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【電子版】マーケティングの出番ですか?(13)新たな進化を見せる若者世代

(2017/12/30 08:00)

現在、日本は今までどの国も経験したことのない「少子高齢化」に直面しています。「少子化」は、労働人口の減少や市場が縮小するという社会的な視点から、大きな課題として捉えられています。今回、「少子化」の進展する市場環境において、今後の日本市場の中核となる若者(15歳~29歳位)の価値観や仕事観の実態を通して、新しく進化していく4つの兆しを紹介させて頂きます。

若者世代の実態、進化、それとも退化?

  • 【グラフ1】自分には長所がある(13歳~29歳の回答。内閣府 平成26年版 子ども・若者白書をもとに作成)

1990年以降に生まれた世代は、バブル崩壊以後の長びく不況下に育ち、経済成長とともに豊かになっていくという成功体験を共有していません。生まれた時からパソコンや携帯電話などのデジタルツールに触れ、学校では「ゆとり教育」として「自分らしさ」を育んだ世代であり、それ以前の世代とは社会環境が大きく異なることから独自の感性を持っています。その事は、「デジタルネイティブ3世代(第4世代)」「ジェネレーションZ」「ゆとり世代」というネーミングで数多くの社会学やマーケティング論で取り上げられています。

  • 【グラフ2】将来への希望(13歳~29歳の回答。内閣府 平成26年版 子ども・若者白書をもとに作成)

その典型的な特徴は、「積極性に乏しい」「安定志向」「消費意欲なし」「内向き(仲間内の関係重視)」「ネット依存」など、ネガティブな表現で主に先行世代から語られることが多く、【グラフ1】や【グラフ2】に見られる様に諸外国の同世代と比べても、「自己肯定感や社会参加意識に乏しい」「将来への希望が低い傾向にある」という調査結果があります。

  • 【グラフ3】自国のために役立つと思うようなことをしたい(13歳~29歳の回答。内閣府 平成26年版 子ども・若者白書をもとに作成)

一方で、【グラフ3】のように「自国のために役立つことをしたい」と思っている割合は諸外国と比べて高い傾向にあり、一般的な若者にも潜在的な活動意欲がみられます。

このようなマクロ的実態を踏まえつつ、筆者たちが様々な調査などで、先行層の若者たちと触れていく中で得た、今までの日本の社会では語られなかった価値観、彼らなりの意欲について、4つの兆しが見えてきました。

兆し1:若者はモノの消費からコトの消費へ

若者のモノ離れに関しては、安定収入の見通しがたたない社会を背景に、消費意欲、モノに対する執着は少なく、むしろ何を持っているかよりも「どういう経験をしてきたか」「人間関係が充実しているか」「楽しむ術をいかに多く持っているか」等に価値を見出す傾向が強くなっており、体験や感動を得るコトにお金を使う意識があります。

単なるモノではなく、ストーリーのあるモノや自分が拘(こだわ)るモノであることが重要視されており、先行層の調査では、おしゃれな女子大学生であっても「量販店のアンダーウェアで十分」「特に欲しいものはない」等、拘りの無いモノには頓着しない傾向が現れています。

兆し2:社会との関わり意識、社会貢献行動に意欲的

都市部の大学では、海外ボランティアサークル参加や社会貢献を目的とする起業などが増えています。東日本大震災以降、大人たちに頼らず、意欲ある人達でつながって活動していく姿が見られ、当社の調査でも、現在の若者は一流企業に勤め社会的・経済的な安定を目指す層だけではなく、「人類と地球のこれからの仕事」「日本に興味を持ってもらうための海外インターンシップの運営」「アフリカでの教育支援」「孤立しがちな子育てママの支援」など、金銭でなく自分の興味ややりがいを感じることにモチベーションを見出し、実際に行動をおこす層が目立っています。

兆し3:ワークスタイルの変化、マルチタスク、マルチワークスタイル

ここ数年は就職率も回復傾向にありますが、先行層では【兆し1】で紹介したように、学生時代からすでに起業してその事業を発展させるか、就職先に副業を認める会社を選び、自分のやりたいことを続けるマルチワーク志向が強く見られます。彼ら、彼女らは「自分らしさ」が最も基本的な行動原理で、自分(らしさ)を追求するライフワークとそれを経済的に支えるライフワークという価値観を持っています。

そのため、自分の好きなモノを深めて仕事やイベントにしたり、ボランティアに関わったりと複数の顔を持っています。一例としては、食や食育に対しての関心の高まりから、「和」のモノや伝統などを見直す機運などで農業や、グリーンツーリズム、援農、森林ボランティアに参画する若者が見られます。興味の方向はさまざまですが、個々の発想力とデジタル力を駆使して、時間と空間こえて、大人世代にはできないマルチワークを自然体でこなしています。

兆し4:デジタルツールを有効活用、共感・共創を重視

自分の考えや行動、作品などを、ソーシャルメディアを利用して発信し、共感の輪を広げていくことに長けています。(参考:【グラフ4】)

  • 【グラフ4】主なSNSの利用率

以前の若者はソーシャルメディアを単に仲間内でのコミュニケーションに利用していましたが、今の若者は世代、国境を越えて自分と価値観を共有する、自身の存在感を見出せる新しい仲間を見つけるツールとして利用し、自分の活動の世界を広げていきます。そして、その力が【兆し1】や【兆し2】で見られた活動をも支えています。

マーケティングに求められる進化

これら4つの兆しは、まだ若者たちの先行層にのみ見られますが、今後、着実にこのような価値観をもった若者たちが得意のソーシャルメディアを駆使し、共感を広げ、日本の社会を変えていくことが予想されます。

この新しい若者世代に対して、企業は従来のマーケティング施策から一歩踏み出し、若者が共感するモノやコトを若者と共創していくマーケティングの進化が求められ、双方の進化によって今まで市場に無かった展開、新たな市場創出の可能性が見えてきます。

(『新製品情報』2015年10月号掲載)

(毎週土曜日掲載)

【著者紹介】

喜多 左知子

株式会社ウェルコインターナショナル 取締役

(マーケティングリサーチコンサルタント)

主要事業:定性リサーチ及びマーケティングコンサルティングサービス

略歴:自動車メーカーに入社、販売業務に従事。その後、マーケティング会社に転職し、多くのクライアントのマーケティング企画、調査案件に携わる。2002年に(株)ウェルコインターナショナルの設立に参画、現在に至る

(2017/12/30 08:00)

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