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【電子版】論説室から/外部研究費の獲得、大学教職員の意識改革がカギ

(2018/5/31 05:00)

 国からの運営費交付金に悩む国立大学は今どこも、寄付金や民間からの手数料の収入を伸ばすことに力を注いでいる。外部研究費の獲得は大規模研究型大学が優位だが、卒業生や地元企業と関わっての資金獲得は、中小規模の大学でも地方の大学でも可能だからだ。千葉大学と筑波大学の例から、教職員の意識改革がカギになることを紹介する。

 日本の大学の寄付が議論される時、引き合いに出されるのが、多額の寄付を集めている欧米の一流大学だ。卒業生による寄付をプールした多額の基金を持ち、その運用益から学生を支援する独自の奨学金を給付する。卒業後には「自分も世話になったから」と新たな寄付が集まり、それ以外の使途も広がっていく-という理想のサイクルが確立されている。ビジネスで成功した卒業生からの巨額の寄付も少なくない。

 しかし日本の大学でこの形を広く定着させることは容易ではない。憧れなり将来の目標なりはこの形であったとして、日本社会で可能な、規模は小さくても長く続けられる資金獲得法に、力を入れるというのが現状だ。

 千葉大は2017年に千葉県商工会議所連合会、全国健康保険協会(協会けんぽ)千葉支部と連携協定を結んだ。これは商工会議所加入の中小企業における社員の健康増進活動を、医学部など大学の知を活用して行うものだ。大企業と違って独自に実施できない中小企業を支援する。大学の第三の使命「社会貢献」の活動だが、これにより各企業や経営者個人からの寄付が期待できる。

 資金集めの専門家、ファンドレイザーである同大学の犬飼啓吾学長特命補佐は「継続的な寄付は、大学の資源を活用した社会貢献に対して寄せられる。広く社会と接点を持つ大学は、さまざまな寄付金獲得の可能性がある」と強調する。

 つまり大学が社会の課題をどのようにとらえ、企画・立案し、コミュニケーションをするか。それが寄付の獲得を左右するということだ。そのために大勢の知恵が生かせるよう、犬飼氏は学内教職員向けの研修を頻繁に開催している。

 筑波大では事業開発推進室という部署が、寄付や手数料ビジネスの多様な活動を展開している。大学関係者に通常より低価格で商品を提供し、企業の売上高に応じた手数料を大学が得る仕組みを、スーツでは青山商事など大手量販店4社と手がけている。教職員の福利厚生という側面に加え、学生が帰省時に就活スーツを親に購入してもらうといった活用が想定されている。

 ほかにクレジットカード会社との提携カードでの手数料や、大学ロゴが入れたグッズ販売での手数料など数多く手がけている。こういったノウハウの情報交換は、国立大学が集まっての研修などで行われている。

 注意が必要なのは、大学の職員は2年程度で異動することが多いことだ。寄付活動は先方の信頼感が重要なうえ、ノウハウの蓄積も重要だ。そのため5-7年など長く担当する必要があるという。

 大学改革は執行部をはじめ教員がリードするのが一般的だが、これらは職員の業務となることが多い。寄付金や事業企画による資金集めを機に、改革派の職員の活躍が広がっていくことを期待したい。(山本佳世子)

(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)

(2018/5/31 05:00)

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