長岡技術科学大学のグローバルトップ技術とは【PR】

(2018/5/28 00:00)

大学の個性が重視される中、教育・研究・産学連携のあらゆる面で特色ある活動をしているのが長岡技術科学大学だ。地場企業との共同研究、地域振興、高度技術者育成で確実に成果を上げている。

同大大学院工学研究科の梅田実教授と小笠原渉教授の取り組みから、”長岡技科大らしさ”を見る。

→〔1〕『安価な金属に革新的な表面処理を施し、高機能の燃料電池材料に』梅田実教授

→〔2〕『脱石油社会を目指した非可食バイオマスからの安価な「糖」を生産する技術』小笠原渉教授

『安価な金属に革新的な表面処理を施し、高機能の燃料電池材料に』 梅田実教授

  • 梅田実教授

  • 研究する学生に指導

家庭用から自動車用に広がりつつある燃料電池はレアメタルを必要とするため、入手しやすく安価な汎用金属を基に、高い付加価値をつける戦略が期待されている。

-内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、地域振興のプロジェクトを進めていますね。

「これはSIPの対象課題の一つの『革新的設計生産技術』に対し、地場企業と本学が連携して『市場流通材のスーパーメタル化開発』をテーマに応募し採択されたものだ。

一般に流通する低コストの金属材料に、革新的な表面処理の技術を施して、高耐摩耗、高耐食、高摺動(しゅうどう)性をそれぞれ引き出す。」

-事例をお願いします。

「中津山熱処理(新潟県長岡市)との共同研究で、固体高分子形燃料電池(PEFC)のセパレータ材料として、窒素雰囲気下で熱処理したステンレスで高耐食化に成功した。フェライト系ステンレス鋼を活用し、温度や圧力の条件を検討して、未処理のステンレスと比べて腐食を20分の1に抑えられた。

導電性はグラファイトと同等だ。金属表面にできた窒化膜が、保護層の役割を果たしているとみられる。」

-燃料電池市場のニーズに、どのように応えるものなのですか。

「家庭用燃料電池のセパレータはグラファイトカーボンで実用化されているが、厚さ4mmと厚く壊れやすい。

金属ならば0.1mmも可能で、薄く軽くできる。

ニーズの高い自動車用燃料電池では、さらに機械強度に優れ、低コストのものが求められている。」

-どのように連携されましたか。

「企業が窒素熱処理の条件を検討し、本学がサンプルの分析と評価を手がけた。プロジェクトの前半は現場第一だったが、後半は大学がより重要になった。

微妙な温度勾配や不純物の制御などは現場の製造装置では難しく、大学の基礎研究機器を活用して成果を出した。」

「長岡は天然ガス採掘の掘削機用の金属材料を製造する企業がある。

中小企業は小回りがきいてスピーディー。実験のサイクルもすぐ回る。

本学は教員の約3分の1が民間出身で、産と学の感覚も合う。」

-学生にも、良い影響がありますね。

「技術開発で地域を活性化し、製品化で産業の後押しをしていく様子を直接、目にすることは教育効果が大きい。

すぐ役立つ現業直結と、夢のある取り組みの両面を持つ研究テーマを設定して、学生のやる気を引き出したい。」

長岡技術科学大学梅田実研究室ホームページ

 http://mst.nagaokaut.ac.jp/acl/

『脱石油社会を目指した非可食バイオマスからの安価な「糖」を生産する技術』 小笠原渉教授

  • 小笠原渉教授

パリ協定や国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の採択を受け、化石燃料の代わりに植物などを原料としたバイオマス燃料を導入し温室効果ガス排出量を削減する取り組みが世界的に進む。外国ではトウモロコシやサトウキビなどの可食原料からバイオエタノールを生産し事業化に成功。これに対抗し、日本は食料を原料としない“第2世代”のバイオエタノールの開発に力を入れている。

-日本の強みであるカビを操る技術によって、サトウキビの搾りかす「バガス」から安価な「糖」を生産するための研究をしています。

「バガスの繊維質『セルロース』から、糖である『グルコース』を切り出す酵素を、いかに安価に生産するかが課題だった。酵素が働きやすいよう化学的処理も有効だが、コストはかけられない。

複数の酵素を組み合わせた、効率的なセルロース分解が鍵だ。」

「そこで、カビの一種「トリコデルマ・リーゼイ」のうち、日本で約30年間にわたり維持され、酵素生産性が非常に高い代表的な株『PC-3‐7』を親株として利用した。

PC‐3‐7は海外の大手企業が持つ菌株もかなわない性能をもった“モンスター”株だ。」

  • セルロース分解の模式図

  • PC‐3‐7

-開発を進める上で強みとなった長岡技科大の技術は何ですか。

「PC‐3‐7を保有していたことも大きな幸運だったが、菌にどの酵素をどれくらい出させるか、制御する技術を我々は持っている。

目的に合わせ、酵素をオーダーメイドし、菌を作り替えることができる。

加えて、効率的に働く酵素の組み合わせを探索するために、基質の研究を専門とする大学や企業の力を借りられたことが成果につながった。」

-実用化は見えてきましたか。

「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで設定された数値目標は非常に高いものだったが、企業や他大学との連携で達成できた。

特に、酵素の供給には企業の高いモチベーションが重要だ。今回の研究では、糖1gあたりの酵素量やエタノール1ℓあたりの生産コストなど、目標を上回った成果が出ている。」

-将来の展望は。

「非可食バイオマスをエネルギー・モノづくりに活用するという世界的な流れは止まらない。

単純に石油とのコストを比較するのではなく、世界的なエネルギー問題、脱石油問題の解決に向けた動きに技術を活用していきたい。」

-学生も積極的に研究に関わっていたようですね。

「日本には酒造りの研究などで維持されてきた菌が多くある。培われてきた知見は財産であり、これらをいかに活用していくか、さまざまな視点から学生と研究していきたい。」

長岡技術科学大学小笠原研究室ホームページ

 http://www.microorganisms.jp/ogasawara-lab/

(2018/5/28 00:00)

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