現場の作業効率を向上 建設機械

(2019/11/12 05:00)

業界展望台

ICT支援サービス相次ぎ投入

労働力不足が深刻化する土木・建設業界の課題解決策として提唱する、国土交通省の「アイ・コンストラクション」。測量、設計、施工、検査、維持管理といった工事現場の全てのプロセスをICT(情報通信技術)化するという取り組みだ。これに合わせて建設機械メーカー各社では、ICTを活用した機能を搭載する建機や、各プロセスをICTで支援するサービスを相次いで投入している。ICT活用の提案を加速させる各社の動きを追った。

技術連携・提案加速

建機各社ともに、ICTを使って、安全で生産性の高い現場の実現を目指している。ただ、自社にはない技術のためICTに強みを持つパートナー企業とともに開発は進めている。

  • コマツの「スマートコンストラクション」利用イメージ

コマツは2001年に機械の稼働管理システム「コムトラックス」の提供や、08年に鉱山現場向け「無人ダンプトラック運行システム(AHS)」を世界で初めて市場に導入するなどICT活用では先駆者的な存在だ。

そして現在、注力するのが、ICT活用で工事現場の業務を支援するサービス「スマートコンストラクション」だ。15年のリリース以来、8700現場で利用されている。

ドローンによる調査・測量、そこから得られた3次元(3D)工事データを使った施工計画、ICT建機と各種ソフトウエアでの3Dデータを活用した施工・施工管理、そして、ドローンによる出来形検査と施工の各プロセスをICT化した。

これまではプロセスごとのデジタル化だったが、今後は「全てのプロセスがデジタル化され、『つながる』こと」(四家千佳史執行役員スマートコンストラクション推進本部長)を目指していく。これにより施工全体が最適化するという。

また、既存の建機のICT化も促進する。コマツを含めて全メーカーの既存油圧ショベルに後付けし、ICT機能対応型にするキットを20年4月に発売予定。売り切りタイプと定額制(サブスクリプション)タイプを用意し、ICT建機導入のハードルを下げる。

スマホで見える化

  • 日立建機の「ソリューションリンケージ」の利用シーン

日立建機は16年から「顧客ソリューション本部」を立ち上げ、ICTを活用した工事現場業務支援サービスの開発に着手した。

「ソリューションリンケージ」シリーズはスマートフォン専用アプリを活用した土量計測や、スマホ・タブレット端末を使って、建機や人、ダンプトラックの位置など現場の見える化などのサービスを提供する。さらに、施工現場でサービスを利用するための安定した通信環境もラインアップする。

同社では、ICT活用を二つの観点からアプローチする。まず、大規模事業者向けにICT建機で安全性やコスト削減を支援する。中小規模事業者に対しては、簡易的にICTを活用できるような支援をする。

既存の自社製機械にセンサーやアプリケーション(応用ソフト)など必要機器を後付けして利用できるサービスの開発に注力する。RFタグを装着した作業員を検知して衝突を未然に防ぐ運転支援サービスなど、製品化に向けて準備を進めている。

今後はいかにICT建機やサービスを普及させていくかに尽力する。「普及することが最終的に(販売)価格にも効いてくる」(顧客ソリューション本部ソリューション事業センタの古野義紀センタ長)からだ。現在、ICTを使いこなすための教育プログラムやミニ体感会など地道な活動を行っている。

狭小地の作業支援

  • コベルコ建機のチルトローテータの利用シーン

コベルコ建機は「街中や狭い場所で細かい作業を支援する」(高木徳雄ICTホルナビ推進室長)というのがICT活用の方針。「ホルナビ」ブランドとしてICT建機を展開する。

コントロールパネルなどの表示やアラームで掘削作業を効率化するガイダンスや半自動で仕上げ作業を支援するマシンコントロールシステムを搭載した建機。その中でも、特に自社の優位性を出せる製品として「iDig Dozer」と「チルトローテータ」の販促活動に注力する。

iDig Dozerは機械前方部分にドーザブレードが付く油圧ショベル。1台で「掘削」と「敷き均し」の両方の施工ができる。オペレーターの目線位置から見えにくいブレードの高さと施工面の距離を表し、ガイダンスに従いながら作業が行える。

チルトローテータはバケット部分を傾けて回転させられる油圧ショベル用先端アタッチメント。スウェーデンのメーカー「エンコン」の総代理店である同社が日本国内では独占的に取り扱える製品。既存のアタッチメントでは掘る角度が変わると機械を走行させなければいけない。だが、同製品は走行させずに多様な角度の方面に合わせられる。バケット回転機能で、ならし(整地)・排土作業を効率化し、整地作業の時間短縮に貢献する。また機体を動かさずに障害物を避けて整地できる。

各社のICT活用の最終目標は、遠隔操作を含めた建機の自動化だ。コマツは人工知能(AI)などを使った完全無人の油圧ショベルやクローラー式ダンプの実証を続けている。日立建機は鉱山向けのダンプトラック自律走行システム(AHS)の商用化に向けて豪州で実証を行っている。コベルコ建機は日本マイクロソフトと協業し、「K―DIVE CONCEPT」を推進する。建機の遠隔操作を通じて、建設現場のテレワーク化を支援する。

建機の自動化は、各社が目指す、安全で生産性の高い現場の実現の一番の近道だと言える。それぞれの早期の実用化が待たれる。

(2019/11/12 05:00)

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