輸出を促す呼び水にする構え。
日本産のリンゴ、ブドウ、モモに商機も
果物に限っていえば、中央果実協会が3月にまとめた資料によると、台湾はバナナ、マンゴー、ライチなど熱帯・亜熱帯果実の栽培を中心に自給率が9割弱の高水準だ。ただ温帯果実については気候条件が栽培に適さず、その多くを輸入している。
最も輸入量が多いのはリンゴ。これにキウイ、ブドウ、モモが続く。国別では米国をトップに、ニュージーランド、チリ、日本の順。百貨店やスーパーで売り出される価格次第で、日本産の果物が台湾市場に食い込むチャンスが十分にありそうだ。
(2017/9/23 21:30)