4月18日は発明の日

(2021/4/16 05:00)

業界展望台

4月18日は「発明の日」。1885年4月18日に現行特許法の前身である「専売特許条例」が公布されたことに由来する。特許や意匠、商標など、産業財産権の普及・啓発を目的に制定された。知的財産として保護される内容・範囲などは、時代とともに変化している。日本の産業競争力を高めるためにも、知的財産の創出や保護、活用のあり方について、あらためて考えたい。

知財戦略を後押し イノベーションを創出

コロナ禍で企業業績が悪化する中、産業界の知的財産戦略を支援する動きが強まっている。政府は手続きのデジタル化などを盛り込んだ「特許法等の一部を改正する法律案」(特許法改正案)を3月に閣議決定しており、知財創出を加速させる方針だ。知財権の取得・活用は将来の稼ぐ力に直結し、ひいては

日本の産業競争力にも影響する。特許庁は特許法改正案に加え、短期間で特許を取得できる「スーパー早期審査」などを通じて日本企業のイノベーション創出を後押ししている。

  • 特許庁は特許法改正案に加え、短期間で特許を取得できる「スーパー早期審査」などを通じて企業のイノベーション創出を後押ししている

コロナ禍では社内の知財関連業務が進まず、出願に遅れが生じている。特許庁が公表した2020年の特許出願件数(速報値)は、前年比6・4%減の28万8405件だった。知財関連業務に関する社内のすり合わせが進まず、出願が減ったとみられる。ただ、特許権の登録件数は安定的に推移し、現存件数も増加傾向にあるため「量から質への転換が進んでおり、それほどイノベーション創出は停滞していない」(特許庁関係者)という。

こうした状況を踏まえ、特許庁はウィズコロナ時代に対応した知財行政に向けて特許法改正案をまとめた。所管する梶山弘志経済産業相は会見で「新型コロナの感染拡大に伴う生活様式や企業行動の変革に対応するため、知的財産制度にかかる手続きのデジタル化、デジタル化の進展に合わせた権利保護の見直し、知的財産制度の基盤強化を図ることを柱にしている」と語った。

手続きのデジタル化に関しては、特許料などの支払い方法で口座振り込みによる予納(印紙予納の廃止)や、窓口でのクレジットカード払いを可能とする措置を盛り込んだ。また現在、特許無効審判などの口頭審理は対面で主張している。法改正ではウィズコロナ時代の非対面ニーズを踏まえ、審判長の判断により当事者らが出頭することなく、ウェブ会議システムを用いて手続きすることを可能にする。

手続きのデジタル化など法改正へ 出願 量から質へ/早期の権利化 下支え

知財制度の基盤強化では審査負担の増大やデジタル化に応じるため、特許料などの料金体系を改定し、減少傾向が続く特許特別会計を改善する。近年、日本企業は案件を厳選して出願する傾向が続いているが、実ビジネスに寄与する特許登録件数は年間17万―18万件程度を維持しており、知財活動の停滞はみられない。イノベーション創出の機運は堅調なことから、料金体系の見直しを通じて同会計の持続的な運営を図り、産業界の知的創造サイクルを後押しする。

他方、イノベーションを収益に結び付けるには、早期の権利化が欠かせない。そこで特許庁は08年からスーパー早期審査制度の試行を開始した。通常、審査請求を行ってから1次審査までの順番待ち期間は約10カ月かかるが、同制度は「実施関連」で「外国関連」に該当する重要案件を対象に1カ月以内に通知する。現在は平均0・6カ月で通知しており、ITなど展開の早い業種の知財戦略を下支えしている。

ベンチャーへの支援も拡充しており、18年度からは「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」を実施している。具体的には、有望なベンチャーを対象に専門家が知財メンタリングチームを組成してハンズオン(伴走型)で助言する。経営コンサルタントや弁理士、弁護士らが連携することで、最適なビジネスモデルの構築と、そのモデルに合致した知財戦略を策定する。

一方、海外での早期権利化については「特許審査ハイウェイ(PPH)」の取り組みを拡大している。ある特許庁が特許可能と判断した場合、この当局の審査結果を他方の国・地域の特許当局が活用して審査を迅速に行う仕組みだ。例えば米国でPPHを申請した場合、審査待ち期間が通常の出願に比べて約60%短縮した。日本企業は「知財に関するグローバルポートフォリオが構築しやすくなった」(特許庁関係者)という。

ウィズコロナ時代における知財行政の変革が期待される。

インタビュー/経済産業省 特許庁長官 糟谷敏秀氏 AIで審査高度化/海外文献検索も高精度化

グローバルな経済活動への対応、迅速で高度な審査体制、コロナ禍で浮かんた課題への対処など特許を巡る要求は日々高まっている。変化し続ける情勢に対応するため、政府は3月に特許法の一部改正案を閣議決定した。デジタル化に対応した手続き整備や権利保護の見直し、知的財産保護制度の基盤強化を柱にどんな施策を講じるのか。糟谷敏秀特許庁長官に狙いを聞いた。

□ □

―今通常国会で成立を目指す改正法案はどんな内容ですか。

「口頭審理のオンライン化や印紙予納制度の廃止、災害などで期限までに特許料を払えない際の割増料金免除などを盛り込んだ。デジタル化の進展で権利保護を手厚くするため、個人使用目的で輸入する模倣品を税関で止められるようにする。手続き遅れで権利が失効した時に日本は回復の要件が非常に厳しく1―2割しか認められていないが要件を緩和できるようにする。2014年度から赤字が続く特許特別会計は料金見直しを図るほか、農林水産知財で弁理士が海外で出願できようにもしていく」

―コロナ禍への対応策はどうでしょうか。

「約500種の手続きのデジタル化に着手し、人工知能(AI)活用による審査の高度化を多方面で進めている。世界中の特許文献が増え、英語圏以外にも対応する外国文献検索システムを特許庁で内製化した。審査官が使い勝手を確認して精度を高めている。文字と画像が組み合わせや意匠などは思った精度が得られなかったが、ある新興IT企業との意見交換で『特許庁はこんなこともしているのか』と驚かれ、道を外れたことをやっていないと確認できた」

―ベンチャー支援の「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」の成果は。

「知財の専門家とスタートアップとのメンタリングで18年から約40社を支援した。過去2年の経験からスタートアップがつまずく課題と対応策も公開している。お金も人も限られているスタートアップは知財での戦略をなかなか立てられない。支援を経て『気づきの機会を得た』との意見が非常に多い」

―国際連携に関する動きはどうですか。

「19年に日本企業の海外での特許登録件数が国内を超えた。我々が審査を早く実施し、海外での早期権利化を支援する『特許審査ハイウェイ(PPH)』で現地での特許を認められる支援を進めている。現在46カ国と結んでいるが、日本の特許庁がハブとなるような役割を果たしたい。締結内容によって件数の上限を設ける国もあるが、撤廃の動きも進めて深耕を図っていく」

(2021/4/16 05:00)

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