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AI、IoTをテーマに10周年記念シンポ—モノづくり日本会議

(2017/9/29 05:00)

  • 設立10周年記念シンポジウムの様子

モノづくり発展の道筋探る

モノづくり日本会議は日刊工業新聞社と共催で8月31日、名古屋市中村区のキャッスルプラザで設立10周年記念シンポジウムを開催した。テーマは「中部の次世代モノづくり―“AI”“IoT”が製造業の未来をどう変えるか」。豊田中央研究所の菊池昇所長が「サスティナブルな交通社会を創り出すAIや自動運転についての考え方」、SKグローバルアドバイザーズの神永晉代表取締役が「トリリオン・センサとMEMS」をテーマに講演した。モノづくりの集積地である中部地区の未来を展望しつつ、日本のモノづくりのさらなる発展につながる道筋を探った。

豊田中央研究所所長・菊池昇氏

■「サスティナブルな交通社会を創り出すAIや自動運転についての考え方」

  • 豊田中央研究所所長・菊池昇氏

AIは拡張知識の時代に

人工知能(AI)はむしろ拡張知識、オーギュメンテッドインテリジェンスといったほうがいい時代に入っている。これからのキーになるテクノロジーは4次元プリンティングや拡張現実、ブレイン・コンピューター・インターフェース、コネクテッドホーム、ビューマン・オーギュメンテーションといったところになる。

私は日本のロボットが好きだ。米国では、ほとんどが軍事目的のロボットになってしまう。フィールドロボットというジャンルになるのだろうが、木の枝を払うロボットを作るとか、畑を耕すロボットを作るとか、私は、日本はこうした方向に向かったほうがいいと思っている。

かつて、学生たちにAI、オーギュメンテッドインテリジェインスが何で必要かを話したことがある。

例えば、すごいパワーで設計した掃除機がある。いつも一定でぐるぐる回っている。ゴミがたくさんある時、それはパワーを出してくれたらいい。でも、何もない時や細かいゴミを吸う時は、フルパワーで稼働する必要はない。ちょっとしたセンサーを取り付けて、あまり掃き取るものがなければパワーを落とせばいい。

通常のデザインだと、一定の性能を出すために一定のオペレーションをしてしまう。AIというのはフルパワーで活動しなければいけない時と、そうでない時の違いを入れ込むロジックをつくる一つの手法だ。

エキスパートシステムという言葉を聞いたことがあるだろう。日本人がエキスパートシステムを考えると匠の技を機械化しようとか、すごく難しいことを考える。しかし、米国でエキスパートシステムというのは、例えば、看護師が間違わないように棚に薬を入れるためのアルゴリズムを開発しようとなる。それが日本に来ると大変難しいものになってしまう。

日本は産業用ロボットで断トツだ。ところが、サービス用ロボットというと、介護用ロボットやおもてなしロボットとなる。高齢者の本当のニーズは、高い所にある物を取ってくれたり、上に何があるかカメラで見せてくれたりすることなのに。

自動車もそうだ。ラウンドアバウト(環状交差点)という信号なしの交差点というのが米国にある。ここになると、自分たちが開発したAIでは車同士が衝突してしまう。ところが、ディープラーニングと呼ばれる深層学習の手法を使った瞬間から“いけるじゃないか”となった。AIも機械学習、もしくはそれまでのいろいろなロジックがあるが、もうその時代ではないということをこのラウンドアバウトで経験した。

自動運転というのは技術開発としては、確かに面白い。しかし、本当はそうではない。自動運転そのものはイノベーションではない。自動運転を開発している研究者は、このセンサーがなければいけない、このアルゴリズムを3マイクロ秒で動かすのだという。それはそうだが、そもそもの部分は、やはり自動駐車したいからやるという話になる。

社会がある程度の発展段階になると、人間には社会性の能力が出てくる。そういうことはAIで何とかなる。そうすると、自動運転化するというのは社会性を身につけさせること、簡単なルールを作るということだけでできる。

モノづくりはやはり愚直にやるしかない。絶対に狙わなければならないのは二つ。使い勝手と、買ってくれる人たちの予想以上の付加価値だ。これは、おそらく豊田佐吉さんの用語でいえば、風合いだろう。それを出すこと。これに徹すれば、どの時代だって、どこの国のモノづくりだって生き残っていく。

