(2021/10/6 05:00)
地球温暖化と気候変動の関係を最初に数値モデルで指摘した成果が大きく輝いた。
スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、米国籍の真鍋淑郎米プリンストン大学上席研究員(90)ら3人に授与すると発表した。受賞理由は「地球温暖化の予測モデルの作成」。
真鍋氏は東大院修了後に米国立気象局(現米国海洋大気庁)に入局。温室効果ガスの増減に大気と海洋が及ぼす影響について、コンピューターを用いて予測する手法「大気海洋結合モデル」を開発した。
真鍋氏らは同モデルを用いて仮想の地球で温室効果ガスの濃度を変化させ、濃度が高くなるほど温暖化が進むことを示した。当時はこの予測の正しさは検証できなかったが、後に正しいことが観測から確認された。
真鍋氏が指摘した温暖化モデルを、我々は現実世界で身をもって知ることとなった。世界で気候変動の影響と思われる災害が頻発している。真鍋氏の功績をたたえ、脱炭素に取り組む決意を新たにしたい。
日本人のノーベル賞は1949年に湯川秀樹博士が物理学賞を受賞したのが最初。自然科学3分野の日本人受賞者は今回の真鍋氏のような外国籍を含めて25人となった。
現在の日本の研究開発、とりわけ基礎研究力は弱体化が懸念されている。日本の論文提出数は1年間に7万本強で横ばいが続く。深刻なのは、トップ10%に入る論文数が急速に低下していることだ。
4日に発足した岸田文雄政権は、成長戦略の第1に「科学技術立国の実現」を掲げた。先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行い、10兆円規模の大学ファンドを年度内に設立する方針。若手研究者が安心して研究に取り組める環境の整備が求められる。
産業界は基礎研究の重要性を指摘しつつも、硬直化した学術界の現状を憂慮している。10年20年先にもノーベル賞受賞者を多数輩出する国であり続けるために、若手研究者への支援を惜しむべきではない。
(2021/10/6 05:00)