[ トピックス ]

日本防災産業会議と防災科研、災害情報の提供・使用許諾で連携

(2019/2/18 05:00)

  • 覚書の調印式で握手する防災産業会議の相澤会長(左)と防災科研の林理事長(1月23日、東京・霞が関の霞山会館で)

企業の地域状況把握を容易に

防災に関する産学官横断組織である日本防災産業会議(事務局=日刊工業新聞社)の活動が活発化してきた。防災科学技術研究所(防災科研)との間で情報連携に関する覚書を締結したほか、「防災営業支援ツール(仮称)」の開発プロジェクトもスタートさせた。1月23日に開催した官民情報連絡会では、総務省消防庁国民保護・防災部広域応援室の島田敬祐課長補佐が緊急消防援助隊をテーマに講演し、対テロも含めた災害対策の最新施策などについて会員との間で意見交換を行った。

日本防災産業会議と防災科研は1月23日、それぞれが収集・作成する災害情報の提供・使用許諾について覚書を締結した。日本国内で大規模災害が発生した場合、防災科研では災害対応支援などを目的に情報を収集・作成し、「防災科研クライシスレスポンスサイト」で公開している。今回の覚書締結に基づき、それらの情報を防災産業会議の会員企業・団体なども使用できるようになる。

さらに、クライシスレスポンスサイトの災害情報を防災産業会議の会員が利用したり活用したりすることで新たに作成された情報について、防災科研側での使用も可能とする。これまでクライシスレスポンスサイトの利活用は府省庁および関係機関、自治体中心の取り組みだったが、そこに民間企業・団体も加わることで、国土全体の災害対応力の一層の向上を図る狙いがある。

防災産業会議の会員のメリットとしては、コンピューター画面のマップ上に災害情報をわかりやすくビジュアルに表示できること。自社拠点および協力会社周辺の地点に対し、例えば道路情報や浸水・給水状況などを一画面のマップ上でまとめて確認でき、万一の際の災害対応支援などに役立てられる。提供される情報については気象なども含め、メニューを随時増やしていく予定だ。

すでに防災産業会議と防災科研とが連携し、先行的に進めている別のプロジェクトもある。特定非営利活動法人リアルタイム地震・防災情報利用協議会(REIC)の協力を受け、地震発生時に防災産業会議の会員企業およびグループ会社の工場・支店・営業所・工事現場といった拠点ごとで推定される震度や建物被害推定情報を、当該企業に対してほぼリアルタイムに情報配信する実験を2018年にスタートさせている。

今回の覚書締結について、防災産業会議の相澤益男会長、防災科研の林春男理事長のコメントは次の通り。

広く世界に発信/防災産業会議・相澤会長

今回の防災科学技術研究所との連携で官民が保有する災害関連情報をコンピューターのマップ上で統合することにより、世界に類を見ない最先端の災害対応情報システムの構築が期待されます。

日本は大規模自然災害に頻繁に見舞われる災害多発国ですが、日本防災産業会議としましては防災科研および会員各社の連携強化に努め、こうした課題を防災イノベーションにつなげつつ、成果を広く世界に発信していく所存です。

積極的に協働/防災科研・林理事長

防災科研は大規模災害発生時の被災地における災害対応支援などを目的に情報を収集・作成し、府省庁連携防災情報共有システムを介して府省庁・関係機関と共有するとともに、クライシスレスポンスサイトで一般に公開し、災害対応に貢献しています。災害に強い社会の実現を目指す上で、産業界との連携は必要不可欠です。日本防災産業会議との取り組みがその先駆けとなり、礎となるよう、積極的な協働を進めていきたいと考えています。

  • 官民情報連絡会の様子

防災営業支援ツールも

日本防災産業会議は防災にかかわる会員企業の製品・技術・情報などを網羅した防災営業支援ツールの開発に着手した。顧客の立地する地域ごとの災害リスクに応じてワンストップで災害対応ソリューションの情報を提供できるようにし、地震・豪雨・台風・高潮といった自然災害での防災・災害支援に貢献すると同時に、会員相互の営業機会の拡大にもつなげる。2018年度内にはプロトタイプが完成する見通しで、19年度から防災産業会議の会員各社がテストに入る。

