信頼性を追求する 歯車と歯車加工機

(2020/6/9 05:00)

業界展望台

鋼材新評価法 JGMA規格発行

動力を伝達する役割を担う歯車には、高いレベルの形状精度や耐久性が求められる。要求性能を満たす歯車を確実に提供することで歯車メーカーとその製品への信頼性が構築されていく。こうした中、日本歯車工業会(JGMA)では「次世代鋼材測定・評価手法開発プロジェクト(JGMATEプロジェクト)」に取り組み、今年3月、歯車用鋼材の新たな評価法に関するJGMA規格を発行した。

多点硬度測定 普及に力

JGMATEプロジェクトで策定、発行した規格は規格番号JGMA9901-01(2020)、規格名称は「歯車用鋼材のマイクロビッカース硬さ分布の多点測定法とその評価」だ。多点硬度測定による鋼材評価法は世界でも例のないコンセプトであり、JGMAでは同規格の認知・普及活動に力を入れている。

鋼材の品質に関して、一般的に機械メーカーは鋼材メーカーから提出される、化学成分表や機械的性質を記載したミルシートに基づいて、品質規格に適合した鋼材を購入している。近年、ミルシートで品質が規格に適合しているにもかかわらず、早期に機械部品が損傷する事例が発生している。原因としては鋼材中の不純物の生成、組織の異常など、ミルシートでは顕在化しない要因によるものと考えられた。

こうしたことを背景に、JGMAは2016年、鋼材品質に造詣の深い知見者に協力を仰ぎ、鋼材損傷原因究明、鋼材評価新手法の確立と評価手法規格化に向けJGMATEプロジェクトをスタートさせた。

従来の鋼材評価は鋼材製造時の規格適合を証明するミルシートによって行われていた。ミルシートは鋼材の金属化学成分と機械的性質の規格に対する適合性が証明されているが、化学成分および硬度測定を含む機械的性質測定は部分的なもので、深部の製造欠陥などの発見は難しいのが実情だ。

多点硬度測定による評価手法は数百点以上の多点で直線状に硬度を測定し硬度分布を見ることで、将来事故につながるような深部を含む金属組織の異常、異常金属成分の析出などを発見できる。

従来装置で多点硬度測定をすると時間がかかるため、硬度測定機メーカーの参画を得て90分で1200点の測定ができる超高速多点硬度測定装置のプロトタイプ機を開発した。超高速多点硬度測定装置を使用することで計測経路は自由に設定可能で、時間も要しないで硬度測定が可能になる。

この装置を使用し、各種鋼材の硬度測定を実施し、装置の有用性を実証。多点硬度測定による評価法を広める目的で、超高速多点硬度測定装置をもう1台製作した。同装置の開発により多点硬度測定のデータ収集が容易となり、2拠点での測定が可能となった。

JGMATEプロジェクトの大きな目的の一つが新評価法を規格化して業界に広め、損傷による事故を未然に防止することだ。そこでまずは歯車用鋼材として過去に得られたデータと知見を基にJGMA規格化を目指し、19年10月にJGMA規格制定委員会を立ち上げた。

規格制定委員会において審議決定された規格案はJGMAの審議機関に提案され、規格化について審議、議決し今年3月に発行となった。同規格はJGMAのホームページから購入できる。また、今回の評価法はドイツで開催された国際会議で報告され、海外においても高い評価を得られている。

鋼材収集・データ蓄積

JGMAは今後、同規格の周知を図る一方、新たな鋼材の収集とデータの蓄積を進めていく。まずは同規格を歯車業界に広め、次いで熱処理や鍛造など関連業界へ広めたいという。また、規格の運用評価を行い、さらなる鋼材のデータ収集・蓄積を進めた上で歯車用鋼材として日本産業規格(JIS)化したい考えだ。最終的には現在運用されているJIS鋼材規格の品質付属規格として機械部品全般の鋼材規格とすることを目指している。

今回の規格を運用することで新たな鋼材の品質評価が可能となり、事故防止につながる原因を排除することができ、グローバリゼーションが進む中、日本製機械製品の品質、信頼性向上が図られることで日本の産業競争力確保につなげたいとしている。そのためにもこの評価法に対応する評価装置を製作するメーカーの参画を期待している。

(2020/6/9 05:00)

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