社説/アスリートのキャリア支援 スポーツで得た資質を社会に発信

(2020/8/5 05:00)

アスリートが競技を極める過程で培った自己管理能力や目標に突き進む経験は、ビジネスの世界でも生かされるのではないか。産業界とスポーツ界が連携したキャリア支援に期待する。

五輪延期や各種競技大会の中止、部活動の自粛が相次ぐこの夏。アスリートやアスリートを目指す若者の心中は察するに余りある。しかし、不本意ながらも与えられた時間の一部を自身の人生を設計する、あるいは見つめ直すことに充ててみてはどうか。人生100年時代。自身を取り巻く環境変化に応じたスキルセットや働き方改革が求められるのはビジネスパーソンだけでなく、現役引退後の長い人生を考えればむしろアスリートにこそ重要な問題だからだ。

国もトップアスリートが安心してスポーツに専念できるよう、効果的なキャリア支援を行う仕組みづくりを目指している。日本スポーツ振興センター(JSC)は、アスリートが自身の経験を生かし、社会課題の解決につながるビジネスを立ち上げる際の事業資金を支援する基金を設立予定だ。民間企業から出資を募り、アスリートによる商品やサービスの開発を促す。引退選手と就職先となる企業をマッチングさせる事業や、現役時代から引退後を見据えた学びを推奨する動きもある。

一連の取り組みのカギとなるのはスポーツという閉じた世界でその意義を語るのではなく、産業界をはじめ社会との接点を増やし広く発信する姿勢だ。

「アスリート経験は引退したら終わりではない。その資質を『資本』と捉え戦略的に転用すべきだ」。こう指摘するのは法政大学の田中研之輔教授。そのためには「その資質を産業界に訴求できる言語に『変換』する努力が必要」と訴える。産業界とスポーツ界が連携を深める意味はこの点にある。

目の前の目標を見失いかけている若者に、「長期的な視点で人生を描け」などと語りかけるのは酷かもしれない。しかし、それぞれの活躍を社会全体で後押しし続ける姿勢が、わずかながらでも踏み出す力になればと願う。

(2020/8/5 05:00)

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