[ オピニオン ]

社説/商工中金の不正融資−存在意義と役割分担を明確にせよ

(2017/10/16 05:00)

政府系金融機関の商工中金による不正融資問題は、民間金融機関との役割分担が曖昧な点が一因といえる。「民業圧迫」がかねて指摘される中で、あらためて政府系金融機関の存在意義と民間との役割分担を明確にする必要がある。

不正行為は、2008年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災などで一時的に経営が悪化した中小企業に対し、低利で融資する「危機対応業務」制度が対象。本来は経営難の企業だけに融資するはずが、健全な企業まで書類を改ざんして業績を悪く見せかけ、融資実績を水増ししていた。

昨年11月に発覚して以来、金融庁などが立ち入り検査し、商工中金による自主調査で、不正がほぼ全店で行われていたことが判明した。不正の多くは定義が曖昧な「デフレ」に対応するための融資だ。行員に過大なノルマを課していたことが不正につながったという。

政府は05年、商工中金の完全民営化を決め、08年10月に株式会社となった。だがその後、危機対応を理由に政府株売却は先送りされた。将来の完全民営化を防ぐため、危機対応融資の拡大で自らの存在意義を訴えようとしたと指摘する向きもある。

民間金融機関はかつて「晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げる」と揶揄(やゆ)されることもあった。そうした時代に、商工中金をはじめとする政府系金融機関が果たしてきた役割は大きかった。

しかし今は、日銀の大規模金融緩和により“カネ余り”といわれる市場環境が続いている。地方銀行をはじめ民間金融機関が再編の荒波にある中で、公的資金を活用した低利融資という有利な“武器”を持つ政府系金融機関のあり方があらためて問われている。

経済産業、財務、金融の所管官庁は今月末にも終える調査結果を踏まえ、行政処分を課す見通しだ。さらに有識者会議を設置して、政府系金融機関の役割を確認し、民間と競合しないよう商工中金の業務見直しを検討する方針だという。ぜひ本質的な議論を望みたい。

(2017/10/16 05:00)

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