[ 機械 ]

第61回十大新製品賞/本賞 川崎重工業 純国産ガスタービン

(2019/1/30 05:00)

  • 短期の完成を実現した笠氏(右)と寺内氏(ガスタービン組立工場〈兵庫県明石市〉)

【純国産ガスタービン「M5A」】

累計1万1000台超。川崎重工業が世界で納入した産業用ガスタービンの数だ。実績に裏打ちされた高信頼性を礎に最先端の流体解析(CFD)技術を駆使して誕生した「M5A」は「圧倒的な高効率と環境性能を追求した、コージェネレーション(熱電併給)に最適なガスタービン」(笠正憲エネルギー・環境プラントカンパニーエネルギーシステム総括部ガスタービン開発部部長)だ。

営業部門からの要請を受け、開発が動きだしたのが2014年4月。当初から企画や設計、部品製造を同時並行で進行。難しいプロジェクトを成し遂げ、わずか3年半で市場投入にこぎ着けた。川重のガスタービン新規開発では最短記録だ。

これまでに投入してきた1000キロワット級から3万キロワット級での開発経験に加え「設計、調達、生産などチーム全員がベクトルを同じくし、短期に集中して完成するという非常に良い事例になった」(寺内晃司同ガスタービン開発部第二開発課課長)。

信頼性を継承するためガスタービンの構造や材料は可能な限り既存品と同じにして、CFD技術で小型軽量と高性能を追求。圧縮機の後段静翼やタービン静翼に「湾曲翼」という難易度の高い形状を取り入れるなど、あらゆる場所で空力損失の低減に努めた。約13件もの特許を出願した。結果、出力に対する軸長を従来機種と比較して2割以上短縮するなど競合に比べて小型、高性能を実現した。

メンテナンスの容易さも特徴。運転中に最も損傷する高温部部品を徹底的に分析、あらかじめ負荷を最小限に抑える工夫を取り入れた。高温部開放点検が不要となり、稼働時間の向上に貢献する。

純国産への評価も高い。同クラスのガスタービンでは米社製が席巻するが、川重は国内にサプライチェーンを構築しており、顧客の要望をすぐに反映でき、万一のトラブル対応も早い。

需要は新設、更新を合わせ国内外で年40―50台と見る。低炭素社会の実現に向けて、今後もエネルギー事業の主力製品の一つとして世界展開を加速する。(編集委員・鈴木真央)

【製品プロフィル】

5000キロワット級ガスタービンで唯一の純国産機。世界最高の発電効率32.6%を達成し、コージェネ装置「PUC50D」の総合効率はクラス最高の84.5%。窒素酸化物(NOx)排出量は52.5ppm(ppmは100万分の1)と環境性能にも優れる。PUC50Dの初号機をイビデンの大垣事業場(岐阜県大垣市)に納入。国内外で受注を重ねる。

(2019/1/30 05:00)

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