社説/原発処理水の放出決定 科学的知見で内外の理解深めよ

(2021/4/14 05:00)

丁寧な説明を何度でも繰り返す必要がある。

政府は13日に開いた関係閣僚会議で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する方針を決めた。実際の放出は2年後をめどとする。周辺の漁業者などの風評被害に対しては東電が賠償する。

科学的に安全が確認できた処理水を、いつまでも原発敷地内に貯留し続けることは合理的ではない。また貯留によって、処理水に対する根拠のあいまいな一般からの忌避感を固定化してしまう恐れもある。現在の状況下で、海洋放出は妥当な解決方法だろう。

処理水放出に対する懸念や臆測に対しては、科学的な説明を今後も続けていかなければならない。その上で東電が、風評被害を受ける事業者に適切に賠償をすることは当然だ。

処理水は国際基準に合致するレベルまで放射性物質を除去したものだ。危険な高レベルの汚染水とは違う。東電の計画によれば、除去しきれない放射性トリチウム(三重水素)は海水で数百倍に薄めることで基準値を大幅に下回るレベルにする。

具体的な放出方法は東電が今後決めるが、定期的なモニタリングで水質管理を徹底する。国際原子力機関(IAEA)も放出に関して安全性を確認している。今後も国やIAEAが高い透明性で監視することで、環境汚染への懸念を排除していく。

そこまでしても、風評による被害を拭い去るには時間がかかるだろう。当面は関係者に賠償し、中長期的には被害が出ないことを実証し、国民の理解を得てもらいたい。韓国のように処理水放出を政治・外交問題化しようという動きには、科学的知見に基づいた説明を世界に積極的に発信して対処すべきだ。

残念ながら福島第一原発は廃炉の完了まで冷却水が必要であり、汚染水を生み続ける。タンク管理がおろそかになり、万一、未処理の汚染水があふれ出す事態になったら大問題だ。処理の終わった水を適切に放出し、常に放射性物質をコントロールできる体制にすることが望ましい。

(2021/4/14 05:00)

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