【進化するコネクテッド インダストリーズ vol.2】この1年で大きく動き出したコネイン

(2018/5/2 11:00)

この1年で大きく動き出したコネイン

 IoT(モノのインターネット)の普及など第4次産業革命の流れを踏まえ、世耕弘成経済産業相が2017年に打ち出した新戦略「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」。2018年から、本格的な実行段階に入る。企業や人が〝つながる〟ことで価値を生み出すCIの基本方針に則り、データを介した企業間連携を促す支援事業など具体的な施策が動きだす。IoTや人工知能(AI)の進展で産業構造が大きく変わる中、経済成長を牽引する駆動源として期待が高まる。

非連続的なイノベーション

 コネクテッド・インダストリーズの最重要テーマの一つが、協調領域の最大化だ。これまで自前の技術・ノウハウを徹底的に磨き、他社との競争の中で発展してきた日本企業。だが、「今や競争領域以外では積極的に協調すべき時代だ」と世耕経産相はオープン化の必要性を訴える。企業間連携が進めば、サプライチェーンや個社の経営が効率化されるほか、非連続的なイノベーション(技術革新)も起こりやすくなる。これにより産業競争力を飛躍的に高めることが、経産省の狙いだ。

 2月に成立した2017年度補正予算。経産省関連では、協調領域を広げるための諸施策が盛り込まれた。その一つが、予算額18億円を計上した産業データ活用促進事業だ。標準化やAPI(応用プログラムインターフェース)によりデータの共用を目指すコンソーシアム(共同事業体)などを、費用面で支援する仕組み。他のデータ共用基盤とも協力する取り組みを優先的に支援することで、連携の輪を広げたい考えだ。

 このほか補正予算では、大手・中堅企業とAIベンチャーの連携促進事業も注目される。豊富なリアルデータを持つ大手・中堅とベンチャー発の先端技術を融合させ、革新的なAIシステムを生み出すことが狙いだ。コンセプト検証から本格導入までを一体的に支援すべく、予算額24億円を計上した。自動走行、モノづくり、インフラ保安など、CIの重点5分野に関連する案件を支援対象として想定する。

あらゆる政策資源を集中投入

 世耕経産相はCI推進のため、「予算、税、規制などあらゆる政策資源を集中投入する」と言い切る。こうした考えの下、2018年度からは新たな税制も始まる見込みだ。経済対策の目玉として2月に閣議決定・国会提出された生産性向上特別措置法案。この法案に、企業間連携やデータ利活用を税の観点から支援する〝CI税制〟が盛り込まれた。

 データの共有・連携を図る取り組みを主務大臣が認定し、IoT機器やロボットなど設備投資を伴う場合は税制面で優遇する。産業データ活用促進事業との併用も促すことで、企業間連携、そして産業のデジタル化を一気に加速させる戦略だ。また、認定事業者は公的データの取得・利用も容易になる。主務大臣を通じ、データを持つ関係省庁・公共機関へデータ提供を要請できる制度を創設予定。交通、医療、気象などに関する公的データの利用を見込む。

  • 産業データ活用計画の認定スキーム(案)

次なる施策へ

 「分野横断的な施策は、補正予算や新たな法案である程度そろった。今後は分野別の取り組みがポイントになる」とCI関連施策を推進する河野孝史情報経済課長補佐は説明する。CIでは「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」「バイオ・素材」が重点5分野の位置づけ。現在、各分野の業界大手などが参加する分科会が継続的に開かれ、次なる施策の検討が進む。検討内容を世耕経産相を中心とした「コネクテッド・インダストリーズ大臣懇談会」に集約・整理し、近く一斉に打ち出す計画だ。

 CIの根底にあるのが、世界の激変に対する強い危機感だ。産業のデジタル化はとどまることを知らず、米国のIT関連企業が着々と支配力を強める。また、ドイツの「インダストリー4・0(I4・0)」や中国の「中国製造2025」など、政府主導のデジタル化戦略も加速。「このままでは日本が下請けの立場になってしまうのでは…」と危惧する声は少なくない。激変する世界に追従し、なおかつ先導するため、官民両面での機動的な取り組みが求められている。

(2018/5/2 11:00)

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