【コネクテッド インダストリーズ vol.3】ロボット王国、社会課題の解決策を世界に発信

(2018/4/18 12:00)

  • 羽田空港の「Haneda Robotics Lab」

2020年が大きな舞台に

 ロボット革命で課題解決型社会の実現へ-。政府は中長期戦略に基づき、あらゆる場面でロボットが活躍する社会の創出を目指している。従来の機械より“人の動作に近い”ロボットを用い、解決が困難な社会課題の克服につなげたい考え。また、ロボット大国とされる日本の技術を基に、世界をリードする新産業を生み出すことも狙いだ。経済産業省の施策などにより、ロボットの活用範囲は着実に広がっている。

羽田空港は壮大な実験場

 「清掃中です、前を空けてもらえませんか?」「作業が完了しました!」。自律移動型のロボットが、音声で注意喚起しながらスイスイと床を掃除していく-。羽田空港で2016年度に実施された公開実験の光景だ。

 ロボットは時速2.4キロメートルで動き回りながら、下部に装着したパッドで床面を洗浄。最大で毎時1200平方メートル分の作業が可能だという。稼働時は通行中の一般客が立ち止まり撮影するなど、大いに注目を浴びた。

 実験で使われたのはアマノのロボット床面洗浄機「SE-500iXⅡ」。空港の管理運営を担う日本空港ビルデングが、ロボット利活用プロジェクト「Haneda Robotics Lab(ハネダ・ロボティクス・ラボ)」の一環で実験導入した。

  • アマノのロボット床面洗浄機

 「空港も労働力の確保の問題に直面する」。実験に携わる同社の志水潤一事業企画部次長は、プロジェクトを推進する理由の一つに将来的な人手不足を挙げる。

 現在、空港内で働く人の数は数万人。日本全体で人材確保が難しくなる中、いかにサービス品質を維持するかが喫緊の課題だ。ましてや羽田空港は、政府の方針により発着枠が拡大される見通し。対応策として同社が着目したのが、ロボットだ。

 「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、海外から来る人も増える」と、志水次長はもう一つの理由を明かす。訪日客を愉しませ記憶に残すには、ロボットは絶好のツールだ。産業用ロボットのトップメーカーがひしめくこともあり、“ロボット大国”として日本の知名度は高い。

 Haneda Robotics Labでは実験に用いるロボットを公募し、SE-500iXⅡや日立「エミュー3」、ソフトバンクロボティクスの「ペッパー」など計17種のロボットを選定。2016年12月から翌年2月にかけ、清掃、移動支援、案内の3テーマで実験を行った。

 結果を踏まえて問題点を洗い出し、各ロボットメーカーへ改良を要請。今夏から第2次実験を実施し、最終的には2019年度末までに本格導入する計画だ。

  • 日立製作所の「エミュー」が羽田空港で訪日客をお出迎え

まだまだある開拓領域

 日本空港ビルデングが第1次実験の際に利用したのが、経産省の「ロボット導入実証事業」。同事業ではロボット活用の効果を実機で検証する取り組みを、費用面などで支援している。2015年に始動し、これまでに250件近くを採択。空港のようなサービス分野のほか、食品、化粧品、その他中小企業なども含むロボットの未活用領域を開拓することが目的だ。

 また、採択先の取り組みを先進事例として発信し、横展開につなげる構え。このため、経産省は動画などで事例を紹介するウェブサイト「ロボット活用ナビ」を、日本ロボット工業会と共同で制作。ロボットの導入検討時に使える支援ツールとして、活用を促している。

 2017年3月、ロボット導入実証事業の管理事業者でもある日本ロボット工業会が、2016年度の成果報告会を開いた。日本空港ビルデングの実験をはじめ、6件の事例を発表。工場への導入案件では、資生堂の取り組みが注目を集めた。

化粧品工場がモデルケースに

 「化粧品は消費者の嗜好に左右されやすい業界。ここ数年で品種が増えており、生産現場では小ロット化が加速している」と同社生産技術開発センターグループマネジャーの小林毅久氏は、ロボット導入の背景を説明。専用的な自動機より品種変更に対応しやすいため、ロボットに着目したという。続いて小林氏は、粉末化粧品を製造する掛川工場(静岡県掛川市)に導入したロボットシステムを紹介した。

 用いるのはカワダロボティクスが開発した人型双腕ロボット「ネクステージ」。低出力モーターを採用するなど、人との協働を想定した設計が特徴だ。資生堂が構築したシステムも、人とロボットが同じ空間で働く仕組み。人は仕掛品の目視検査などを担当する。「傷がないか検査する仕事では、人の感性が必要」と小林氏は強調。一つのセルを作業者1人とロボット2台で構成しているという。

  • 資生堂の掛川工場で人と協働

 ロボットの導入により、労働生産性は従来の1.12倍に改善。作業の品質も高まった。掛川工場では今後、生産性のさらなる向上を図るとともに、口紅や化粧水など他製品への展開も検討する方針。ロボット化が進んでいない三品業界(食品、医薬品、化粧品)のモデル工場として、一層の進化が期待される。

 ロボットは、機械ではあるが人のように柔軟に動作できる点が特徴だ。人と機械をつなぐ存在として、さまざまな可能性を秘める。政府が掲げる新たな産業振興戦略「コネクテッドインダストリーズ」も、“つながる”がキーワード。人と人、機械と機械、そして人と機械などが円滑に連携する上で、ロボットが活躍する場はますます広がりそうだ。

