衛生性と効率を向上させる 食の技術 HACCP義務化に対応を

(2020/8/12 05:00)

業界展望台

  • 「職人芸」といわれる繊細な作業も確実にこなす食品製造機械。技術の進展に伴い、活躍の場が広がっている。

生活に欠かせない「食」を扱う産業は徹底した衛生管理や労働力不足を補う効率化が求められる。日本で国内人口が減少する一方、世界全体では人口増加が進んでおり、日本の「食の技術」が活躍できる場は大きく広がっている。国内課題解決として省人化技術を活用しながら、海外マーケットに通用する衛生管理を追求することが必要だ。

ロボ・IoT活用

改正食品衛生法により6月から食品衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」に基づく衛生管理が食品関連事業者に義務づけられた。1年間の猶予期間があるが、来年6月までには対応必須だ。違反すると各自治体が定めた罰則を受ける恐れがあり対応が急務となる。

HACCP方式は原料受け入れから最終製品までの各工程を管理して製品の安全性を確保する方式だ。従来方式では抜き取り調査による品質確認が一般的だった。しかし、抜き取り調査を逃れた不良品が流通するリスクがあり、問題が見つかっても原因を特定することが困難だった。

HACCP導入により、食品ロス率の低下や品質の安定、現場状況の適切な把握などさまざまなメリットを受けられる。このほか、食品安全の国際規格「FSSC22000」などの衛生規格があり、企業価値の向上や海外への取引拡大といった点で認証取得が推奨される。新型コロナウイルスの影響で関心が高まる衛生管理動向にぜひ注目してほしい。

食品製造現場では国内の人口減少を原因として人手不足が課題となっている。省人化や自動化、効率化に向けて、ロボットなどの自動化装置やIoT(モノのインターネット)の活用が進んでいる。こうした自動化の動きは工場内の衛生管理にも大きく役立つ。

食材には壊れやすいものや柔らかく傷みやすいものが少なくない。ロボットの把持技術の進歩により、従来の課題であった繊細な物体をつかむ力加減の制御が可能となってきている。ロボットが扱える食材の幅が広がったことでより一層の自動化が期待できる。

食品の衛生管理・品質管理などにおいてはIoTによるデータ蓄積と見える化が効果的だ。HACCP導入による工程管理の負担を大きく軽減し、食の安全を確保できる。人手不足、衛生管理の社会的要請を背景に特に関心が集まる。

日本食品機械工業会主催の「FOOMA JAPAN2020大阪」の中止対応策として「WEB展示会」が8月31日まで開催される。新製品を含む出展製品が多数紹介されており、出展分野ごとに検索できる。

インタビュー/日本食品機械工業会会長 海内栄一氏 アフターコロナへ新提案

  • 海内栄一氏

―新型コロナウイルス感染拡大による食品機械業界への影響は。

巣ごもり消費により冷凍食品やハム・ソーセージ関連、テークアウトの総菜など売り上げが伸びた分野はあるが、業界全体で機械の売り上げは現状低下している。2019年の食品機械販売額は前年比1.9%減の5706億円だったが、20年はさらに12%落ち込むと見ている。ウィズコロナ・アフターコロナの変化に対応し、新たな提案をしていきたい」

―省人化・自動化のほか、食の安全や衛生という要素が注目されています。

「食品機械は一つひとつがロボットのようなもの。ラインでうまくつなぎ合わせ、システム全体を見える化することがこれからの工場設計で重要だ。生産現場の中で自動化された食品機械を活用していけば、現場で働く人数を減らすことができ、衛生性が向上する。日本ではロボットといえば6軸多関節のように考えがちだが、現場では水平軸や3軸で十分なことも多い。海外では食品業界向けにオールステンレス製の耐水ロボットなども販売されている。日本のメーカーもこうした商品開発を進めてほしい」

―FOOMA JAPAN開催中止の対応策として「WEB展示会」が始まりました。

「この状況下で会員企業のために少しでも役に立てることをしたく実施した。多角的に製品を見て、出展者と来場者で情報交換が行えるリアル展示会の醍醐味(だいごみ)はなかなか再現困難だ。しかし新たな集客ツールとしての可能性を感じている。今後のリスクに備えるためにも展示会に代わるツールを持っておく必要があるだろう」

―衛生・品質管理の動きはどのように見ていますか。

「日本は欧州をはじめ、海外から10年ほど遅くHACCPを義務化した。日本の食品機械を海外に売り込むためには海外情勢に後れを取らず衛生規格に対応していくことが必須だ。当工業会は食品機械の安全・衛生要求を定めるISOの国内審議団体としても今月から動いていく」

―今後の食品機械の需要動向をどう読みときますか。

「世界全体の人口増加が続く中、必要な食品も増えていく。特に食糧不足で悩む地域は食品保存・加工の技術に課題を抱えている。そうした伸びしろがある地域に食品機械を導入していただき、課題解決を手助けしたい。日本にはバラエティー豊かな食文化とそれらを国内で作ることができる技術がある。食品が乏しい地域に明るい兆しをもたらしたい」

「FOOMA JAPAN 2020」WEB展示会はこちら https://www.foomajapan.jp/

(2020/8/12 05:00)

関連リンク

おすすめコンテンツ

図解!製造業の管理会計「最重要KPI」がわかる本
会社を本当に良くして事業復活するための徹底解説

図解!製造業の管理会計「最重要KPI」がわかる本 会社を本当に良くして事業復活するための徹底解説

技術大全シリーズ 
塗料大全

技術大全シリーズ 塗料大全

SDGsアクション
<ターゲット実践>インプットからアウトプットまで

SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで

日本製造業の後退は天下の一大事
モノづくりこそニッポンの砦 第3弾

日本製造業の後退は天下の一大事 モノづくりこそニッポンの砦 第3弾

令和上司のすすめ
「部下の力を引き出す」は最高の仕事

令和上司のすすめ 「部下の力を引き出す」は最高の仕事

図解!わかりやすーい強度設計実務入門
基礎から学べる機械設計の材料強度と強度計算

図解!わかりやすーい強度設計実務入門 基礎から学べる機械設計の材料強度と強度計算

Journagram→ Journagramとは

PR

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

↓もっと見る

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件、無料登録会員は最大30件の記事を保存することができます。

会員登録/ログイン

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用してしています。このバナーを閉じるか閲覧を継続した場合、クッキーの使用に同意したこととさせていただきます。なお、クッキーの設定や使用の詳細についてはプライバシーポリシーページをご覧ください。

閉じる