社説/東京五輪のソフトレガシー 安全安心の国を取り戻そう

(2019/9/24 05:00)

2020年東京五輪・パラリンピックは超高齢社会で行う初めての大会でもある。ボランティアやおもてなしに加え、日本は安全安心な国であることを、もう一度自信を持って世界に発信できる取り組みが重要だ。

前回の東京五輪では新幹線や高速道路など多くのレガシー(社会遺産)が生まれ、その後の経済成長を支えた。あれから56年、成熟社会を迎えた日本は世界から訪れる人々に何を発信し、どんなレガシーを残せるか。ハードインフラだけでなく、ソフトレガシーに注目したい。

外国人旅行者が日本に来て驚くことは多々ある。安全で清潔な街、生水が飲めること、時刻通りに来る電車など挙げればきりがない。ゴミの分別やタクシーの自動ドアなど、我々が当たり前と思っていることも驚きをもって受け取られる。

一方で、困惑することも少なくない。例えば電車やバスで高齢者に席を譲らない、公衆Wi―Fi(ワイファイ)が少ない、英語表記の案内が少ない、電子決済できる店が少ない、首都圏の交通網が複雑など、マナーと仕組みに関することが多い。

こうした課題を、官民の関係者が一つひとつ解決していくことが必要だ。高齢者による交通事故やあおり運転など車の安全も問題となっているが、人が渡ろうとしている横断歩道で車が止まらないことや、停車中のスクールバスを平然と追い抜くことは、世界の交通マナーの常識から大きく逸脱している。

また昨秋の台風時に孤立した関西国際空港や今夏に首都圏を襲った台風では、外国人に正しい情報が伝わらなかった。自然災害はゲリラ豪雨など激甚化する傾向にある。有事の際の多国語による情報伝達も大きな課題だ。幸い今はほとんどの人がスマートフォンを持っている。ウェブや会員制交流サイト(SNS)をうまく活用することで、情報の問題は多くが解決できる。

前回の東京五輪では情報伝達のピクトグラムが生まれ、安全を守る民間警備会社が認知された。もう一度、あらゆる立場の人が安全安心を突き詰め、自信を取り戻すきっかけにしたい。

(2019/9/24 05:00)

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