社説/オンライン講義と教育の質 大学改革への好機と捉えよ

(2020/7/29 05:00)

新型コロナウイルス感染症は、大学教育における質の保証という長年の課題をあらわにした。苦しくとも、変革の機会だと前向きに捉えたい。

コロナ禍で大学はオンライン授業が浸透し、量や数値では計れないとされた教育の質がクローズアップされている。大半の大学と教員がオンライン授業を経験し、それまで見えずにいた教員の教育力があぶり出されている。

従来、講義は決められた学生しか教室で受けられなかった。それがオンライン化で、他の教職員や学生も、様子をうかがえるようになった。

あるトップクラスの大規模国立大学では、一般教養の物理の同じ授業を、学生数十人ごとのクラス別に教員4人が各自のやり方で教えてきた。ところがオンライン導入でその中身が明らかになり、「あの先生の授業は魅力的だが、他の3人はちょっと…」とうわさが広がった。

別の国立大学の学長は「落ち着いたら必ず、対面の補習授業でフォローをする。そうでないと極端な話、『私のクラスは、あの程度のオンライン授業だけなのか』と訴訟になる」と身構えている。それだけ教える教員によって授業内容にバラつきが生じているということだ。

政府は「骨太の方針2020」において、デジタル人材の育成や教育・研究環境のデジタル化・リモート化の推進を掲げた。中長期的にオンライン授業が定常化すれば、優れた1教員の授業が広く配信され、教育に必要な教員数は今の数分の1になるかもしれない。用意する教室や建物の数や種類も変化し、施設整備の計画や予算も違ってくる。学生の志望校の条件も当然、変わってくるだろう。

政府が検討する国立大学法人改革においても、戦略的な大学経営を可能とする、新たな法的枠組みの検討を進めるとしており、大学経営の面でも大きな変革期を迎えている。

コロナ禍は大学の在りようを質の面から、大きく揺さぶる事態を引き起こした。それを前向きに捉え、自ら変革する行動に取り組んでもらいたい。

(2020/7/29 05:00)

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