【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.1】世耕弘成経済産業大臣インタビュー/日本の企業文化を変える

(2018/5/1 10:00)

  • 世耕大臣

「CIは、新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す産業のあり方だ」

 データを介したさまざまなつながりにより新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す「Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ、CI)」。2017年3月に世耕弘成経済産業相がドイツ情報通信見本市(CeBIT)で提唱してから1年が経過した。産業界への浸透など今後の戦略を聞いた。

5分野に重点

 -世耕大臣がCIの概念を提唱してからちょうど1年が経過しました。産業界への浸透や意義の広がりを踏まえ、改めてその狙いを教えてください。

 「CIは、データを介して、従来つながっていなかった機械や技術、人などさまざまなものが、組織や国境を越えてつながることにより新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す産業のあり方です。昨年3月にドイツで開催されたCeBITで発信し、5月から3回の懇談会で官民で取り組むべき方向を整理しました。10月のCEATECで『CI東京イニシアティブ2017』を発表し、今はかなり浸透してきた手応えがあります」

 「重点的に政策資源を投入すべき分野は『自動走行・モビリティサービス』、『ものづくり・ロボティクス』、『バイオ・素材』、『プラント・インフラ保安』、『スマートライフ』の5つ。それぞれに分科会を開き、現在、データの協調領域の拡大に向けた検討を加速化させています」

 「自動走行分野では、国土交通省と連携し、企業間の戦略的な協調を推進するなど省庁間の枠を超えた取り組みも動き出しています。安全性評価に必要なシナリオデータの作成や自動走行に必要となる人材の育成・確保などで議論が進んでいます。また、ものづくり・ロボティクスの分科会では、カギとなるデータ共用が大きなテーマ。ファナック、三菱電機、DMG森精機などが提案しているデータプラットフォーム間の協調領域のデータ共用を進めるため、データ構成の標準化や流通の仕組みについて検討しています」

協調領域と競争領域を整理

 「さらに、重点5分野以外にもCIの取り組みは、中小企業の生産性向上や製造業の品質保証体制の強化にもつながります。まだまだ意義の広がりを見せていくでしょう。そしてCIの本質は新たな時代の変革をリードすべく、日本の企業文化を変えることにあると考えています。日本の課題は国内の過当競争で消耗してしまい、グローバル競争で勝てないこと。協調領域と競争領域を整理することで、日本の産業界を新たに生まれ変わらせていきたいと思っています」

 -企業間の協調領域を拡大するためにはどのような政策が必要になるのでしょうか。官の役割を教えてください。

 「官の役割としては、データ活用のためのIT人材育成と、安心してデータをやりとりできる環境整備が重要。人材育成では、IT・データ分野における社会人の学び直しを促進すること。『第四次産業革命スキル習得講座認定制度』を昨年7月に創設し、2018年4月以降に開講する23講座を認定しました。また、ユニークで突き抜けた才能を持つ若者を発掘・育成する『未踏事業』では、年齢制限を撤廃し、起業・事業化までを支援する『未踏アドバンスト』を本格的に進めています」

 「データの共用・利活用を進めるための環境整備では、今国会に提出している法案に基づき、データを共有する事業者を認定し、減税措置や国保有のデータ提供を促す仕組みを構築していきます。加えてデータの利用に係る権利・責任関係を明確化するため『データの利用権限に関する契約ガイドライン』を産業ごとの特性を踏まえた実用的なものに改訂します。こうした政策を進めることで、業界内のデータの協調領域を広げ、リアルデータをめぐるグローバルな競争の中で、日本の勝ち筋であるCIを実現したい」

IT導入の促進が不可欠

 -中小企業にCIを浸透させていくにはIT導入を進めていくことが重要になりそうです。

 「中小企業・小規模事業者にとって喫緊の課題である人手不足の解消と生産性向上には、CIが有力な手段。そしてIT導入の促進が不可欠です。経済産業省では2017年度補正予算で、中小サービス業などのIT化を進めるため、500億円の予算を確保し、約13万社を支援する方針を打ち出しました。その際、ITベンダー・ITツールについて評価し、その情報を中小サービス事業者などに公表することで、効果的なものが選択される環境をしっかりと構築していきたいと考えています」

 

