産業春秋/天災と諦め

(2021/8/11 05:00)

「堪忍の、なる堪忍は誰もする。ならぬ堪忍、するが堪忍」―。江戸期に台頭した心学の教えだが、現代で最もこの言葉が知られているのは古典落語『天災』だろう。

短気でケンカっ早い長屋の男。手を焼いた大家は、心学の紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)先生に教えを乞えと送り出す。気にいらないことがあれば相手を殴り飛ばすと荒れまくる男に「では、広い野原でにわか雨にあったら、どうなさる?」。

「そりゃ、ケンカしようもないから諦める」と男は降参。先生は「何ごとも天から降りかかったものと思えば腹も立つまい。人に水を掛けられても天の災と思いなされ」と諭す。

“にわか心学”に目覚めた男がこの後、どんなこっけいな事件を巻き起こすかは寄席でお楽しみいただくとして、現代人は総じて「諦め」が苦手だ。自然災害やコロナ禍でも、第三者の責任を追及する気持ちになりやすい。

寛容な「堪忍」は一面では社会の潤滑油。「最後まで諦めない気持ち」は速く、高く、強くを目指すスポーツ選手にこそふさわしい。立秋が過ぎ、五輪の閉幕、高校野球開幕と暦は秋へと変わり、台風災害も本格化する。天災でむやみに腹を立てないためにも、平素の備えをしっかりしたい。

(2021/8/11 05:00)

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