フィールドサービス技術者育成 VRなど充実の設備【PR】

(2019/8/31 05:00)

 富士電機のフィールド技術研修所(東京都日野市)は競合他社も一目置く。同社の東京工場内にあり、主力の受変電設備や制御システムなどの納入、据え付け、試運転調整から保守メンテナンス、改修工事までを行うフィールドサービス技術者専用の育成拠点だ。

 受変電設備などのパワエレシステムは富士電機の成長を支える中核事業だ。現中期経営計画の終わる2023年度のパワエレシステム事業は売上高で18年度比9.8%増の6000億円、営業利益で同32.6%増の480億円を目指している。

 現在、同研修所のような人材育成拠点の重要性が業界内で高まっている。競合他社や同社の顧客が見学に来ているのもその表れだ。08年のリーマン・ショックで国内の設備投資が激減し、その後に緩やかな回復基調は続くものの、金融危機前の水準には戻っていない。工場・設備の新設案件が減るということは、富士電機やサービスベンダーにとって若手技術者の育成の機会消失を意味する。

 納入した工場なら多くある。ただ、パワエレシステム・インダストリー事業本部フィールドサービス統括部カスタマーサービスセンターの油谷訓男担当部長は「稼働済みのプラントに保守・メンテナンスで入る際は当然、顧客に迷惑がかかるようなことはできない」と現地OJTでの育成の難しさを言う。その間も定年退職でベテラン技術者の減少は止まらず、技術力アップと継承の場をどう確保するかが課題だ。

 代わりに威力を発揮するのが2012年設立の同研修所だ。工場の受変電設備を模して、6.6キロボルト高圧盤や無停電電源装置(UPS)など13設備をそろえる。プログラマブルコントローラ(PLC)室もあり、現場作業を想定した訓練用だが、富士電機が実際に販売している製品を使うのが特徴だ。

 富士電機は水力発電設備で国内3位のシェア(22%)を誇る。同研修所ではインバーターで水量の変化を再現した疑似の水力発電プラントもつくり、現場に即した訓練の機会を提供している。

 安全衛生教育やテクニカル教育、挨拶の仕方も含めたマインド教育など400以上の専門技術プログラムを用意し、座学と実技を組み合わせる。若年層だけでなく、中堅層以上に向けた繰り返し研修も充実する。フィールドサービス品質の向上は製品の拡販にもつながる。「顧客対応が良いと、製品の再購入や他者へ薦めてもらえる頻度が高まる」(油谷担当部長)と事業戦略と不可分だ。

 

 同研修所は要望があれば社外でも利用できる。体験や見学で200社以上の実績がある。非競争領域と位置づけて、垣根なく取り組みを共有できるよう体制整備を進める考えだ。

 同研修所のもう一つの特徴は仮想現実(VR)機器を活用した危険体感教育だ。同統括部人財育成室の高橋克之主査は「今の若者は安全な社会で育ったせいもあり『誰かが守ってくれる』と勘違いしている」と苦言を呈する。当事者意識の欠如は労働災害における事故を引き起こす恐れがある。

 厚生労働省の調査「平成29年事故の型別労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷災害のうち転倒が24%、墜落・転落が17%、はさまれ・巻き込まれが12%だったという。

 富士電機の危険体感教育は座学だけでなく、12の設備を使って電源短絡・電線過熱体感や漏電遮断体感、感電体感、ヘルメットの重要性などの教育カリキュラムを組む。半日かけて、現場での経験不足を補って安全意識を向上させるのが主な目的だ。

 その一環として17年度に導入したのがVR機器だ。開発済みのコンテンツは現在3つで、高所からの墜落や開口部からの転落、感電などだ。中でも、実際に東京工場内にあるビルの6階(26メートル)から外の足場へ安全帯なしで出るVR体験は臨場感にあふれる。体験者のうち3分の1は仮想空間と分かっていても地上へ飛び降りられないほどだ。

 今後は大容量バッテリー短絡や回転体巻き込まれ、脚立からの転落などのVRコンテンツを追加する予定。「良い意味でトラウマになることで確かな安全行動を体得してほしい」(高橋主査)と最新技術を活用していく。ポータブル型のVR機器も開発し、遠方の工場への貸し出しに加えて、サービスを含めて主要顧客にも紹介する方針だ。

 危険体感教育の受講者数は17年度に社外を含めて約440人だったが、18年度には同700人超に拡大した。18年度の講座数も前年度比15%増の108講座に増やした。19年度はさらに講座を充実させる考えだ。

 富士電機の経営スローガン「熱く、高く、そして優しく」の「優しく」は、社員や顧客など全てのステークホルダーを意識した言葉だ。

 フィールドサービス拠点は全国に40拠点以上あり、約1500人の技術者が24時間体制で待機している。社会や産業のインフラを支える電気機械を担当する責任は重い。国内は今後設備の老朽化がさらに進むため、フィールドサービス技術者の活躍の場は広がりそうだ。

 油谷担当部長は「お客さまの『来てくれてありがとう』が我々の励みだ」と1500人の気持ちを代弁した。

(2019/8/31 05:00)

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