(2019/12/12 05:00)
富士電機は独自のAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)技術を活用して顧客の課題解決に挑戦している。
現在はAIが導き出した答えの原因・根拠がわからないブラックボックス型が主流なのに対し、同社が取り組む「説明できるAI」は、答えとともに、学習データと計算モデル、答えの原因・根拠の三つを示すことができる。「説明できるAI」技術は、バッチ式MSPC(多変量統計的プロセス管理)、画像ディープラーニングとJIT(ジャスト・イン・タイム)予測、構造化ディープラーニングで構成される。
11月から本格展開を始めたのが、AI技術の1種であるバッチ式MSPCで設備の異常兆候を検知・解析できる現場型診断装置「SignAiEdge(サインアイエッジ)」だ。タッチパネル付きのモニター型で、工場にある既存設備に簡単に導入できるのが大きな特徴だ。低価格で、中小企業の課題解決にも貢献する。
富士電機独自のバッチ式MSPC技術は、あらかじめ学習させた正常時の状態(モデル)と、実際の設備稼働データを比べて異常の兆候を即座に検知・解析して警告を発する。
保全管理システムや電子点検マニュアルを組み合わせると、装置からの警告を当日の保全計画に自動で反映し、即座に作業員が現場に向かって故障しそうな設備を点検できるなど、さらなる保全省力化につなげることが可能だ。
「OnePackEdge(ワンパックエッジ)」もまた、日本のものつくり現場が抱える重要課題を解決する。工場内にあるメーカーの異なる複数の設備をまとめて、データを収集・蓄積・可視化(見える化)し、解析まで提供できるのが特徴だ。
期待できるシステム導入効果として、異常の予兆検知により設備停止を従来比で30―50%低減するほか、使用中の工具の状態を見える化することで工具費を同3%削減できる。また、映像と設備稼働データを紐付けて見える化でき、設備停止原因の調査時間を同50%短縮できるという。
実際に大手自動車メーカーでは、ライン上にある複数の加工装置やカメラなどからセンサーデータや電力量、加工データを集約し、設備状態を一覧で見える化することで、QCD(品質・コスト・納期)活動を支援している。
日本のものつくり現場は人手不足や生産性向上、デジタル革新(DX)が喫緊の課題であり、AIなどの先進的ツール導入が欠かせない。そのなかで、社内外の製造現場を知り尽くした富士電機ならではのソリューションに対する期待値は高い。
同社はこれからも独自のAI・IoT技術と幅広い機器を組み合わせたシステムソリューションにより、顧客とともに生産性向上や省エネルギーをワンストップで実現していく方針だ。
(2019/12/12 05:00)