METI Journal

  • METI Journal

    METI Journal

    METI Journalは経済産業省の広報サイト。毎月の政策特集に加え、60秒解説や統計解説等、多彩な情報を配信します。スマートフォンでの閲覧にも最適化して配信しているため、ストレスなく手軽にお読みいただけます。

コネクテッド インダストリーズ シリーズ一覧

vol.1 スマート工場は日本のお家芸

vol.2 自動運転で人、クルマ、社会の関係はどう変わる?

vol.3 ロボット王国、社会課題の解決策を世界に発信

vol.4 ヘルスケア・バイオ産業へのインパクト

vol.5 データが語り出す新しい消費社会

vol.6 日立製作所・中西会長インタビュー/立ち上がれ日本の経営者たち

vol.7 中小企業が主役だ!人手不足がチャンスに変わる時

vol.8 絶対に見逃してはいけない、セキュリティ対策&知財保護

vol.9 気鋭の起業家が語る「コネクテッドな社会に必要なのは愛嬌だ!」

vol.10 経営共創基盤・冨山社長インタビュー/飲み込まれるのが嫌なら、自分が変われ

(2018/4/18 12:00)

関連リンク

スマートファクトリーJapan 2018 特集

特集トップページ

【コネクテッド インダストリーズ vol.1】スマート工場は日本のお家芸

冊子『Connected Industries』を発行

日本の新しい産業革命「コネクテッドインダストリーズ」って何?

【コネクテッド インダストリーズ vol.2】自動運転で人、クルマ、社会の関係はどう変わる?

【コネクテッド インダストリーズ vol.3】ロボット王国、社会課題の解決策を世界に発信

【絶賛発売中】よくわかる 中小企業のためのIoT導入ノウハウ『工場管理 2018年4月臨時増刊号』

スマートファクトリーアワード、旭酒造など6件選定

【コネクテッド インダストリーズ vol.4】ヘルスケア・バイオ産業へのインパクト

【コネクテッド インダストリーズ vol.5】データが語り出す新しい消費社会

【コネクテッド インダストリーズ vol.6】日立製作所・中西会長インタビュー/立ち上がれ日本の経営者たち

発明の日特集/製造業における知財戦略の事例

【コネクテッド インダストリーズ vol.7】中小企業が主役だ!人手不足がチャンスに変わる時

【コネクテッド インダストリーズ vol.8】絶対に見逃してはいけない、セキュリティ対策&知財保護

【コネクテッド インダストリーズ vol.9】気鋭の起業家が語る「コネクテッドな社会に必要なのは愛嬌だ!」

【コネクテッド インダストリーズ vol.10】経営共創基盤・冨山社長インタビュー/飲み込まれるのが嫌...

【コネクテッド インダストリーズ extra】開催報告/コネクテッドインダストリーズを語り合う

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.1】世耕弘成経済産業大臣インタビュー/日本の企業文化を...

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.2】この1年で大きく動き出したコネイン

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.3】大手も中小もスマートファクトリーを競う

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.4】パナソニック・馬場渉氏インタビュー/組織がつながれば...

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.5】けん引する若きベンチャーたち

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.6】日本の強み、エッジコンピューティングとは?

【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.7】自動車革命とキーデバイス半導体

基本用語を確認!「スマートファクトリー」関連ワード解説

IoT はどこまで進化したか (上) -『工場管理』2018年4月臨時増刊号

IoT はどこまで進化したか (下) -『工場管理』2018年4月臨時増刊号

コラム/コネクテッド・インダストリーズは中小企業が主役!-『工場管理』2018年4月臨時増刊号

出展する新しい技術・ソリューション(上)/経産省とIPAほか

出展する新しい技術・ソリューション(中)/ファナックほか

出展する新しい技術・ソリューション(下)/アマダHDほか

ものたんが紹介!見逃せない出展ブースとおすすめルート

【関連記事】三菱電、部門またぎ相乗効果拡大 IoT軸に組み合わせ ほか

おすすめコンテンツ

めっちゃ、メカメカ!基本要素形状の設計
カタチを決めるには理屈がいるねん!

めっちゃ、メカメカ!基本要素形状の設計 カタチを決めるには理屈がいるねん!

バルブの選定とトラブル対策
-現場で起きた故障事例と対処法-

バルブの選定とトラブル対策 -現場で起きた故障事例と対処法-

きちんと知りたい! 
自動車サスペンションの基礎知識

きちんと知りたい! 自動車サスペンションの基礎知識

実践!電子部品の信頼性評価・解析ガイドブック Part3
信頼性の要『故障メカニズム』を理解して問題解決

実践!電子部品の信頼性評価・解析ガイドブック Part3 信頼性の要『故障メカニズム』を理解して問題解決

宇宙ビジネス第三の波 
NewSpaceを読み解く

宇宙ビジネス第三の波  NewSpaceを読み解く

PR

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

↓もっと見る

ソーシャルメディア

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

専門誌・海外ニュースヘッドライン

専門誌

↓もっと見る

海外ニュース

↓もっと見る

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件、無料登録会員は最大30件の記事を保存することができます。

会員登録/ログイン