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高硬度材料加工に不可欠 ダイヤモンド・cBN工具

(2019/2/15 05:00)

業界展望台

ノリタケカンパニーリミテド 工業機材事業本部 研削ソフト技術部

チームリーダー 野村 玲一

ホイール製品の正しい選び方

地球上で最も硬く耐摩耗性に優れるダイヤモンド、それに次ぐ硬さと優れた耐熱性を併せ持つ立方晶窒化ホウ素(cBN)は工具に使用され、特に高精度・高能率加工が要求される自動車、半導体などの産業においてなくてはならないものとなっている。機械加工の研削、研磨、切削に使用されるダイヤモンド・cBN工具の中で、特に研削に使用される砥石(といし)(ホイール)の特徴やその選定について紹介する。

高精度・高能率を実現

研削とは、多数の砥粒(とりゅう)を切れ刃として持つホイールを高速回転させながら目的の加工物に切り込み除去していく加工方式である。ホイールは砥粒とそれを保持するボンドで構成されている。

砥粒にダイヤモンドを用いることで、切削工具や一般砥石では硬くて加工ができないサファイア、炭化ケイ素(SiC)などの非鉄系難削材も容易に加工できる。ただしダイヤは高温化で反応しやすくなるため、鉄系金属にはcBN砥粒を用いたホイールの方が適している。

砥粒は研削が進むことで擦り減り、切れ味が落ちる。そのため摩耗した砥粒を脱落、目替わりさせ、新しい砥粒を加工面に作用させる必要がある。一方で、そもそも硬い材質を削る際の砥粒への負荷は大きく、砥粒が脱落しないよう、しっかりとボンドで保持する必要もある。したがって、ホイールの5因子と呼ばれる砥粒・粒度・集中度・結合度・ボンドに関して、加工条件に応じた適切な設計や選定が重要となる。

このような状況を踏まえ、ダイヤモンド・cBNホイールに使用されるボンドに関し、特徴を踏まえながら簡単に紹介する。

ボンドの特性

電着は砥粒1層のみをメッキで台金表面に固着するため、複雑異形形状が製造でき、また砥粒が大きく突き出しているため非常に切れ味に優れるが、寿命が短く加工面が粗くなる。

レジノイド(レジン)ボンドは樹脂のため、弾性により砥粒の高さがそろいやすく、当たりもソフトで加工面品位に優れる。また、強度が低く砥粒が脱落しやすいため、寿命は短くなるものの砥粒が目替わりしやすく、常に新しい砥粒が加工面に作用し切れ味に優れるという特徴がある。

メタルボンドは金属のため、砥粒の保持力が高く摩耗しにくいため、寿命が長いものの、逆にボンドが後退しにくく砥粒の目替わりが進みにくいため切れ味が劣る。したがって、いかに加工中に適切に砥粒の切れ刃を作用させるかがポイントとなる。

ビトリファイド(ビト)ボンドはガラス質であるため、弾性変形が小さいが硬くて脆(もろ)い特性がある。ビトボンドを用いたホイールの構造は、大別すると前述のレジンやメタルと同じボンドマトリックスの中に砥粒を保持する構造と、砥粒と砥粒をボンドのブリッジでつなぐボンドブリッジ構造(有気孔)がある。ダイヤモンド砥粒の場合、メタルボンドで代用できる用途が多いため、ビトボンドは特定の分野にしか使用されていないが、cBN砥粒の場合は機械設備上でのドレス(切れ刃創生や形状成形)ができるので、幅広い分野の高精度加工に使用されている。

最適な工具選定

これらボンドの特性を踏まえて選定を考えると、粗加工や複雑異形形状の研削、また高能率加工がしたいならば電着が、加工面をきれいに仕上げたい、さまざまなものを汎用性高く研削したいならばレジンボンドが適している。また、寿命や形状精度の維持を重視するならばメタルボンドが、機械設備上にドレス装置が付属されており、鉄系金属を高精度・高能率に加工したいならば有気孔ビトボンドが適している。なお前述のとおり、加工物が鉄系である場合はcBNを用いるとよい。

このように砥粒とボンドの素材に注目すれば、まずは大まかな目安が立てられるが、さらに先に述べたホイールの粒度・集中度・結合度、またさまざまな加工条件の影響について考えていくことで、用途に最適な工具が選定できると考える。

(2019/2/15 05:00)

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