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重要性高まる JCSSの計量校正サービス

(2019/4/3 05:00)

業界展望台

1キログラムに計量された砂糖や給油量に応じて課金されるガソリンは、計測結果が「正しい」からこそ、購入者は結果に沿った代金を支払う。スピード超過を理由に検挙する警察は速度測定器の示す数値がドライバー側と整合するからこそ、検挙の根拠が示せる。リモコンのボタンをA社、B社に製造させてもきっちり同じ製品が納品されるのは、それぞれの製造現場で使用する計量器の値が同じであり、A社もB社もそれを基準にリモコンボタンを製造するからだ。計量の信頼性を確保し、計量計測の基準を供給する制度が計量法校正事業者登録制度(JCSS)だ。

数値の信頼性確保 「速さ」の区分 新設

計量器の示す値はわれわれの生活上、大きな信頼を持って受け入れられている。しかし、本当にその数値は正しく、結果の数値を基準にして良いのかどうか―。的確に測られているのか、その計量計測にさらなる信頼を付与し得るのがJCSSだ。

JCSSとは計量法に基づく制度であり、計量器に対して国家計量標準に準じた校正ができる事業者を登録する制度だ。計量器について国家計量標準にトレーサブルな校正を行う事業者に対して、その校正技術能力が試験所および校正機関認定の国際規格ISO/IEC17025を満たしているのか、製品評価技術基盤機構(NITE)の認定センター(IAJapan)が経済産業大臣に代わり審査して登録を行う。

IAJapanの審査は(1)書類審査(2)登録申請者の設備や校正作業の現地審査(3)技能試験への参加状況―を経て登録される。登録後はさらに4年ごとの登録更新審査を経る必要があり、校正事業者の能力に信頼性を付与している(写真)。登録された校正事業者は登録を受けた範囲内の自社製品や持ち込まれた他社製品に対して校正を行い、校正結果によってJCSS標章を付した校正証明書を発行できるようになる。

一方、ビジネスのグローバル化に伴い、計量器の精度を国際的にも証明するニーズが増えてきている。IAJapanの登録審査に、さらに(1)2年以内の認定維持審査(2)技能試験への参加―を経た校正事業者は「認定事業者」としてJCSS認定シンボル付き校正証明書を発行することができる。この認定事業者が発行する校正証明書は国際取引において通用する証明書だ。これはIAJapanが国際試験所認定協力機構(ILAC)、アジア太平洋認定協力機構(APAC)の相互承認取り決め(国際MRA)に参加しているためで、米国(NVLAP、A2LA)、英国(UKAS)、ドイツ(DAkkS)、オーストラリア(NATA)などの認定機関が認定した校正事業者が発行する校正証明書と同じ効力を発揮する。ジャパンクオリティーへの信頼性を高め、国際ビジネスを優位に進める切り札として大いに有効だ。

JCSSの登録区分は「長さ」「質量」「時間」「温度」など25の分野で展開されており、産業技術総合研究所がそれぞれの国家計量標準の維持・管理をしている(図1)。直尺やノギス、メスシリンダーなど全220種の計量器を校正対象(登録対象)として定めている。利用者からのニーズに応え、登録区分の充実が図られてきた中で、昨年は新たに「速さ」が設けられた。新設の「速さ」の区分では車速計の校正が可能になっている。詳しくはIAJapanの公開文書(https://www.nite.go.jp/data/000049549.pdf)で確認できる。

JCSS登録事業所数は年々増加傾向にある。2019年1月末時点のJCSS登録事業所は266カ所。うち、国際的に通用する校正証明書を発行できる認定事業者は230事業所に上る(図2)。また、登録区分別で見ると、取り扱い事業所がいちばん多いのは「質量」、2番目に多いのが「長さ」を校正する事業所で、「電気(直流・低周波)」「力」と続く(図3)。

重要性、動画でPR

JCSS登録事業者が発行するJCSS校正証明書発行件数も年々増加傾向にあり、2017年度では累計約53万枚を発行している(図4)。近年、食の安心・安全や医療技術の延伸、また交通機関の安全性などが求められている。「正確に測る」ことで不測の事態を防ぐ―。年々増加する校正証明書発行件数の推移は「正しく測る」ことが産業界全体で重要視されている結果といえよう。

登録区分別でいちばん取り扱い事業所の多い「質量」だが、長らく1キログラムの基準となっていた国際キログラム原器が、今年の5月20日をもって撤廃される。これはフランスにある国際度量衡局(BIPM)が1889年以来約130年間基準器として保管していたもの。しかし、原器は厳重管理下で保管していたとしても、表面の劣化で質量がごくわずかながら変化する。近年深刻化する大気汚染などの懸念もあり、原器をナノレベルで管理する代わりに、長期間不変の基準値として使用するために、物理定数であるプランク定数を測定基準にする方針へ転換する。これはシリコン単結晶の球体を原子単位で測定し、測定結果とプランク定数からキログラムを定義する。これに伴い、日本国キログラム原器も撤廃される。

IAJapanは計量計測トレーサビリティーの必要性を簡単に紹介する「ザンジバール島の時計」という動画を、ユーチューブで公開している。同島民の船長が時報代わりに撃っていた大砲は、街の時計屋が時刻を調整する基準にしていたが、大砲を撃っていた船長はその時計屋で自分の時計の時刻を合わせ、大砲を撃っていた―という物語。時報と時計屋と、どちらの時刻が基準なのか、物語を用いて計量計測トレーサビリティーの重要性を簡単に紹介する内容だ。

「測ること」、その基準は国家・社会が円滑に進む基準となり、生活全ての根幹となる。そこに大きな信頼を付与するJCSSとその登録事業者が果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

(2019/4/3 05:00)

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