[ 科学技術・大学 ]

【電子版】グーグル、72量子ビットプロセッサー開発 エラー率低減で量子電算機の「スパコン超え」目指す

(2018/3/7 16:00)

  • 72量子ビットの量子プロセッサー「Bristlecone」㊧と正方形に素子を72個配置したプロセッサーの模式図㊨(グーグル提供)

米グーグルの量子AIラボは5日、超電導状態で稼働する72量子ビットの量子プロセッサーを開発したと発表した。グーグルではこのプロセッサーをもとに課題となっているエラー率の低減などの研究に取り組みながら、量子コンピューターが従来のスーパーコンピューターの処理能力を超える「クオンタム・スプレマシー」(量子超越性)の実現や量子電算機の大規模化を狙う。

「ブリスルコーン(Bristlecone)」と名付けたプロセッサーで、米ロサンゼルスで3月5~9日に開催中の米物理学会(APS)の年次会合で発表した。グーグルは2014年に9量子ビットのプロセッサーを発表し、データの読み出しで1%、1量子ビットゲートの場合に0.1%、2量子ビットゲートで0.6%と低いエラー率を報告していた。その9量子ビットでの技術をベースに、素子を正方形に72個並べたプロセッサーを今回製作した。

量子コンピューターは量子力学の重ね合わせの原理を利用し、素因数分解や量子化学計算といった難しい計算を、現在のスーパーコンピューターより高速に処理することができる「夢のコンピューター」として、早期の実用化が期待されている。

  • 量子ビットの数とエラー率の関係図。赤い線はグーグルの研究開発の方向(グーグル提供)

ただ、実際の量子コンピューターでは、「0」と「1」の状態を重ね合わせた「量子ビット」の素子がわずかにエラーを持ち、こうした量子ビットをいくつも組み合わせて計算を続けていくと間違った計算結果につながってしまう。

そのため、必要に応じて誤りを訂正する機構が必要になり、量子コンピューターを大規模化すればするほどエラー訂正機構も大きくなることから、計算のパフォーマンスが上がりにくくなるジレンマを抱えていた。エラー率をいかに小さくするかが量子コンピューターを大規模化する上で最大の課題の一つとなっている。

グーグル量子AIラボでは16年、49量子ビットの量子コンピューターであれば量子超越性が理論上は実現可能という内容の研究論文を出していた。その予測はまだ実現していないが、「ブリスルコーン」を実験台に量子コンピューターでのエラー率の低減と大規模化、さらにシミュレーションや機械学習などの応用研究に活用を進めていく。

(2018/3/7 16:00)

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