防災営業支援ツールの操作イメージとしては、事務所や自治体など顧客の住所情報をポップアップメニューに入力することにより、地域特性などから災害リスクを算出。災害リスクに応じ、会員企業があらかじめ入力した製品・技術などのソリューションを企業の枠を超えた形で紹介する。

これにより、顧客側は災害リスクとその対応策を具体的に知ることができ、会員企業としては防災に関する情報をより専門的かつ顧客に合った形で提供できる。さらに複数の会員企業がこうした共通の仕組みを持つことで、相互に協力しながら営業の機会を得られるという利点が期待できる。

とりわけ中小企業の間では大規模自然災害などに対する事業継続計画(BCP)が策定されていないケースが多い。そのため、このシステムが中小企業の事務所・工場などのリスク評価および対応策の検討を進める上で、有効なツールの一つとなる可能性がある。

講演 大規模災害に備えた緊急消防援助隊の充実強化

  • 島田敬祐氏

総務省消防庁 国民保護・防災部広域応援室課長補佐 島田敬祐氏

大規模災害時に出動する部隊としては自衛隊、警察、厚生労働省などのさまざまな組織・団体で整備されている。緊急消防援助隊は全国の消防本部で整備されている実動部隊を国の部隊として登録し、発災した時に活動する。近年は毎年のように大規模な風水害が発生しており、今後南海トラフ地震、首都圏直下型地震といった国難級災害発生のリスクも高まっているため、求められる役割も増大している。

2018年度は昨年9月の北海道胆振東部地震まで4回出動・活動している。7月豪雨では広島県、岡山県、高知県、愛媛県といった被災県の知事から要請を受け、最終的には全国23都道府県から緊急消防援助隊の部隊が出動し、約400人を救助した。

緊急消防援助隊は基本的には災害が発生した県の近隣4県から出動し、不足する場合は二次的に12県の部隊が登録されている。7月豪雨の場合、出動後に地元が被災する可能性も考慮し、地理的に離れた大阪府などから出動した。

胆振東部地震では北海道に近い東北4県から陸上部隊が進出し、土砂災害の救出に必要な重機、さらに関東から特殊災害対応部隊が進出し、24人を救助した。

これらを踏まえ今後はまず、長期的に派遣体制を確保しなければならない。一方で被災地への迅速な進出が重要と考える。さらに災害に対応した車両、機材も整備しなければならない。近年多発する風水害に対応した車両などを重点的に整備する。

消防の広域応援の仕組みは、市町村ごとの消防組織の活動から、都道府県外での相互応援協定に基づいた展開、さらに大規模な災害では国レベルでの対応と拡大する。被災県からの応援要請に基づき、まず近隣県、さらに国難級の災害の場合は全国から集中的に出動することになる。主要な任務は人命救助など緊急的な災害対応だが、大規模広域災害では長期間にわたる活動が必要となることもある。

95年の阪神・淡路大震災の反省として、地元の消防組織なども被災することを想定し、円滑な全国的相互応援体制の確立を目指した。同年6月に緊急消防援助隊を創設し、03年には国の責任を法制度で明確にし、活動経費や装備負担の税制措置などを定めた。95年以降これまで38回出動し、5年に1度整備計画を見直している。

19年度からの新たな計画では南海トラフ地震への対応や、現在全国に6000ある部隊の増強も目指す。大規模水害や、化学兵器、テロ災害などへの迅速な対応も図る。

装備としては水陸両用バギーや中型、大型の水陸両用車両などを順次配備していく。ドローンや、石油コンビナート作業に対応した特殊車両のほか、火災などの状況を画像で分析し、自動的に放水するといった消防ロボットシステムの研究開発も進めている。

(2019/2/18 05:00)

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