社説/地域金融機関の収益力低下 規制緩和を機に事業改革急げ

(2020/11/5 05:00)

地域金融機関の収益力が低下傾向にある。新型コロナウイルス禍で傷んだ地域経済を立て直すには、地方銀行や信用金庫の事業構造改革が急務だ。

小売りや宿泊などコロナ禍で影響の大きい業種の資金繰りと生産性向上には、実態をよく知る地域金融機関のきめ細かな支援が欠かせない。それだけに銀行の収益力低下が懸念される。

地域金融機関はメガバンクに比べ融資業務への依存度が高く貸出金利低下の影響を受けやすい。全国地方銀行協会がまとめた2019年度決算状況によると、地銀64行の業務純益は10年前より約3割減少した。

金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会は、出資規制緩和や業務範囲拡大などの収益力向上策を議論している。金融機関による事業会社への出資は現在、本業以外の投資で経営の健全性が損なわれないよう、原則5%または15%までに制限されている。地域活性化に資すると認められた事業会社には最大50%出資が認められている。

金融庁は年内に出資規制やデジタル化対応などの業務範囲の緩和策をまとめ、来年の通常国会で銀行法改正を目指す。

構造不況下にある企業にはITや福祉など成長産業へ業態転換を促す方法もあろう。事業再生や承継で地域活性化につながる企業に対しては、地域金融機関が出資で時限的に経営を下支えできるよう、出資規制を大胆に緩和すべきだ。

収益力が低下する地銀同士の合併は「対症療法」に過ぎず、問題の本質的な解決にはならない。収益源の多様化や事業の効率化による体質強化が最優先課題である。

産業の新陳代謝を進めるのも地域金融機関の重要な役目だ。デジタル化の進展で地方にベンチャーが根付く環境は整い、都市部から地方へ本社を移転する企業も見込まれる。自治体と連携し企業誘致に注力したい。

特に地銀は規制緩和を契機に投資や商社機能、人材派遣といった多角的なアプローチにより、地域の再生や創生に貢献する総合コンサルティングで存在感を発揮してもらいたい。

(2020/11/5 05:00)

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