[ 機械 ]

サーボ駆動式プレス機のCFRP成形への適用

(2019/7/30 11:00)

 サーボプレスはサーボモーターを用いてプレスのスライドモーションなどを制御できるプレスである。サーボプレスによって高張力鋼板のプレス成形やホットスタンピング、また振動モーションによる鍛造など適用が進んでいるが、ここでは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形への適用について紹介する。各種サーボプレスによるCFRP成形の概要を述べた後、筆者が取り組んだ事例について紹介する。

金沢大学 設計製造技術研究所 教授 米山 猛

量産は熱可塑性CFRPに期待

 CFRPには熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)を炭素繊維にしみ込ませた熱硬化性CFRPと、熱可塑性樹脂(射出成形に使われている樹脂)を炭素繊維にしみ込ませた熱可塑性CFRPの2種類がある。

 炭素繊維へ樹脂をしみ込ませやすい熱硬化性CFRPが先行して開発され、航空機に採用され、自動車へも適用されてきているが、将来の量産成形としては熱可塑性CFRPが期待されている。

 プレスを用いた熱硬化性CFRPのプロセスは、まず炭素繊維だけの布を積層してプレスで仮止めし、それを別のプレス機に入れて、熱硬化性樹脂を注入し、加熱硬化させる。加熱硬化時間が数分という短い樹脂が開発されたので、独BMWの「i3」のような自動車の量産が可能となった。

 一方、熱可塑性CFRPの場合は、あらかじめ炭素繊維に熱可塑性樹脂をしみ込ませた素材を作り、それを加熱してプレス成形する工程が基本となる。あらかじめ熱可塑性樹脂を炭素繊維にしみ込ませたプレートは、スタンパブルシートと呼ばれている。

 これを樹脂が溶ける温度まで加熱して変形できる状態にし、プレスして変形させた後冷却して固化させれば、成形品を取り出すことができる。サーボモーターを活用した高速プレスで加熱したスタンパブルシートをすばやく変形させて、冷却・固化させる成形法が開発されている。

不連続繊維で複雑形状を成形

 鋼板の上に熱可塑性CFRPテープを加熱溶着して部分補強を行い、それをサーボプレスでプレス成形することも開発されている。スタンパブルシートでプレス成形するのと同時に金型の内側から樹脂を射出成形して、リブを付けるハイブリッド成形も開発されている。

 一方、炭素繊維を一定の長さにカットすることで複雑な形状への成形を可能とし、しかも強度の高い成形品を得る方法も開発されている。これには二つの方法がある。

 一つは2軸押し出し機に炭素繊維と樹脂のペレットを入れて、カットした炭素繊維と溶融した樹脂を混錬した材料を作り、これをプレスに挿入して直接プレス成形する方法である。LFT―D法(Long Fiber Thermoplastic Direct)と呼ばれている。

 もう一つはあらかじめ樹脂を含浸させた炭素繊維テープを所定の長さにカットして、これをちりばめてプレートを作り、あるいはそのまま金型内に挿入して、加熱してプレス成形する方法である。

サーボプレスでの成形事例

  • 図1 サーボプレス機でスタンパブルシートから成形し、2個の縁をさらにプレスを用いて加熱接合した成形品(コマツ産機との共同研究)

  • 図2 サーボプレスのサーボダイクッションを活用し、スライド金型を用いて側壁部を荷重制御で成形したU字ビーム(コマツ産機との共同研究)

  • 図3 不連続繊維の熱可塑性CFRPをダイクッションを活用して流入させ、リブ付きパネルを成形した例(コマツ産機との共同研究)

 筆者らが取り組んできた事例について紹介する。図1は織物炭素繊維の熱可塑性CFRPスタンパブルシートを加熱して、サーボプレスを用いて成形した事例である。熱可塑性樹脂は冷却・固化するときに熱収縮するので、通常のサーボプレスはスライド制御(位置制御)であるが、冷却中の荷重を一定に保つ荷重制御プログラムに変更して成形を行った。その結果、炭素繊維と樹脂との界面の密着性を維持したままで成形ができている。この密着性が悪いと、空隙(ボイド)ができ、強度が下がる。

 図2はサーボダイクッション(ダイクッション荷重を一定に制御)を活用して、金型をスライド構造(くさび機構を用いて上下動を水平動に変換する)にし、成形品の側壁部をサーボダイクッションで加圧しながら成形したU字成形品である。プレスは基本として上下に加圧する機能を有するが、スライド金型を用いて側面を加圧することもできる。

 さらに図3のように、連続繊維スタンパブルシートを用いて位置制御によって連続繊維シートをプレス成形し、さらに不連続繊維の材料をダイクッションモーションの活用によって流入させてリブ付きのパネルを作ることができた。熱可塑性CFRPのテープカット材を流動させてリブを結合させるので、単に樹脂を注入するよりも強度の高いリブを成形することができる。パネルの位置制御とリブ流入との組み合わせにより、リブとパネルの結合部の強度を上げることができる。

 つまり、スライドの最下点よりも少し浮かした位置で不連続繊維材を流入させれば、射出圧縮成形と同じようにリブ材料をパネルの背面まで流入させて都合させることができる。

 一方、不連続繊維のテープカット材を用いてプレートやビレットを作り、これを加熱して、金型内に入れ、鍛造と同じように成形した例が図4に示すカップである。樹脂の冷却時の熱収縮を補うためにダイクッションによる加圧を冷却時に続けている。このように不連続繊維の活用によって複雑形状の成形品の成形が可能である。

  • 図5 不連続熱可塑性CFRPでプレス成形して作成した歯車(モジュール3、歯数16)(高周波精密との共同研究)

 同じように不連続繊維材を用いて歯車成形を行ったのが図5である。炭素繊維の長さを保ちながら成形を行うので、成形後の強度が落ちない。複雑形状への成形では炭素繊維がどのように配向されるかが大きな課題であるが、元の板材やビレット材における繊維配向と成形中の繊維配向を組み合わせて、適切な繊維配向構成を持つ成形品の作成が可能であると考えている。

CFRPの塑性加工に期待

 サーボプレスはスライドモーションの制御だけでなく、荷重のコントロールも可能であり、今後CFRP成形の発展のためには、さまざまな荷重モーションの可能なメカニカルサーボプレスの発展も期待したい。またサーボダイクッションや多軸のサーボプレスは、いろいろな位置モーションや荷重モーションを組み合わせることができ、連続繊維CFRPと不連続繊維CFRPとの複合、CFRPと金属との複合成形、接合や切断のモーションなどさまざまなことが可能になるはずである。今後ますますの発展を期待したい。

 炭素繊維はまだまだ高価であるが、それ以上に高価なのが、炭素繊維に樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂の成形品を作成するまでの加工費である。つまりプレス機を用いてCFRPを量産成形する技術の確立が何よりも求められている。日本発のサーボプレスが世界で活躍しているように、日本発のCFRP量産成形法が発展し、普及することを期待している。筆者は塑性加工を専門としているが、これまで金属加工に主に携わっていた方々もCFRPのプレス加工や鍛造など、「CFRPの塑性加工」にチャレンジされることを期待する。

→ MF-TOKYO2019特集

(2019/7/30 11:00)

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