モノづくり日本会議 モノづくり力徹底強化検討会・第13回勉強会「DX時代のモノづくり&サービス⑧」

(2021/9/8 05:00)

モノづくり日本会議は7月16日、モノづくり力徹底強化検討会第13回「DX時代のモノづくり&サービス(8)」として、熊谷昌毅千代田化工建設執行役員CDO(最高デジタル責任者)の「プロジェクト遂行、プラント操業におけるDXの取り組み」と題するオンラインセミナーを開催した。デジタル技術の進展によって、産業設備(プラント)のEPC(設計・調達・建設)プロジェクトの遂行や、操業にもデジタル変革(DX)の波が押し寄せている。同社の手法の紹介を中心に、プラントを通じた産業界の未来を展望した。

プロジェクト遂行、プラント操業におけるDXの取り組み

  • 千代田化工建設 CDO(最高デジタル責任者)執行役員デジタルトランスフォーメーション本部 本部長・熊谷昌毅氏

当社は総合エンジニアリング企業として、エネルギーと地球環境の未来を創るエンジニアリングの提供を通し、水素社会をはじめとする脱炭素社会への移行を高い技術力で加速し、カーボンニュートラル達成に貢献したいと考えている。

DXを通じて、設計(エンジニアリング)・調達(プロキュアメント)・建設(コンストラクション)によってモノづくりの装置を創る「EPCプロジェクト遂行DX」と、モノづくりの装置のDXに相当する「プラント操業DX」といったビジネスモデルを強化する。

ツール供給で合弁

EPCプロジェクト遂行DXの例として、大規模な石油やLNG(液化天然ガス)プロジェクトを挙げる。大規模なプラント建設は世界的に見て、非常にリスクが大きいプロジェクトと昨今言われている。7割程度のプロジェクトでコストやスケジュールの超過が発生するというデータもある。

複雑なプロジェクトだが、コスト、スケジュール超過の原因を見える化して把握し、早期の対処を可能にするなど、変革が求められている。解決するにはデジタル化が急務だと考える。

石油・LNG設備建設プロジェクトなどの課題は、個々の設計要素が影響し合いながら詳細設計が進み、設計の手戻りが発生しやすいことなどがある。土木工事のために設計情報を揃(そろ)えることが困難だったり、種類の多い資機材発注の難しさもある。

そこで各種設計を並行して進める「コカレントエンジニアリング」と、設計、調達と建設の連携がカギを握る。データセントリック(データ中心)な遂行により、設計と設計、設計と調達、工事計画と情報を、タイムリーに共有し、設計図と資機材がオンタイムで現場に届くようにしなければならない。

データセントリックなプロジェクト遂行を支える手法としてAWP(アドバンスワークパッケージング)を活用し、デジタルツールとして設計図書管理システム、資材管理システム、現場作業員と安全の管理システム、情報をコントロールするインテリジェント3Dモデル、工事一つ一つをタグづけするタグ管理システム、図面や材料を管理するデータ連係ダッシュボードなどを開発し、運用している。また、設計業務の自動化にも取り組み、空間自動設計のツールを開発・提供する合弁会社をスタートアップ企業と昨年設立した。それらを連携させ、プロジェクト遂行のDXを加速している。

最新技術融合

お客さまのプラントの操業のDXの支援も行っている。プラント業界は不透明な需要環境の影響で収益性が確保しづらく、大規模な投資が難しいとされる。また、脱炭素ニーズで、プラント運転にも環境配慮が求められる。さらに高経年設備が多く、劣化のリスク、次世代への操業技術や知見の伝承の課題もある。これらの課題をDXで解決していきたい。特に既存アセットを最大限活用して、デジタルあるいはAI(人工知能)の力で、プラント操業のDXを進める。

当社が提案するのはエンジニアリング知見とデジタル・AI技術を融合したデジタルソリューションおよび、DX構想立案支援からソリューション提供までの一貫したDXサービスだ。プラント操業に対して、運転の効率化、設備異常の予知、ベテラン運転員の技術・知見の伝承などに対して、解を出すものだ。ゆくゆくはこのソリューションを高度化し、プラント操業の自動化や自律化を展開していく。また、石油・ガスプラントでの実績を、他産業設備向けのソリューションとして拡大中だ。

社内4大変革

当社は7月に組織を変革し、全社でDXの取り組みを加速している。DXビジョンとして四つの変革を実現し、新しいリーディングエンジニアリングカンパニーを目指す。私はCDO(最高デジタル責任者)として、この四つのDXを進める。まずプロジェクトについてのDX。コーポレートDXは業務関係、働き方改革やビジネスマネジメントに対する補強、人材管理の高度化などだ。DXビジネスはデジタル技術によって新しい事業を創造したり、事業開発を加速すること。そして、人財マインドDXはデジタル人財を育成して、社員全員のDX意識を改革し、DX文化を醸成して基盤を創る取り組みだ。

遂行組織としては社長直下にCDO室を設置し、社内各本部から20人以上のDO(デジタルオフィサー)を任命し、各本部・事業部で任命したDXエバンジェリストと連携し、取り組みを加速している。全社挙げてのDX加速で、社会産業のDXをエンジニアリングし、お客さまやパートナーと新しい価値の共創を目指す。

(2021/9/8 05:00)

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