社説/産業政策の新機軸 転換には財源議論が必要だ

(2021/6/21 05:00)

経済産業省が新たな産業政策を模索している。対中国を見据えた経済安全保障などの観点から、大規模な財政支出を伴う産業政策への転換の必要性を訴えている。主要国で最悪とされる財政の健全化と両にらみで議論を深めたい。

経産省が産業構造審議会(経産相の諮問機関)に提出した「経済産業政策の新機軸」は、世界経済の不確実性の高まりに警鐘を鳴らしつつ、時代の変化に合わせた新たな産業政策に政府全体で取り組む重要性を訴えている。中でもデジタル社会を支え、経済安全保障にも直結する半導体は「死活的に重要」と位置づけた。

コロナ禍、先進国の長期停滞、デジタル変革(DX)、環境問題、米中摩擦に象徴される地政学的リスクなど、世界には複数の不確実性が存在する。これら課題への欧米の対応は早く、バイデン政権は総額約440兆円を投じる成長戦略を打ち出し、半導体業界には5・7兆円の助成金を支給する方針だ。欧州連合(EU)も「欧州復興パッケージ」で約240兆円をイノベーションや環境対策、デジタル化に投じる。

米国は政府が民間介入を強める産業政策に否定的だったが、世界経済を巡る大きな変化が軌道修正を迫った格好だ。中でもイデオロギーで対立する中国との技術覇権争いに軸足を置く。日本の経産省が欧米と歩調を合わせるように産業政策の転換を模索することは、民主主義国が世界経済をけん引していく上で重要な視点と評価できる。

ただ課題もある。大規模な財政支出を補う財源の壁だ。米国は法人増税などで支出の一部を賄う。日本はこうした増税や社会保障制度改革による歳出削減に踏み込む覚悟が求められる。

安倍晋三前政権は成長戦略を通じた景気拡大により税収を増やす“上げ潮”で財政健全化を目指した。だが想定できないコロナ禍など不確実性が表面化すれば経済は停滞し、健全化目標は遠ざかるばかりだ。激変する世界への対応と財政問題をいかに両立させるか、菅義偉政権の大きな課題になる。

(2021/6/21 05:00)

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