車だって使い勝手、そして使う側の予想以上によかったと思えるものを作ればいい。やはりそこだと思う。

SKグローバルアドバイザーズ代表取締役・神永晉氏

■「トリリオン・センサとMEMS」

  • SKグローバルアドバイザーズ代表取締役・神永晉氏

地球規模の課題解決へ

ドイツが主導する「インダストリー4・0」、米国の「インダストリーインターネット」といったIoT(モノのインターネット)が現実となった背景には、微小電気機械システム(MEMS)ならびにセンサーの発展がある。MEMSセンサーは小さいだけでなく、さまざまなファンクションを組み込めるようになったことで、IoTの世界でいろいろな形で出てきた。

MEMSは1995年に世界最初のシリコン深掘り装置が開発され、製品化された。実は、私が携わってきた微細加工技術事業のシードテクノロジーで、微細加工によって多くのMEMSデバイスの新規開発が可能になった。自動車で多く使われ、2000年に入りゲーム機、スマートフォン、タブレットといったデバイスが現れ、普及が加速した。

一方、トリリオンセンサーは1兆ものセンサーをネットワークに接続しようというもの。医療、農業、環境、社会インフラなどあらゆる分野を覆うセンサーがネットワークに接続されることによってビッグデータの適用範囲を拡大し、社会や生活を大きく変える。ノーハンガー(飢えの解消)、メディカル・ヘルスケア・トゥー・オール(すべての人が医療の恩恵を受ける)など地球規模の課題が解決される。これがトリリオンセンサーのムーブメントだ。

年間1兆個のセンサーを使用する社会を約10年後に作ろうではないかと。年間1兆個は現在の年間需要の約100倍といわれる。それが医療、農業、環境などあらゆる分野を覆って社会や生活を大きく変え、地球規模の課題が解決される。

そういったアイデアがあり、本当にセンサーが世の中の課題を解決するキーなのであれば、みんなで知恵を寄せ集めて、どんなセンサーを開発して、どうやって世の中に実証するか考えてみようというのが、トリリオンセンサーサミットだ。

13年10月に、第1回がスタンフォードで開かれた。第1回のサミットで約300種類のアイデアが出た。医療、自動車、環境、エネルギーであり、それを支えるコア技術のマトリックスを作って具体的に進めていこうと申し合わせた。以来、頻繁に世界各地でサミットを展開している。

これまでのサミットでいろいろな集約がされたが、一つはIoTあるいはIoE(すべてのインターネット化)、そういった世界的な大きな潮流に乗った動きがまさに、このトリリオンセンサーだ。

急速に成長する組織の出現も大きい。グーグルに代表されるように、従来型の大企業とはいずれ置き換わっていく。さらに、AIで議論される現在の労働力の喪失。AIやIoTで従来型の労働力は要らないのではないか。また、膨大な情報を処理するソフトウエア、いわゆるアルゴリズムを実践する技術者が必要だ。そういった動きがまさにIoT、IoEなのだ。

センサーによって得られる情報に非常に価値がある。その情報で世の中の課題をどうやって解決するかという発想が必要だ。世のため、人のためにどうやって新しいビジネスを展開していくのかというモデルだ。それに役立つものをみんなで考えようというのがトリリオンセンサーの考え方だ。日本の皆さんの考え方がそれに乗っていけるかどうかだ。

日本は高齢化、老朽インフラ、環境対応、食料確保、エネルギー問題など課題先進国といわれている。高齢化社会では病気になってから大きなコストをかけて治療するのではなく、予知・予防医療が重要だ。これにセンサーネットワークが威力を発揮する。

では新しいシステム、ビジネスモデルをどう構築したらいいのか。一つはあらゆる業態で課題を共有することだ。中長期的な視点に立った上での異種・異業種の融合、それがオープンイノベーションだろう。さらにユーザーを巻き込んだバーチカルコラボレーションも重要だ。

あいさつ/日刊工業新聞社社長・井水治博

  • 日刊工業新聞社社長・井水治博

変革側の情報発信に力

モノづくり日本会議の前身となる「モノづくり推進会議」が発足したのが2007年秋。以来、日本のモノづくりが世界で勝ち残れるよう、モノづくりに携わる方々をつなぐとともに、未来を展望し、新たな価値を生み出すプラットフォームの役割を担ってきた。

中部地区は自動車、工作機械、航空機など製造業が多数集積する“モノづくり王国”だ。本シンポジウムでは中部地区のモノづくりの未来を展望し、ひいては「モノづくり立国・日本」の発展につなげていきたい。

モノづくりは今、大きな変革期を迎えている。日刊工業新聞社はIoT(モノのインターネット)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータといったモノづくりをめぐる新しい動きを報道するとともに、国際ロボット展といったイベント事業にも力を注いでいく。

最後に、モノづくり日本会議が関係各位に支えられ、10周年を迎えさせていただいたことに感謝申し上げる。

(2017/9/29 05:00)

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