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【電子版】論説室から/「専守防衛」から変質しつつある日本の自衛力

(2017/9/14 05:00)

 北朝鮮による核兵器や弾道ミサイルの開発によって、東アジア諸国はこれまでにない水準の脅威にさらされている。日米同盟のある日本にとっては、核ミサイルへの対抗策以上に、通常兵器の戦力均衡を維持することが重要となる。

 自衛隊は専守防衛・水際撃退を基本方針とし、装備品についても自ら厳しい制約を課してきた。具体的には海を越えた陸上の施設を標的とする「対地」攻撃能力を持たないことである。精神規定にすぎない面もあるが、専守防衛の姿勢を内外にアピールする意味は、それなりにあった。

 一方、世界の武器市場では、ミサイルをはじめとした長距離攻撃兵器や、離島への上陸を支援する新たなシステムの開発が進んでいる。途上国などでもこうした兵器を導入しやすくなる一方、自衛隊は水際撃退に徹することが徐々に難しくなってきた。

 近年の自衛隊の新たな装備品は、旧来の専守防衛の概念からすると首を傾げたくなるようなものがある。「いずも」「かが」など4隻のヘリ空母や、潜水艦の増備や無人攻撃機の導入は自衛隊の活動範囲を大きく広げる。新設した「水陸機動団」は、映画「史上最大の作戦」のような”敵前上陸”機能を日本が持つことを意味する。いずれも周辺国を脅かすような大規模なものではない。ただ国民からみて、自衛隊は水際撃退に徹するのではなく、日本の国土の外でも安全保障に携わることが常態化しつつある。

 2018年度予算の概算要求にも、注目すべきものがある。100億円を計上した「島嶼防衛用の高速滑空弾の要素技術の研究」と、77億円をかけて取り組む「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究」だ。

 どちらも、これまでのミサイル攻撃の範囲外から敵を攻撃する超長距離の新技術。沖縄などの離島を想定し、島を占拠した敵を遠くの島などから攻撃するための技術である。対艦誘導弾は艦船攻撃用だが、滑空弾は「対地」攻撃を想定している。

 北朝鮮などの弾道ミサイルは、わざわざ宇宙空間まで打ち上げてから目的地に向けて落下する。開発も難しく、高価な武器だ。滑空弾は飛行機のように大気圏内を飛翔して目的地に届く武器。自衛隊は「島嶼防衛用」としているが、設計によっては海の向こうの大陸を攻撃する能力を持つことも可能だ。しかも弾道ミサイルほど高価ではないと見込まれる。米国なども研究に着手している。あくまで今は要素技術の研究段階であり、将来配備することになっても武器使用には制約が課されるだろう。

 自衛隊が「専守防衛」を超える懸念がある攻撃能力を有することに、不信感を持つ向きもあるだろう。しかし戦力均衡の考え方からすれば、日本がこうした優れた通常兵器を持たなければ安全保障上の均衡が崩れ、不測の事態を招く危険が大きくなるのだ。

 国民のひとりとして、自衛隊の良識を信じている。同時に、活動領域を国土の外に広げつつある自衛隊を、どうコントロールしていくかを考えることが重要になってきたと感じる。

(加藤正史)

(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)

(2017/9/14 05:00)

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