社説/公益通報体制の整備義務化 自浄作用が働く企業文化を

(2021/4/30 05:00)

企業などに内部通報体制の整備を義務づける改正公益通報者保護法の施行まで1年余となった。企業は形だけで済ませず、自浄作用が働く強靱(きょうじん)な組織文化をつくる推進力にしたい。

改正法は従業員300人超の企業に対し、内部通報の窓口設置や調査、是正措置などの体制整備を義務化した。行政は実効性を確保するために助言や指導、勧告を行い、勧告に従わない場合は企業名を公表する。

保護対象は、現役社員に役員や退職後1年以内の元社員を追加。通報窓口の担当者には守秘義務を課し、違反した場合は30万円以下の罰金を科す。2022年6月までに施行する。

同法は相次ぐ食品偽装やリコール隠しなどの不祥事を受け、善意の通報者が解雇や降格といった不利益な取り扱いを受けないよう06年に施行された。だが通報者の保護が不十分なため、社員が安心して声を上げられる環境にはなかった。

制度が機能する体制づくりを着実に進めたい。労働者の意識や行動は、雇用形態の多様化や順法意識の高まりなどを背景に変化しつつある。

消費者庁が労働者を対象に行った調査によると、労務提供先で不正行為を知った場合の最初の通報先は「労務提供先(上司を含む)」が5割強を占める。一方で「行政機関」や「その他外部(報道機関など)」も4割強に上る点は留意が必要だ。

内部告発により不正が社外にいきなり露見すれば、内部統制システムや企業統治に問題があるとみなされ、信用やブランド価値を損ないかねない。急な不祥事対応は準備不足から風評リスクを高める懸念がある。

生きた制度にするには社内の理解と協力が欠かせない。運用段階では上司が部下から通報を受けたり、通報事案の調査に社員が関わったりすることも想定される。社内規定を設け、社員や役員などにも守秘義務厳守の周知徹底が望まれる。

大企業でも不祥事で経営の屋台骨が揺らぐ時代だ。社外にも窓口を設けるなど通報しやすい環境づくりを通じて早期に不正の芽を摘んでおきたい。

(2021/4/30 05:00)

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