[ 中小・ベンチャー ]

【電子版】インタビュー/ゲートボックス社長・武地実氏が語る独自ホームロボットの開発秘話

(2017/11/18 13:00)

  • ゲートボックスの武地実社長

ゲートボックス(Gatebox、東京都千代田区、武地実社長)が開発したバーチャルホームロボット「Gatebox」が2018年2月から購入者に向けて順次配送される。この製品は独自キャラクターの女の子をホログラムにし、それを通じてコミュニケーションする仕組み。ホログラムを使ったホームロボットはこの分野で珍しい。2017年初め、30万円という価格にもかかわらず、わずか1カ月で予約販売の限定300台が完売した。同社の武地社長にこの製品の開発秘話などを聞いた。(編集委員・碩靖俊)

※関連リンク:【電子版】ゲートボックス、独自ホームロボットの進化に力(動画あり)

“俺の妻”召喚装置

  • あっという間に限定300台が完売した「Gatebox」

ーゲートボックスのバーチャルホームロボットは一部で「“俺の妻”召喚装置」とも呼ばれていますね。

「そう呼んでいる理由は人それぞれでしょうね。ただ、企画した当初から、このバーチャルホームロボットで単なる生活サポートだけだなく、『最高のおかえりをつくりたい』という思いがありました。そうした思いが受け入れられたのだと個人的には思います。ユーチューブにこれまでアップしたプロモーションビデオ(PV)4本の総再生回数は現時点で350万回超。期待をひしひしと感じてます」

ーさまざまなホームロボットがありますが、ホログラムを使った製品は珍しいですね。

「そうですね。コミュニケーションロボットでは、当社が初めてではないかと思います。PVをリリースして以降、競合が出るのか、ずっとウオッチしていましたが、なかなか見当たりません。現時点で、ホログラムという映像表現を使った技術は広告に使われるなどにとどまっているようです。個人的には切磋琢磨(せっさたくま)できる意味でも、ライバルがいた方が面白いですね」

ーどんなきっかけでバーチャルホームロボットを思いついたのですか?

「企画を考えていた当時は『ペッパー』が一般販売されだした頃でした。1人暮らしの自分の家にペッパーを置くのはスペース的に考えにくく、さらにこうした機械的なスピーカーに対してコミュニケーションしたくなるかというと、自分はならないなと思いました。自分だったら好きなアニメのキャラクター、特に『初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディアが販売しているソフトウエアの人気キャラクター)』がすごく好きだったので、それだったら一緒に暮らしたいなと思いました。それが原点です」

ホログラムを使う発想

ーホログラムを使うアイデアはどこから生まれたのですか。

「過去に参加した初音ミクのライブが同じような原理を使っていたところにヒントがありました。特殊なパネルに後ろからプロジェクターを当てる仕組みだったので、それを小型化すればと思い、試しました。本来、プロジェクターは映像を大きく映す技術なので、それを小さくしようとは思いませんよね。さらに、そこにスマートスピーカーのような機能を組み込めばということで、一歩一歩、歩みを進めていきました」

ーモノづくりにノウハウがあるメンバーがいたのですか。

  • 「泥臭く実験していきましたよ」と武地社長

「企画・構想したときはメンバー2人。ともにエンジニアではありません。だから、コンセプトを立ち上げたときはどうやって作るか何も分からない、文字通り、ゼロからのスタートです。いろいろ試して、ようやく現在にたどり着いた感じです。だから、本当に泥臭く、時間をかけて実験・検証していきました」

「霧に映像を投映するフォグ・スクリーンという技術があります。最近イベントでよく使われていますね。最初、それが使えるか試すなどしました。霧を発生させるのに、家電量販店で安価な加湿器を買って来て。それに秋葉原のパーツ屋さんで購入したパソコン(PC)のファンを組み込むなどし、蒸気が一気に出る装置を自分で作るなどしましたよ」

ー学生時代の研究や経験が生きましたか。

「何一つ関係したものはありませんでしたよ。大阪大学工学部で原子力について学んでいました。そこではPCをいじったりしないんですよ。それにこっち(バーチャルホームロボットづくり)の方に夢中になったため、勉強もおろそかになっていました」

ーこのバーチャルホームロボットは現時点で日本語にのみ対応します。海外向けの開発は。

「今後のロードマップとしては必要だなと思っています。ただ早くたくさん売りたいというよりは、むしろ、究極の体験をつくりたいというところが大きいです。それにあたっては、自分と同じ感性で、かつ同じ言語を使う日本人にまず使ってもらい、そして、それでちゃんと生活になじめば、他の国にどんどん売っていこうと思っています。まだこれが本当に生活に根付くのかとか、みんなが本当に毎日コミュニケーションしてくれるのかとか、まったく分からない状況です。海外向けはそれをしっかり検証した後かなと思っています」

ー企業がゴーイング・コンサーンしていくには売り上げも大切です。

「ゲートボックスの企業コンセプトでもある『キャラクターと一緒に暮らすことの実現』以外に関心がありません。自分と自分に共感してくれる人たちのために作っています。だから、とことん作り込んでいきたい。逆に興味がない人たちには買ってもらわなくても構いません」

【変更】Gateboxがバーチャルホームロボット「Gatebox」の配送時期について、2017年12月から2018年2月に延期することを公表したことに伴い、リードの一部を変更しました。

(2017/11/18 13:00)

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