[ オピニオン ]

社説/脱炭素と自動車産業 技術的な主導権を目指せ

(2019/5/30 05:00)

6月の主要20カ国・地域(G20)首脳会合では、地球温暖化防止と「脱炭素社会」の実現に向けた取り組みが主要テーマの一つになりそうだ。自動車からの温暖化ガス排出抑制は重要なファクターだが、ここのところ米欧中それぞれ、固有の事情から極端な政策の打ち出しが目立つ。日本は惑わされることなく、脱炭素の達成に向け技術的な主導権を取りにいくべきだ。

極端な政策の一つが米国。トランプ政権は、オバマ政権が定めた燃費規制を大幅緩和した。ゼロエミッション車の販売を義務化するカリフォルニア州独自の規制(ZEV法)も、廃止に向け交渉するという。

中国では、電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)の販売を義務付けるNEV規制がスタート。背景にはEVという新技術をテコに、自動車技術の主導権を日米欧から奪還したい政府のもくろみがある。欧州でも厳しい燃費規制があるのに加え、自動車各社はエキセントリックなほどのEVシフトを進める。独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正への揺り戻しという固有の事情があるのを忘れてはいけない。

一方で日本の政策は一見地味だ。電動化や水素、バイオエネルギーなどの技術を組み合わせ、2050年までに自動車1台当たりの二酸化炭素排出量を8割削減。燃料採掘から走行まで(ウェル・トゥ・ホイール)の工程トータルでのカーボンフリーを目指すというものだ。

EVの販売義務付けや、エンジン車の撤廃といった分かりやすい内容ではないが、正しい方向性だろう。環境技術は一長一短があり、現段階で主流になると決まったものはないからだ。

電動化では電池のコストや性能、水素社会ではインフラ整備、バイオエネルギーでは食糧との競合や安定生産がネックになる。いずれの問題解決にもこれまでの延長線上にとどまらない“非連続なイノベーション”が必要だ。政府は規制緩和や人材供給、環境政策の海外への展開などの側面支援に徹し、画期的なイノベーションが日本から生まれるのを後押ししてほしい。

(2019/5/30 05:00)

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