住宅産業/住まいの中の「和室」とその利点 

(2020/7/31 05:00)

業界展望台

住まいのナビゲーター 山本倫子

  • 機械すき和紙でできた畳表。水をはじき、カビ・ダニの発生を抑える効果がある

最近のコロナ禍で、家族の看護に和室が役立ったとの声を聞く。近年の和室は床の間や長押(なげし)、鴨居(かもい)、襖(ふすま)などを備えた伝統的な空間というよりも、畳敷きの床座の部屋として好まれる傾向がある。和を感じられるスペースとして和室を設ける場合もある。また、現代生活に合わせた機能的な畳も重宝されている。近年、ライフスタイルの変化や建設コストがかかるなどの理由から新築の家に和室を設けない傾向が続くが、和室の多様性とその利点について考えてみたい。

「和」の空間の取り入れ方

畳敷きの床座は日本人に馴染みのある文化であり、住まいの広さを表す共通の物差しとして「畳(じょう)」が使われている点からもうかがえる。しかし、和室が自宅になかった世代も増えるなど、新築時に和室を設けないケースも多い。またマンションではライフスタイルの変化やバリアフリー化のため、和室を洋室にリフォームする事例も見られる。

  • 移動式の畳。軽くて薄いため持ち運びや収納に適する

一方で、和室は移動できる家具を設置し、目的に応じて柔軟に部屋の用途を変えられる特性がある。リビングの隣に設け、壁や天井の仕上げを統一すると空間に広がりができる。モダンな床の間や飾り棚を採用することでインテリア性の強い和室を演出することや、フローリングに置き畳を設置し、気軽にくつろぎ空間を作ることも可能だ。

また、リビングの隣に取り入れられることが多い小上がりの和室は、多様な使い方ができる。

和室の床を15センチから40センチほど高くすることで、リビングと和室の空間の中に緩やかな境界ができる。寝転んでも下に寝ているという感覚がなく安心でき、ちょっとごろ寝、小さな子供を寝かせる、取り込んだ洗濯物をたたむ―などの用途に使え、リビングからのゴミの侵入を、段差が防いでくれたりする。段差の部分には収納機能を持たせたり、掘りごたつを設置したりできる。また洋室で椅子に座っている人と和室の床座の人では、目線の高さが30センチから35センチほど違うので、和室の床を高くすることで隣のリビングに座る人との目線高をそろえることができる。

ただし、床が高くなった分、天井高には注意したい。また将来的にバリアフリーにしたい場合はリフォームが必要になることがある。段差の高さによっては、小さい子どもの落下の危険性があるので注意したい。

以上のように、家族構成やライフスタイルに合わせて、和空間をどのような部屋として使いたいのかを考えることが大切である。

和室を設ける際の注意点

洋室に隣接して和室を設ける場合、従来の畳の敷き方では床に数センチの段差が生じてつまずきやすいので、最近ではバリアフリーとして段差を設けない傾向が多くみられる。一方、前述の通り、空間の切り替えがしやすいことや、洋室からのほこりが入りにくいなどの利点もある。床面がフラットなことに違和感を覚える場合は、和室の用途に応じた境界の設け方を考えたい。

LDKに隣接した和室の場合、キッチンの煙や臭いが和室まで広がりやすいので、換気には十分配慮する。また和室との間の建具は引き戸が多く、機密性が低くて音が伝わりやすい。テレビの位置は和室とできるだけ離し、和室を寝室利用する場合は引き戸ではなく扉にするなど防音性を持たせたい。一方で、人の気配が伝わりやすいので安心感が得られる利点もある。

頻繁に来訪者が宿泊する場合や、両親との同居を視野に入れた場合は、リビングを通らなくてもトイレや浴室に行けるような動線にする配慮が必要である。

メンテナンス費用としては、畳や障子、襖の張り替え費用などがある。畳は硬いものを強く押しつけたり、重い家具を置くとへこむので、部分的に板敷きにすると良い。また、い草畳の日焼けを避けるには、できるだけ紫外線を防ぐことが求められる。和紙や樹脂の畳表でも、ほこりや湿気がたまるとカビやダニが発生することがあるので、掃除と換気には注意したい。

自宅看護時の利点

リビング隣の和室で看病する場合、病人の状況が把握しやすく、また看護人も付き添いやすいという利点がある。特に、子どもや高齢者を自宅で看護する場合に和室が役立つことがある。畳は防音性やほこりを吸収する働き、調湿効果があり、また柔らかくクッション性もあるので、トイレなどで立ち上がったときに転倒しても衝撃が少ない。

新型コロナウイルスをはじめとした感染症にかかってしまった場合、家族への感染予防のため病人は個室で看護、ほかの家族は一時的に和室を寝室とする利用方法もある。

最近の和室と畳の機能

  • 家具のような畳。複雑な施工工事が不要で、収納スペースが設けられている(写真3点 大建工業からの提供)

多湿な日本の風土で生まれた畳は、夏は涼しく、冬は冷たさを感じにくく、素足でも肌ざわりが良い。近年ではモダンな和室が求められるようになり、畳縁がなく色の豊富な正方形の琉球畳のようなものも見られるようになった。

従来の畳は「畳床と畳表と畳縁」でできている。畳床は稲わらを重ねたものを麻糸などで縫い固めたものだが、最近ではカビやダニが発生しにくく軽量なポリスチレンフォームなどの建材畳床が主流だ。

一方、畳表は昔からのい草で作られた畳のほか、機能性のある和紙や樹脂を使った畳もある。水で拭けるように防汚加工がされ、カビやダニが発生しにくく、色も豊富などの特徴がある。ペット用の畳もあるので、襖や障子などを耐久性のある建具にすると、和室はペットにも快適な空間となる。

さらに、洋室をリフォームしないで和の快適性を得られる方法として、置き畳や畳ユニットがある。置き畳は並べるだけで簡単に畳のスペースができる。従来の畳と違って薄いので、片付けや収納に便利である。畳ユニットは既製品の畳収納家具のことで、例えばリビングから続く小上がりの畳コーナーを、形や広さを自由に選んで組み合わせて設けることができる。

最後に

「和」の空間は多様性があり、取り入れ方によって現代の生活様式に合った快適な空間となる。住まい手が住まいに何を求めるかを確認して、また将来的なことも考慮しながら、うまく取り入れ方を工夫してみてほしい。

【プロフィル】やまもとのりこ

住まいのナビゲーター 一級建築士 福祉住環境コーディネーター2級

1996年より一級建築士事務所を主宰し、戸建て新築、リフォームを中心に活躍。2010年から「住まいづくりナビセンター」の「住まいのナビゲーター」として住宅相談、セミナー講師を担当。

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