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【電子版】マーケティングの出番ですか?(22)会社の「強み」を明確にせよ!

(2018/3/3 07:00)

筆者は、仕事の成果につながる業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを行っています。今回は、お客様に選ばれる理由としての「強み」を明確にする必要性を解説させて頂きます。

「強み」を打ち出せないと「安売り」に行くしかない

「あなたの会社はお客様に何を売っていますか?」と質問すると、

・パソコンを販売しています

・コピー機やプリンターを扱っています

・スーツです

等々、多くの人が単純に商品を答えます。

  • 【図1】安売りで差別化すると「心・体・お金」を消耗

しかし、これではどこで買っても同じ価値の商品です。あなたから買う理由はありません。結局、「安売り」で違いを打ち出すしかありません。その結果、【図1】のような悲しい現実となります。

「お客様は、何に価値を感じてお金を払ってくれているのでしょうか?」、「どんな価値を提供すればお客様に喜んでもらえるのでしょうか?」そこが見えていないと効果的な手は打てません。頑張っている割には成果も上がりません。「価値」を提供する視点から「強み」を創造する必要があります。

顧客視点から「強み」を考える

あなたの会社の「強み」は何ですかと聞くと、 

・技術には自信があります

・製品の高い性能です

・優秀な人材が自慢です

等々の答えが返ってくることがあります。しかしこれでは、どこが具体的に優れているのか、顧客にとって価値があるのか、判然としません。

必要なことは、(1)顧客が望んでいて、(2)自社が提供でき、(3)競合他社が提供していない、「価値」を提供することです。

AOKIは、既成服の紳士スーツを低価格で販売することで業績を伸ばしてきました。しかし、同業他社が増えたことで新しい差別化が必要になり、服飾の歴史、色彩学、体型学、ドレスマナー、接客などをカリキュラム化した「カスタマーズスタイリスト」という社内独自の資格制度に取り組みました。これにより、「お客様に低価格のスーツを売る」ということから、「お客様に似合う(相応しい)スーツ選びをお手伝いする」という新たな「強み」を再創造しました。どのお店でもコンサルティング接客ができるまで10余年を要しましたが、現在では、シルバースタイリスト約3,000名、ゴールドスタイリスト約300名を誇る体制になっています。

独自の「強み」を創り出すのはモノよりコト

「商品説明」に終始しているカタログやWEBサイトを良く目にしますが、どこで買っても「価値」が同じ商品の説明をされても、購買意欲は高まりません。結果、お客様は価格の安さに目が向くことになります。

  • 【図2】商品=モノ製品+サービス(コト)

これを防ぐには、他社と「何が・どう違うのか!」を明確にするべく、【図2】のように製品にサービスを付加して、独自性のある商品に仕立てる必要があります。

これにより、製品は同じでも、競争力をもった差別化が可能になります。AOKIのスタイリスト制度は、まさに「いい人にアドバイスしてもらった。いい買い物ができた」という「強み」を構築しています。

自社の「強み」を、お客様に必要とされる商品価値に結びつけるには、(1)顧客に提供する「価値」、(2)顧客が手に入れる「成果」、(3)他社との「違い」、を明確にする必要があります。

これらの要素が連動して「お客様があなたの商品を選ぶ理由」となり、他社に容易に真似されない「強み」を軸としたビジネス展開が可能となります。

「強み」には、発見と育成が必要

「『強み』を明確にしましょう!」と言うと、「我が社には『強み』と言えるものがない」という答えが返ってくることもあります。しかし、5年、10年、20年と事業を続けている会社には、顧客が評価する「価値」が間違いなくあります。それを「強み」として明確にすることが重要です。

では、どのような方法で「強み」を明確にしたらよいのでしょうか。筆者のお勧めの方法は、過去1年間に受注した仕事を一覧表にし、各依頼主に「我が社に依頼した理由」を取材する方法です。依頼の経緯、困っていたこと、どの様に解決できたのか等々、様々な回答から「強み」が見えてきます。

もう一つは、「自社の良い所を5賢人に聴く」という方法です。5賢人とは、自分・家族・お客様・仕入先・従業員を指しています。

・自分:何のために仕事をするかを聴く

・家族:厳しい辛辣な意見を聴く

・お客様:来店する・気に入っている理由を聴く

・仕入先:他社との違いや取引の理由を聴く

・従業員:お客様に喜んでもらえたことを聴く

  • 【図3】「強み」を育てる2つのアプローチ

自分を取り巻く様々な人の意見を素直に聴くことで「強み」も「弱み」も見えてきます。「強み」の源泉が見つかったら、それを育て競争力を高めることが肝要です。「強み」があっても差別化できる(勝てる)レベルに達していなければ意味がありません。【図3】のように、発見した「強み」を、計画的に学び、訓練し、育成することが大切です。

「強み」が不明確のままでは、目先の売上のための苦労が永遠に続きます。また、競争が激化する中、「強み」を維持し続けるのも容易ではありません。常に競争力を保持できるよう、「強み」の「発見」と「育成」の2つのアプローチを継続することが必要不可欠です。

(「新製品情報」2017年4月号掲載)

(土曜日掲載)

【著者紹介】

池田 秀敏

有限会社テオリア代表取締役

(業務プロセスデザイナー、図解エバンジェリスト)

1957年生まれ

出身:新潟県上越市

有限会社テオリア 代表取締役

営業系システムの開発技術者として平成元年に独立。中小企業における多くのシステム開発経験の蓄積から、業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを提唱。図解による業務改善セミナー、ワークショップ、講演、コンサルティング等、多岐にわたり活動中。

(2018/3/3 07:00)

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