社説/大阪都構想 地元産業界も率直な表明を

(2020/10/28 05:00)

大阪市を廃止し、四つの特別区を設置する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が11月1日に実施される。5年前は僅差で否決された。約130年の歴史を持つ大阪市の存廃が改めて問われる今、地元産業界も率直な意見を発信してもらいたい。

地域政党「大阪維新の会」が打ち出した大阪都構想。賛成派は、成長戦略やインフラ整備などの広域行政を大阪府に一元化し、府市の二重行政をなくして大阪を東京に匹敵する大都市に成長させるとの主張を繰り広げる。一方の反対派は、現時点で二重行政はなく、政令指定都市が一度なくなると元に戻せず弱体化し、市民サービスも低下すると主張する。両派の主張は真っ向からぶつかっている。

都構想について地元産業界は一定の距離を置く。大阪商工会議所の尾崎裕会頭(大阪ガス会長)は「どういう制度になっても、大阪をどう発展させるかを考えないといけない。(個人的には)制度が変わらないからといってまずいことはない」と語る。別の経済人は「四つの特別区設置は下手をすれば五重行政になる」と否定的。一方、大阪市内の中小経営者は「(都構想が可決され)特別区が独自予算で、地域密着の中小支援策を打ち出してほしい」と期待する。

かつての“商都”のような勢いある大阪を取り戻すべく、大阪維新の会は知事・市長の両ポストを得た2011年以降、府市一体での改革を進めてきた。府市それぞれの観光振興部署や公設試験研究機関、産業支援機関などを相次ぎ統合し、大阪府立大学と大阪市立大学も統合により22年に新大学が誕生する。大阪で二度目となる国際博覧会の誘致にも成功した。直近の新型コロナウイルス対策では司令塔を大阪府に統一し機動力を発揮、全国的に存在感を高める。

大阪都構想が今後の大阪経済にどう影響するのか、不透明な環境下でその判断は難しい。最終的に意思決定するのはあくまで大阪市民だが、地元の企業や経済団体も大阪の在り方や将来像を自由闊達(かったつ)に議論し、都構想に対して意見表明をしてもらいたい。

(2020/10/28 05:00)

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