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[ ICT ]

【電子版】松岡功の「IoT&AI最前線」(14)日本は世界に通用するAI技術を生み出せるか

(2017/10/6 05:00)

 日本はどうすれば世界に通用する人工知能(AI)技術を生み出せるのか。新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)がAI研究施設を設けたのを機に、その責任者に聞いてみた。

  • 新日鉄住金ソリューションズAI研究開発センター長の馬場俊光氏

NSSOLが「AI研究開発センター」を開設

 NSSOLが10月から、同社のシステム研究開発センター(横浜・みなとみらい)内に「AI研究開発センター」を設けて始動させた。研究所におけるAI関連研究を組織横断的に連携・推進し、顧客におけるAI技術の現場活用の支援を強化していくのが狙いだ。

 NSSOLのAIへの取り組みは、かつて新日鉄の組織内だった1980年代の第2次AIブームの際、ニューラルネットワークとルールベースエンジンを組み合わせることで高炉操業支援などに適用可能なAIシステムを実装するなど、国内でも先進的な技術検証を行ってきた背景がある。

 現在では、新日鉄住金の高度IT活用推進室とともに、製鉄現場をフィールドにITを活用した業務革新に資するさまざまな実証検証を推進。さらに製鉄現場で培った技術力や知見を生かし、製鉄以外の製造業における生産計画システムをはじめ、多種多様な業種・業務領域における知的作業支援システムを提供している。

  • 【図1】新日鉄住金ソリューションズにおけるAIの定義

 同社が先頃研究所で開いた記者会見では、AI研究開発センター長に就任した馬場俊光氏が活動内容や特徴を説明。以下には、その中から筆者がとくに興味深く感じた4つの話題を挙げておきたい。

 まず1つ目は、同社におけるAIの定義である。【図1】がそれだ。この図で注目されるのは、ロボットとAR(拡張現実)が重なり合いながら記されていることだ。馬場氏は「AIが高度に進むと現場の作業がロボット化するのは必然。従って、私たちはAIとロボットを同じ研究対象として捉えている」という。

“日本品質”をAI化すれば世界に通用する

 2つ目は、AI関連技術と業務領域をマトリクスで描いた場合の同社の強みを表した【図2】である。業務領域は製造業の内容が多めではあるが、強みが一目瞭然でわかる図になっている。この図の発想で、AI技術を手掛けている有力ベンダー各社の強みを整理してみたいものである。

  • 【図2】AI関連技術と業務領域をマトリクスで描いた場合の新日鉄住金ソリューションズの強み

 3つ目は、AI研究開発センターのミッションである。「複数AI技術横断の研究開発を進めることで、お客様における複雑化する課題を解決する」「AI関連のプラットフォームやプロセスの研究開発を進めることで、お客様のAI技術利用をサポートする」「AI技術により自社ソリューションへ価値を付加することで、お客様の課題を解決する」の3つだ。注目されるのは、いずれも「お客様の課題解決」を強調していることだ。この点にシステムインテグレータとしてのAI研究開発の立ち位置が見て取れそうだ。

 そして4つ目は、日本はどうすれば世界に通用するAI技術を生み出せるのか、だ。せっかくの機会なので、会見の質疑応答で聞いてみた。すると、馬場氏は次のように答えた。

 「デジタル化が進む米国では、AIを活用すればもっと社会の質が向上すると見られており、さらにドライブがかかっている状況だ。一方、日本でもデジタル化は重視されているが、現状ではAIを使うよりも熟練者のノウハウを大事にするほうが社会の質を維持できると考えている人たちが多いのではないか。そこには文化の違いがあるが、日本もそのうち熟練者のノウハウや会社の大事なデータをAIで活用するようになるだろう。その動きが本格化すれば、もともと社会の質が高い日本のAIは十分に世界に通用するようになる」

 グローバルでのAIの比較論議に、文化の違いを考慮するのは大事なことではないか。馬場氏のコメントを聞いてそう感じた。そして、同氏は「“日本品質”をAI化すれば世界に通用する」とも語っている。自信を持って臨みたいものである。

(隔週金曜日に掲載)

【著者プロフィール】

 松岡 功(まつおか・いさお)

 フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。

(2017/10/6 05:00)

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