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【電子版】マーケティングの出番ですか?(8)問題の本質を探っていく「なぜ?」5つの視点

(2017/11/25 07:00)

筆者は、仕事現場で発生する悩みや問題を図で表現して克服した体験から、仕事の成果につながる業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを行っています。今回は、現場で発生する問題の真の原因を探っていくために「なぜ?」と視点を変えて問う方法をご紹介させて頂きます。

「PDCAサイクル」は万能か?

事業活動における様々な管理業務に「PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)」が広く使われています。いかに生産性を高めるか、効率良く作業を進めるかなどがテーマのマネジメント手法です。この4段階を回すことによって、業務を継続的に改善することができます。「PDCAサイクル」では、1段階目の「Plan(計画)」がとても重要です。ここで綿密な計画を立てられるということは、その分野の知識・経験があり「何をしたら良いか、手順は、難易度は、障害は、コストは…」が具体化できるということです。現場経験の豊富な人は、多くのノウハウを持ち、それを活かすことで、より良い計画が立てられます。

ちなみに、筆者が営業業務を始めた時、「PDCA」をイメージしても納得できる「Plan(計画)」が書けませんでした。初めての分野で知識・経験が無いのですから当然です。つまり、新しい分野や事業の前提条件が変わると、「PDCAサイクル」は使えないことを痛感しました。

これを教訓に、「PDCAサイクル」をまわす前段階が必要だ、「Plan(計画)」につなげる上位概念が必要だ、と考え「QVSAサイクル」を考案しました。このフレームにより、初めてのテーマでも取り組みやすくなりました。【図1】は、「QVSA」サイクルと「PDCA」サイクルの関係を示したものです。

  • 【図1】「QVSA」サイクルと「PDCA」サイクル

Question=根本的な問題・課題を「問う!」

Vision=共有できる「姿!」を定義する

Solution=「成功!」の実現方法を探り出す

Action=「PDCAサイクル!」を包含する

「PDCAサイクル」の上位概念に位置する「QVSAサイクル」は、一見、当たり前ですが、グローバル経済下において事業環境が目まぐるしく変わる今日、この2つの連動性を踏まえ、「現状の根本分析、目標の再設定、解決策の立案」を行い、事業活動を変革、改善していく必要性が高まっています。

「QVSAサイクル」による真の問題発見アプローチ

現場で部下が失敗したときに、やみくもに「なぜ?」を連発していませんか。管理職としては「なぜ?なぜ?」と繰り返すことで原因を追究しているつもりになります。しかし、担当者が答えられる「なぜ?」は、自分が計画通りに実行「できたのか・できなかったのか」それだけです。部下は責められていると感じたら「私が悪かった」と言うしかありません。そうなると解決策は「以後、気をつけます」となり、問題の本質を探ることができなくなります。それを意識しないで担当者に「なぜ?」と問い続けるということは、責任追及の詰問でしかありません。これでは失敗から学ぶ事ができず、正しい問題解決のアプローチとは言えません。

問題が発生したら視点を変えた「なぜ?」を5回繰り返しましょう。

○1回目「なぜ?」…Do

担当者が計画通りに「実行できたのか?」を確認

→計画通りに実行できなかった理由はなにか?

○2回目「なぜ?」…Plan

実情にあった計画なのかを確認。(例:係長が無理な計画をたてなかったか問う)

→計画に無理があると、現場の頑張りが無駄になる

○3回目「なぜ?」…Solution

実現の方法の選択が正しいか確認。(例:課長が選んだ解決方法は適切か問う)

→戦略の失敗は現場の戦術ではカバーできない

○4回目「なぜ?」…Vision

期待する姿は正しく描けていたのか確認(例:部長が示した目標の姿(形)が見えるか問う)

→目標を間違うと、正しい「課題」設定ができない

○5回目の「なぜ?」…Question

「出発点はよかったのか?」、「問い」を確認(例:そもそも社長が言い出したことに無理が無いか問う)

→現状を根本的に見つめ、疑問を持つことが出発点

  • 【図2】視点を変えて「なぜ?」と問う

筆者の提唱する「なぜ?」を5回繰り返す問題解決のアプローチは、仕事の流れを上流へと遡ります。質問の切り口を変えていくことで問題の本質に迫っていくことができます。トヨタには「なぜなぜ5回」と言う手法があるそうですが、その真似をしたわけではありません。偶然、5回になりました。QVSAとPDCAの連動性を考えたら、5段階で考えることが合理的だったのです。

 ただ、この「なぜ?」の視点を変えて遡って行くには、遡っていけるだけの仕事の仕組みを可視化していることが必要です。思いつきで計画して実行したものでは遡ることが難しいし、経験を知恵として蓄積していけません。仕事で考えたこと、行動したことが記録に残されているからこそ、後からの検証で真の原因を発見し、改善を積上げていくことができるのです。

初めての仕事では、「こうなる、こうしたい」という目標、解決策を「QVSAサイクル」で定義、関係者で共有し、「PDCAサイクル」を実施する中で、問題点を追いかけられる様に仕事を構造化、可視化すれば、必ずや成果が得られます。

(『新製品情報』2015年3月号掲載)

(毎週土曜日掲載)

【著者紹介】

池田 秀敏

有限会社テオリア 代表取締役

(業務プロセスデザイナー、図解エバンジェリスト)

1957年生まれ

出身:新潟県上越市

営業系システムの開発技術者として平成元年に独立。中小企業における多くのシステム開発経験の蓄積から、業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを提唱。図解による業務改善セミナー、ワークショップ、講演、コンサルティング等、多岐にわたり活動中。

(2017/11/25 07:00)

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