“速い”“強い”転造加工

(2019/12/7 05:00)

業界展望台

転造はダイスと呼ばれる工具(金型)で棒状の被加工物(ワーク)を転がしながら成形する塑性加工技術。生産性が高く、加工品質が安定しており、ネジ、歯車、ウオーム、スプライン、セレーション、ローレットなど、回転対象体の部品加工に広く用いられる。転造盤のコンピューター数値制御(CNC)化、ダイスの設計技術の高度化など、加工の高精度化が進み、適用範囲の拡大が続いている。

時間短縮、長い工具寿命 材料を無駄なく活用

転造盤とダイスによって行われる転造加工は大きく分けると、板状のダイスを往復させる平ダイス転造と、円形のダイスを回転させる丸ダイス転造の2種類。ほかにアーチ形状のセグメントダイスと丸ダイスで構成するプラネタリー転造などがある。

平ダイス転造は平行に配置した一対のダイスでワークを挟み、ダイスの一つを固定し、もう一つを平行方向に往復運動させることで加工する。主な用途として汎用ネジの大量生産に用いられる。また、比較的高い加工精度が得られる両スライド式の平ダイス転造盤もある。

丸ダイス転造のダイスは円筒状で、同一形状の2個または3個のダイスを用いそれらを同一方向へ、同じ速度で回転させながら距離を狭めて加工する。ダイス間の距離を自由に変更できることが特徴で、加工の応用性に富んでいる。

プラネタリー転造は固定したセグメントダイスの内側に配置した丸ダイスを回転させて加工する。加工の応用性はないが3種類の転造のうち最も高い生産性がある。

転造加工の最大のメリットは生産性の高さだ。塑性加工の一種であり、切削加工と比較すると加工時間は著しく短い。加工に用いる工具も切削工具に比べて転造ダイスは非常に寿命が長い。

材料については無駄が生じない加工方法といえる。あるパーツを加工する場合、切削加工では材料の余計な部分を除去して形状を整える。除去された材料は切りくずとなる。一方、転造加工では絞る部分と盛り上げる部分によって成形することから、製品外径よりも細い材料を使い、切りくずの発生もない。

こうしたことから転造加工の特徴は短い加工時間、長い工具寿命、材料を無駄なく利用する省資源性の生産技術といえる。ワークによっては切削加工の10分の1、20分の1という高い生産性を実現できる。加工に必要な力は局所的な加圧による塑性変形を連続的に行う逐次成形加工なので、鍛造加工よりも小さな力で大きな変形量を得られる。

ダイスを用いた加工なので、安定した加工精度を得ることができ個々の加工品の品質にバラつきが少ない。生産性の高さと合わせ、中・大量生産に適した特性の加工技術だ。

加工硬化で高まる強度 中空品成形も可能に

転造加工で成形することによって得られるメリットもある。ワークの表面は研削加工されたダイスによって押しつぶされるので、面粗度が向上する。焼結歯車の圧密・仕上げ工程に適用する事例もある。

ワークの強度が向上することも大きな特徴だ。金属材料の内部にはファイバーフローと呼ばれる繊維状金属組織がある。切削加工の場合はファイバーフローを切断してしまうが、転造加工ではファイバーフローを切断せずに成形する。また、塑性変形したワークは加工硬化によって強度が最大で2倍程度まで高まる。

この“強さ”が加工品の信頼性につながり、航空機用ネジやタービンシャフト、新幹線車両の油圧配管部品、自動車のエンジンボルト、フランジボルト、建物や橋脚の基礎用ボルトなどに採用されている。

材質としては塑性変形するものであれば適用できるので、チタン合金や耐熱鋼はもちろんのこと、鋳物以外であれば転造加工が可能だ。金属素材ばかりでなく、塩化ビニール製ボルトのような化成品に適用する事例もある。

転造加工はダイスの設計技術の進展、転造盤のNC化などによって以前よりも加工精度は格段に向上している。また、応用技術の開発も進んでいる。例えば3ダイス型の丸ダイス転造によって薄肉中空部品への転造加工技術も大きく進展している。

自動車の電動化、軽量化、安全性向上という大きな流れの中で、モーターの回転方向を転換して伝える機構としてウオームとギアの組み合わせは非常に有効だ。

その際にパーツの強度を確保しながら軽量化を図る上で、転造品が活躍する機会はますます増えそうだ。

(2019/12/7 05:00)

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