 「また、今後3年間を生産性向上に向けた集中投資期間に充てました。IT化を中心とした中小サービス事業の生産性向上を100万社規模で推進します。今年2月に、関係省庁や支援機関などを幅広く結集し、経済産業省を事務局とする『中小サービス等生産性戦略プラットフォーム』が発足したんです。現時点で関係6省庁に加え、主要な経済団体、中小企業支援機関及び業界団体など計93団体の方々から参加表明を頂いており、情報やノウハウ、成功事例を強力に横展開していきます」

 「中小企業・小規模事業者にとっては、分かりやすいスタンダードとなる成功事例が必要。業種の特性や事業課題に応じた事例をとりまとめ、このプラットフォームを通じて共有することで、業務プロセス全体の見直しとIT化の推進を車の両輪とした生産性向上活動を全国に広げていきます」

「100年に一度」の大変革

-電動化や自動走行など自動車産業に大きな変革のうねりが押し寄せています。熾烈なグローバル競争の中で日本の自動車産業が勝ち抜くには、CIの取り組みが重要になりそうです。

 「電動化の動きが世界的に本格化しつつあることに加え、第4次産業革命の中で自動走行時代が到来するなど、『100年に一度』と言われる大変革が自動車産業に押し寄せています。電動化については、中国の新エネルギー車の一定割合の生産等を義務付けるNEV(New Energy Vehicle)規制の導入や、英仏のガソリン車の販売禁止の目標など世界的な動きがあり、今後、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)など次世代自動車の普及が世界的に進んでいくでしょう」

 「日本でも、新型EVが発表されたり、一部メーカー間での業務資本提携による共同開発の動きも出始めています。ただし、EVについては、電池資源の確保や充電時間の長さなどの課題も存在するのも事実。EVだけでなくFCVにもしっかり目配りし、一本足打法ではなく、将来、いろいろな状況に対応できる自動車産業の構えを作っていくことが重要です」

 「自動走行時代の到来に目を向けると、交通事故削減や高齢者の移動手段の確保、ドライバー不足解消など、人々の移動に関わるコストが小さくなり、社会全体が大きく変革することが期待されます。一方で、自動走行車の開発にはAI(人工知能)技術が必要となり、世界的なIT企業が市場に参入するなど、グローバルで競争が激しい」

 「そのような中で、日本の自動車産業が競争力を維持・強化し、世界をリードし続けるために、CIの考え方に基づき、自動走行を社会実装することが欠かせません。昨年12月から開始した公道での無人車両の走行実証や、今年1月に行ったトラックの隊列走行の実証などを通じて、インフラ・制度・技術面の課題を洗い出し、解決に向けた方針を示したい。また、自動走行の安全性の評価や、必要となる人材の育成・確保に向けた取組も積極的に進めていきます」

 「電動化や自動化に加え、シェアリングも新しいモビリティサービスとして登場し始めました。世界的に自動車産業が直面している大きな波を、これまで培ってきた技術力や産業競争力を活かしつつ、むしろイノベーションを生み出すための『攻めの機会』と捉えたい。その一環として今後、私が主催して4月にも自動車産業の戦略会議を立ち上げ、日本としての戦略を議論し、国際的にも積極的に発信していく考えです」

品質保証の信頼性高める

 -データ改ざんなど製造業における品質関連の不正事案が相次いでいます。品質保証体制強化にCIが有効ということですが、具体的に教えてください。

 「一連の事案は、ロボットの導入や品質データの共有などの取り組みを通じ、ウソのつけない仕組みを構築していれば、未然に防止することができた面もあるのではないか、と思っています。すでに、一部の製造事業者では、そうした先進技術を取り入れ、信頼性の高い品質保証体制を強みとする企業が存在しています」

 「例えば、監視カメラの画像データを解析し、人間の逸脱動作や設備の不具合をリアルタイムで早期発見する仕組みを構築することで、最終製品まで追跡可能なトレーサビリティを実現している企業や、鋳造工程で二次元コードを刻印し、金型の温度などの製造データや各工程の検査結果などの品質データを紐付け、一気通貫のトレーサビリティシステムを構築し、生産性の向上を実現する企業も出てきました」

 「産業界のアクションを多面的、前向きに後押しするため、経済産業省では昨年12月、製造現場におけるデータの活用の対応策を発表しました。一元的なトレーサビリティシステムを開発・導入し、信頼性の高い品質保証体制を構築する取組などに対して、予算・税制措置などを通じて、支援をしていくもの。なにより品質保証体制の強化にあたっては、経営トップが腰を据えて取り組むことが重要です。経済産業省としても、引き続き、経営トップに粘り強く訴えかけていきます」

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(2018/5/1 10:00)

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