社説/全人代きょう開幕 米中対立続けば世界に禍根残す

(2020/5/22 05:00)

米中の対立が先鋭化している。世界が立ち向かうべきは新型コロナウイルス感染症の収束と世界同時不況の回避である。

中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)がきょう、北京で開幕する。コロナ禍からいち早く立ち直った国として、経済復興の道筋を高らかに宣言する場と位置付けていたが、国内外の情勢は予断を許さない。

中国の1―3月の国内総生産(GDP)は前年同期比6・8%減と、統計公表以来初のマイナス成長となった。全人代で示される予定の2020年の成長率目標が大きな注目点となる。

強力な都市封鎖と輸出の激減で、企業業績が悪化、失業率も急拡大している。もともと中国の企業債務の多さは指摘されていたが、コロナ禍でその課題が深刻さを増した。企業改革と雇用を守る政策が示されなければ、内需の回復は見込めない。

成長を支える外需にも暗雲が襲う。習近平国家主席体制で経済強国の一大戦略として、デジタルインフラ整備が掲げられ、第5世代通信(5G)やデータセンター、人工知能、電気自動車の充電設備などを世界市場で展開する計画が進む。新興国だけでなく、欧州に5Gの活用を猛烈に売り込んでいる。

こうした中国の姿勢をデジタル覇権と見なして強硬に対立するのが米国だ。トランプ政権は、米国製製造装置を使った半導体の、ファーウェイ向け輸出を禁止する措置をとった。中国は報復を表明しており、対立激化は、日本の半導体・電子部品など関連産業に深刻な影響を及ぼす可能性がある。台湾の半導体メーカーが新規受注を停止するなど具体的な動きも出ている。

新型コロナを巡っても、世界保健機関(WHO)の場で、米中対立の代理戦争のような議論が繰り広げられた。

対立の構図は秋の米大統領選まで続くとの指摘もあるが、長期化は世界に大きな禍根を残す。新型コロナの収束と、その後の経済の立て直しには世界の団結が欠かせない。両国が冷静さを取り戻すよう、日本や欧州は連携して、対立解消への道を探ってもらいたい。

(2020/5/22 05:00)

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