[ オピニオン ]

【電子版】論説室から/来年度1.8%成長も個人消費鈍く、6月の骨太方針で説得力ある健全化策示せ

(2018/1/11 05:00)

政府は2018年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1.8%程度と見通す。堅調な世界経済や円安基調を背景に、輸出や設備投資といった企業部門が日本経済をけん引するとの見立てだ。ただ民間予測の1.2%程度より強気の見通しで、実現するかは不透明。

政府は仮に1.8%成長を実現しても家計部門の回復力は依然鈍いと見通しており、いざなぎ景気を超えた長期の景気拡大の恩恵は18年度も家計に浸透しにくい状況が続くとみられる。GDPの6割強を占める個人消費を喚起するには賃上げだけでは限界があり、家計の将来不安を払拭する財政健全化を急ぐ必要がある。

政府は17年度の成長率を実質1.9%程度、名目2.0%程度と見込んだ上で、18年度は実質1.8%程度、名目2.5%程度の成長を見通す。18年度の実質GDPを項目別にみると、輸出が前年度比約4.0%増、設備投資が同約3.9%増と、企業部門が成長をけん引。いざなぎ景気(57か月)を超える戦後2番目の景気拡大が継続すると見通す。

ただ企業の利益は賃金上昇に十分に還元されておらず、全産業の内部留保は16年度に約406兆円と過去最高を更新。連合によると17年春闘での賃上げ率は1.98%と前年の2%を下回り、14年に始まった官製春闘にも息切れがみられる。政府が経済界に要請した18年春闘での3%以上の賃上げはハードルが高く、18年度税制改正で講じる賃上げ減税がインセンティブ(誘因)となるかは不透明感を拭えない。政府は18年度の個人消費を前年度比約1.4%増と見通すものの、設備投資などと比べて勢いを欠くと予測しているのが実情だ。

17年10月の衆院選で自民党が大勝したことで、政権の経済政策「アベノミクス」の継続が決まり、企業収益を後押しする日銀の金融緩和策が堅持されることになった。日銀の政策委員の1人は昨年末の金融政策決定会合で、長期の景気拡大を背景に利上げを検討する可能性に言及したものの時期尚早とされ、低金利による企業収益の下支えと国債費の抑制、経済成長に伴う税収増を目指す経済財政運営が18年度も維持される見通しになった。

9月の自民党総裁選や国民投票が必要な憲法改正問題を控え、財政健全化よりも経済成長に比重を置く傾向が強まろうとしている。

今月22日召集の通常国会に提出する17年度補正予算案と18年度政府予算案にも、そうした姿勢がうかがえる。18年度政府予算案は会計総額97兆7128億円と過去最大を更新し、17年度補正予算案の1兆6548億円を合わせると99兆1095億円に達し、100兆円の大台に迫る。高齢化に伴って増え続ける社会保障費と、北朝鮮情勢を見据えた防衛費が過去最大を更新。また18年度政府予算案で17年度当初予算とほぼ同額の5兆9789億円に抑えた公共事業費についても、17年度補正予算で1兆3億円を計上しており、歳出削減への踏み込みが十分だとは言い難い。

18年度はバブル期並みの税収59兆790億円を見込むものの歳出が膨らみ、国・地方の長期債務残高は18年度末に1108兆円と過去最大を更新する見通しだ。税収増が期待される18年度は財政健全化の駒を進める好機だったが、遅々として進まない状況が続く。

歳出改革に踏み込まず、税収に依存した財政健全化には危うさがつきまとう。政府が見通す1.8%成長を実現できなければ年度途中で赤字国債の発行を迫られる懸念があるだけではない。社会保障制度の持続可能性をめぐる家計の将来不安はいつまでも払拭されず、節約志向に歯止めをかけるのは難しい。遠回りのようにみえても、財政健全化の道筋を明確に示すことが消費喚起には欠かせない。

政府は6月にも策定する経済財政運営の基本方針(骨太方針)の中に新たな財政健全化計画を盛り込む。19年10月の消費増税の確実な実行はもとより、説得力ある計画を示すことが政権に求められる。

(神崎正樹)

(2018/1/11 05:00)

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