次世代自動車充電インフラ機器・設備

(2020/9/2 05:00)

業界展望台

普通充電 急速充電 シーンに応じた設置を

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった次世代自動車の普及が進む。二酸化炭素(CO2)の排出削減効果が高いほか、災害時には非常用電源として活用できる。次世代自動車のさらなる普及のため、充電インフラの整備が大きなカギとなる。近年の充電インフラ機器・設備の動向や各社の取り組みについてまとめる。

全国で充電スポット拡大

次世代自動車振興センターの統計によると2018年度の国内のEV・PHVの保有台数は約23万6000台だ。国内でEVが本格的に市場投入された09年から、保有台数は毎年伸び続けており、着実に普及が進んでいる。

EV・PHVは外部電源により車載バッテリーを充電する必要がある。充電方法は普通充電と急速充電の2種類ある。出発地で行う基礎充電、移動途中の経路充電、目的地で行う目的地充電などの利用シーンを想定し、適した方式の充電スタンドを設置する必要がある。

普通充電は単相交流100ボルトまたは200ボルトの電源を用いる。車載バッテリー容量により異なるが、200ボルトの場合は満充電まで約4―8時間かかり、100ボルトの場合はその2―3倍ほどの時間を要する。出発地充電や目的地充電向きであり、充電スタンドは家庭やレジャー施設など長時間の駐車が想定される場所に設置される。設置コストが少なく、導入は容易だ。

  • 菊水電子工業のEV充電コントローラーと直流電源の組み合わせ

急速充電は三相200ボルト電源を用い、30~60分ほどでバッテリー充電量80%程度までの充電が可能だ。そのため充電スタンドはサービスエリアやパーキングエリアなど、短時間での充電が求められる場所に設置される。国内では主に国際標準の急速充電規格「チャデモ」が普及している。

ゼンリンの調べでは全国の急速充電スポットは20年3月末時点で7866カ所だ。経済産業省による「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金」制度による後押しもあり、充電スポット数は拡大を続けている。

近年は車載バッテリーの電気を建物で利用する「V2B(ビークル・ツー・ビルディング)」が注目を集める。そのため充電だけではなく、車載バッテリーから建物への放電機能も備えた充放電器も販売されている。電気代の安い夜間にEV・PHVの充電を行い、昼間に建物へ給電することで電気代を節約でき、ピークシフトにも貢献できる。災害時の非常用電源としても利用可能だ。

堀内電気(福岡市博多区)は電気設備の設計施工会社だ。福岡県を中心に、長崎県や鹿児島県にも拠点を構える。太陽光発電などの設備に加え、EVの充電スタンド施工も請け負う。

充電スタンドは適したコンセントがあれば、簡単に設置でき、設置費用もさほどかからない。EVを導入している企業にとって、ランニングコストの削減にもつながり、メリットも多い。

同社は家庭用充電設備の施工もしている。太陽光発電や公共工事によって培った確かな技術が同社の魅力だ。施工だけでなくアフターフォローも迅速に対応する。

コントローラー・電源組み合わせ EVテストソリューション提案

車載EMC基準などの試験に

地球温暖化防止や石油依存度の低減など、環境問題や資源問題への切り札として、EVやPHVの研究開発が加速している。これに伴い、交流および直流を使ったバッテリー充電システムなど、新たな自動車用電子機器が増加している。

欧州官報ECE R10は、車両などの相互承認に関する国際的な協定に基づいて、国際連合が発行した自動車や自動車への取り付けを意図したデバイスのEMC(電磁両立性)に関する規則だ。

EV・PHVでは、車載EMC基準のほか、一般EMC基準、製品安全基準をクリアしなければならない。規格要求の試験項目には再充電可能エネルギー貯蔵システム(REESS)の充電モードの有無が明記され、イミュニティー耐性やエミッション測定を行わなければならない。

菊水電子工業のEV充電コントローラーは、同社の直流電源との組み合わせで、さまざまな使い方が可能だ。小容量電源との組み合わせなら充電通信チェッカー用として、大容量電源との組み合わせならフル充電用として使用できる。

直流電源、交流電源、直流電子負荷との組み合わせにより、EV模擬やEV充電ステーション模擬からバッテリーの放電試験や車載充電器のエージングなど、EVテストソリューションも提案できる。さらに、車載充電器向け電気安全規格試験には、電気安全試験器も用意している。同社は、車の進化とともに起こるさまざまなイノベーションを支え続ける。

(2020/9/2 05:00)

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