[ ICT ]

【電子版】丸山隆平の「フィンテック最前線」(6)/銀行はデパートになる

(2018/8/5 07:00)

「オープンAPI」の可能性は、マネーツリーのマクダッド常務に聞く

 フィンテックを支える重要な技術要素にAPI(Application Programming Interface )がある。APIはオープンバンキングのコア技術であり、APIにより異なるビジネスやサービスをつなぎ、それらをベースにした新ビジネス・サービスを提供する「APIエコノミー(経済圏)」を実現するカギとして期待されている。

 APIについてマネーツリーの共同創業者でフィンテック協会の理事として政府と金融機関の調整も行っている業界第一人者のマーク・マクダッド氏(マネーツリー常務)に聞いた。

  • マーク・マクダッド氏

APIエコノミーの市場規模は2018年に2.2兆ドル

 -ITの一分野であったAPIがフィンテックで俄然、注目されています。理由は何でしょうか。

 「APIは、プログラミング用語に端を発している。ソフトウェア開発時に使用頻度の高い機能を利用する仕組みだ。APIから生み出される収益だが、一説によれば、セールスフォース・ドッドコムは50%、インターネットオークションを運営するeBayは60%近く、旅行系オンラインサービスのエクスペディアは90%をAPIから生み出しているという」

 「他方、IT企業がAPIに注目する理由の一つが、新ビジネスの創出だ。多くの企業は事業領域を定義し、限られた範囲でビジネス活動を行ってきた。だが、APIを外部公開して他の企業が利用した場合、その企業が抱える顧客は自社製品・サービスの顧客となり、それまでリーチできなかった新規顧客獲得へとつながる可能性が生まれる」

 「また、単独企業が一貫して対応するのではなく、各企業が協業しつつ多様なサービスを顧客に提供することで、顧客満足度の向上など相乗効果も期待できる。このようなビジネスエコスタイルを加速させる材料として、API活用したのが『APIエコノミー(経済圏)』だ」

 「IBMが2016年に開催したイベントでは、APIエコノミーの市場規模が2018年に2.2兆ドル(約233兆円)を超えると予測している」

オープンAPIが拓く新ビジネス

 -改正銀行法とAPIはどのような関係にありますか。

 「改正銀行法では、主に顧客側から委託を受けて、顧客と金融機関の間のサービスを提供する『電子決済等代行業』を定義し、これらを営む『電子決済等代行業者』を、登録制による規制を課すとしている。一例を挙げると、顧客が所有する複数の口座情報を取得し、データを一覧表示する口座情報・管理サービスや、顧客が指示した際に指定先へ振り込みを行う決済指図伝達サービスが電子決済等代行業に該当する。ポイントは主体が顧客側にある点だ。これまでは銀行から委託を受けて預金や融資などの契約代理業務を行う『銀行代理業』が存在したが、電子決済等代行業はオープンAPI活用が前提となる全く新しい存在だ」

改正銀行法の課題

 -メガバンクのオープンAPIへの対応状況はいかがですか。

 「みずほ銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行 はウェブサイトに自行の方針を掲げている。先行している銀行はあるものの、多くの銀行は参照系APIを提供するAISP (PSD2におけるAccount Information Service Provider) にとどまり、送金指示の伝達を含む更新系APIとなるPISP (Payment Initiation Service Provider) は、『検討中』『対応開始時期は未定』としている。だが、改正銀行法施行2年以内 (2020年6月) にオープンAPI体制整備を努力義務として課している」

 「これらを見ると、改正銀行法は先行するICT(情報通信技術)業界や世界の潮流に合わせて現状整備にとどまった改正法と言える。電子決済等代行業者の範囲や、銀行に手数料を払う際の委任関係(銀行代理業との関係)、API連鎖接続の責任範囲など、改正銀行法の課題は多い」

銀行は「場」を提供する存在に

 -未来の銀行の一つの姿として「デパート銀行」を提唱していますね。

「デパートに並んでいる商品は、デパートが自ら作り直接販売しているものではなく、アパレルやメーカーが開発・製造したものを販売している。顧客は『このデパートなら間違いない』と考え信用して買い物する。また、顧客対応もデパートが基本的に担当する。このように既存の金融機関は、長年培ってきた顧客基盤や信用力という資産を活用して、フィンテック企業に『場』を提供する存在になる」(隔週日曜日に掲載)

著者プロフィール

丸山隆平(まるやま・りゅうへい)

1972~1989年 日刊工業新聞記者としてICT産業、流通業界など取材。1990~2012年、IRコンサルタントとして100社以上の財務広報をサポート。2013年~フリーの経済ジャーナリストとして、経済誌、Webメディアで活動。現在、金融タイムス記者、プレジデントオンライン、ZUUonlineなどに寄稿。著書に『AI産業最前線』(共著、ダイヤモンド社)、『まるわかりフィンテックの教科書』(プレジデント社)などがある。1948年、長野県生まれ。

(2018/8/5 07:00)

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