[ オピニオン ]

社説/相次ぐ豪雨 災害に強いコンパクト都市を

(2018/8/7 05:00)

九州北部豪雨、西日本豪雨―。夏や台風シーズンになると毎年、日本列島で大きな豪雨災害が起きている。温暖化や山林の手入れ不足などを背景に、大規模災害はこの先もひんぱんに起こるとの予測もある。犠牲者を減らすために水位センサーや気象観測システムをもっと増やすべきだとの意見もあるが、より重要なのは災害に強い街づくりだ。コンパクトシティーの構想をもう一度見直す必要がある。

豪雨災害が起きると決まって堤防をもっと強化すべきだとか、橋げたや道路を作り直すべきなどの意見が出る。毎回、声が出ながら対策が遅々として進まない理由は一つ、自治体や政府に“予算”が足りないせいだろう。50年や100年に1度の豪雨に備えて安全対策をなどと叫ぶのは、自治体の財政難の実情を考えたら現実的でない。ほかに知恵を絞る必要がある。

豪雨災害をみると犠牲者の大半は、山沿いや中山間地域に集中している。西日本豪雨でも雨量観測システムから予測し自治体が避難を呼びかけたが、時間帯が夜だったり、高齢者は家にいる方が安全だとして逃げ遅れた例も多い。こうした地域では逃げるにも限界がある。

高齢化と少子化を背景に、日本の人口は減少に転じている。税収は減り、行政サービスはおろかインフラの維持もままならない。コンパクトシティーにすればこうした問題は、ある程度、改善する。

地域により、住居ゾーン、ここは農地や山林ゾーン、行政や商業ゾーンというように用途を定めて、それ以外の建物は建築を禁ずる。実施には土地所有者の権利が長らく足かせになってきたが、最近は代表者の承認だけで自治体が借りられるようにするなど、現実的な芽も出始めている。こうした取り組みをもっと加速することが重要だ。

国土交通省や自治体のハザードマップと照合し、本来ゾーンでない住宅には追加税や保険金をアップさせる方策も有効だろう。自動車保険や生命保険ではこうしたインセンティブの事例が出ている。IT化が進んだ現在、できないはずはない。

(2018/8/7 05:00)

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