東芝の若き技術者たち(3) ~原発廃炉という長い戦いに挑む~【PR】

(2020/10/7 05:00)

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点を取るだけがバスケットボールじゃない

野球は9人、ラグビーは15人、バスケットボートは5人でプレイするチームスポーツである。しかし、そこには先発選手が怪我をした際の交代要員として控える選手や、ピンポイントのチャンスを生かすために監督やコーチからの呼び出しを虎視眈眈と待ち構える選手がいる。さらに、ベンチ入りこそしていないが、チームを支える多くの選手たちがいる。その選手たちすべてが目指すのは、勝利の二文字である。

中学・高校とバスケットボール部のキャプテンを務めていたというのが、今回の主役である、東芝エネルギーシステムズ株式会社 原子力機械システム設計部の玉井和樹氏だ。

「大学に進学してからも、バスケ漬けの日々は変わりませんでした。変わったのは、チーム内でのポジションでした」

  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社 原子力機械システム設計部 玉井和樹氏

高校までは、試合に出るのが当たり前だったと語る玉井氏だが、全国から強者が集まる大学チームでは、それまでと同じという訳にはいかなかったという。

「もちろん、試合に出たい気持ちは誰にも負けません。でも、チームの勝利のためには、もっと強い選手がいるなら、その選手が出るべきだと思っていました。だからといって、手を抜くようなことはありません。隙あらば自分がコートに立つつもりでいましたから。私は、試合に出て点を取るだけがバスケじゃないと思っています」

そんな玉井氏には、尊敬するバスケットボールプレイヤーがいる。2020年にNBAを引退したヴィンス・カーター選手だ。カーター選手は、NBAで22年にわたりプレイヤーとして活躍してきた。

「カーター選手は、40歳を過ぎても現役でいるために、今の自分の役割をしっかりと見つめて、それを実行していたんです」

玉井氏も、それに倣い、その時々に所属していたチームでの自分の役割を見つけて、努力してきたという。

「そして、今は東芝で、私が技術者としてやらなければならないことがあります」

玉井氏が現在手掛けるのは、福島第一原子力発電所の廃炉に関わるエンジニアリング業務だ。

2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震による津波の影響で、福島第一原子力発電所で炉心溶融などの重大な事故が発生したことは記憶に新しい。現在、福島第一原子力発電所では、建物から燃料を取り出していく「廃炉」の作業が行われている。この作業の中で最大の課題となっているのが、燃料デブリの取り出しだ。

「燃料デブリを取り出すためには、まず燃料デブリが原子炉圧力容器内でどんな状態になっているのかを把握しなければなりません。そのための方法を考えることが私の仕事です」

燃料デブリとは、事故で原子炉圧力容器内の燃料が溶け、制御棒やコンクリートなどと一緒に固まった物を指す。

「燃料デブリは、現在は冷却されて安定した状態を維持していますが、施設が事故によって損傷していることからも、一刻も早く取り出して、安定的に保管できる場所に移す必要があると考えられています。また、格納容器内に溶け落ちたデブリの様子は、すでに東芝が開発したロボットにより確認されていますが、圧力容器の内部は事故後まだ誰も見ることができていません。今回のプロジェクトは、世界初の試みとして注目されています」

一筋縄では進まない、巨大プロジェクト

「国家プロジェクトでは、とにかくいろんなステークホルダーがかかわっています。そして、そのことによってプロジェクトが様々な影響を受けてしまうことがあります」

今回のプロジェクトの目的は、原子炉の内部で燃料デブリがどういう状態になっているのかを調査することだ。しかし、その調査自体が高度な技術を要するために、大きな時間とコストがかかる。そして、その大きなコストのプロジェクトを行うためには、プロジェクトの結果がコストに見合う物であることを提示しなければならない。そのためには、燃料デブリが原子炉の内部でどういう状態になっているのか知ることの必要性が明確でなければならない……といったように課題がループしてしまう可能性があるという。

  • どこかで明確な方向性を打ち出せなければ、課題がループを繰り返してしまう!

「そんなときに、しっかりとした方向性を打ち出せるような意見があれば、すべてのステークホルダーに同じ方向を向くこともできると思っています。チームスポーツと同じで、全員が目指すのは、勝利の二文字なのですから」

この福島第一原子力発電所の廃炉作業には、30年から40年かかると言われている。

「40年もかかると、今年入社したばかりの人でも、最後まで見届けられるかどうかわかりません。完了は次の世代になるかも知れませんが、私がやらなければならないのは、まずこの一歩目なんだと思っています」

玉井氏は、親戚に教員の多い家庭で育った。そのためか、物心ついた頃から自分も学校の先生になりたいという夢を抱くようになったという。

「大学に入って、具体的に将来を考えるようになって、少し人生設計が変わりました。『教員になるのは、会社員になった後からでも遅くない』と父親に言われたこともあり、それなら大きなことをしてみたい、たくさんの人の役に立つ、インフラの仕事がしてみたいと思い始めました」

そんなとき、東芝で原子力事業に携わっていたバスケットボール部のOBと出会う。

「東芝の原子力発電事業について話を聞いているうちに、ここで仕事がしてみたいと思うようになりました……なんて言えば、少しかっこいいのかも知れませんが、大きな転勤がないことや、休暇が取りやすく、バスケを続けていけそうだったところにも惹かれました」

しかし、原子力技術者としての夢を大きく膨らませていた学生時代の玉井氏のもとに、大災害のニュースが飛び込んだ。

「私は、2011年に入社でした。大震災は、大学の卒業式直前の出来事だったんです。でも、すぐに東芝のリクルーターの方からの安否確認とともに、『大丈夫。これからが、がんばりどころだ』っていう言葉をもらいました。『大丈夫』の根拠はよく分かりませんでしたが、力づけられた事は確かです。そして家族にも『チャレンジしてみなさい』というエールももらいました」

玉井氏は、福島第一原発の廃炉作業は、非常に特殊な作業だが、やりがいと使命感のある作業だという。

「我々東芝の原子力プラントメーカーとしての技術力を、世界中の技術者が注目しています。さらに、その技術は、福島の復興のため、そして日本の未来のためにあるのだと思っています」

東芝での技術者生活を振り返り玉井氏は語った。

「今考えてみると、ずいぶん若い頃からいろいろチャレンジさせてもらって来たと思います。そして、駆け出しの技術者だった私の話を、役職に関係なくチームのみんなが真剣に聞き、議論してくれました。最初は、こんな風通しの良さが普通だと思っていましたが、だんだんとそれが『東芝の社風』だとわかりました。だから、私も、後輩たちにたくさんチャレンジさせ、議論し、そして、互いに協力し合い、ともに成長していきたいと思ってます」

最後に、インフラを手掛ける技術者としての目標を語った。

「インフラ事業は、東芝だけで完結するプロジェクトではありません。社内外のいろんな方たちと協力し合って進めていくことが多い仕事です。だから、社内外を問わず、誰からも信頼される技術者になりたいです」

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(2020/10/7 05:00)

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