[ 地域経済 ]

福岡の産学、チタン製スプーン量産 車や医療機器の加工技術が決め手

(2017/11/9 05:00)

強度と研磨の課題クリア

  • 量産可能になったチタン製スプーン

技術と感性が融合したスプーン誕生―。福岡県内の地場企業5社と九州工業大学が得意分野を凝縮したチタン製スプーンの量産が始まる。金属加工の研究開発を手がけるリナシメタリ(福岡市中央区)を中心とした「チタン―F―工房」が製品化したもので、自動車や医療など強度が求められる分野で普及が進む技術を応用したのが特徴だ。(西部・高田圭介)

【感性で最適形状】

チタン―F―工房は「メード・イン・福岡」をコンセプトにメンバーの得意分野を生かしたチタン製スプーンを製造し、2014年に福岡市内の百貨店で限定販売した。ただ、この段階では機能性が低く、研磨の手間が量産化の壁となっていた。

機能性向上には九州工大の楢原弘之教授と学生による感性評価を生かした。手の大きさや指の長さが人によって異なることを踏まえ、握った際の質感や操作性などのデータやアンケート結果などから最適な形状を導いた。3Dプリンターでの試作ではモデルの樹脂とチタンとの比重差が課題となった。この差を埋めるためモデルの樹脂に銅粉を混ぜ、実際の重量感に近づけた。

【ムラのない鍛造】

量産化を可能とした要素の一つは金属結晶微細化技術「CREO(クレオ)」。金属加工の三松(福岡県筑紫野市)とリナシメタリが連携して開発した、金属素材を加熱、せん断し、ひねりを入れて微細化して強度を増す技術。この処理により鍛造後の粗さが減り、研磨の時間の短縮につながった。

二つ目は金型と研磨の精度が向上したこと。豊洋エンジニアリング(同遠賀町)が手がける金型の表面には硬化処理を施し、鍛造後のムラを抑えた。また三松と取引があるエス・ピー工業(同大野城市)が研磨工程に加わり、生産体制が整った。

【デザイン凝らす】

消費者に受け入れられるデザインを追求したのは、デザイン事務所白(福岡市東区)。グリップ部分の機能性を反映することを条件に、デザイン性と機能性を両立した。

スプーンは2万円程度でネットや百貨店を中心に売り出す。一般的なスプーンと比べると割高だ。だがリナシメタリの中村克昭社長は「チタンが持つ独特の温かみや製品が出来上がるストーリー性から広めたい」とさまざまな思いが詰まったスプーンに期待を込める。

(2017/11/9 05:00)

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