社説/震災10年 エネルギー転換 再生エネと原発、ともに推進を

(2021/3/9 05:00)

国民の理解を得ながら、安全かつ安定した電力の供給体制を実現したい。

東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故はそれまでの原発の安全性評価の危うさを国民に見せつけた。

新たな安全基準に適合して再稼働した原発は西日本の数基にとどまる。震災直後、原発停止に伴う化石燃料たき増しの経済損失は年3兆円超と試算された。実際には石油などの価格下落で損失幅は圧縮され、電気料金の高騰は免れた。再生可能エネルギーが存在感を高め、供給力の一翼を担うようになったことも一因だろう。

ただ日本のエネルギー構造は依然として化石燃料の輸入に偏り、安全保障でも供給でも不安定な状態にある。中東情勢の変化などで調達に支障が出れば、たちまち危機に見舞われる。また火力頼みの現状は、温室効果ガス削減の障害にもなっている。このエネルギー構造の転換は進んでいない。

東日本大震災後の10年の間にも、新たな教訓が得られた。2018年の北海道胆振東部地震による北海道内の広域停電(ブラックアウト)は、泊原発の代替として負荷のかかっていた火力発電所の停止が最大の原因だった。電力自由化で発足した新電力のうち自前電源を持たない電力会社では、酷暑や厳寒のたびに供給不安が台頭した。いずれも供給力がネックであり、中長期的な改革が望まれる。

解決策の第1は再生エネの主力電源化である。固定価格買い取り制の縮小で、太陽光への投資意欲は減退している。再生エネの余剰を蓄電したり、大消費地に届ける送電設備も不足している。新規投資が必要であり、その負担が電気料金に影響することは避けられない。

解決策の第2は、原発の再評価である。原子力はコストと二酸化炭素排出量の両面で優れた発電技術だ。既存原発の改修には巨大な費用がかかるが、小型炉などの新技術を活用して安全性を高めればエネルギー構造の転換に大きな役割を果たす。既存原発の置き換えとしても、準備を進めていくべきだ。

(2021/3/9 05:00)

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