社説/エネルギー基本計画 国民への丁寧な説明が必要だ

(2021/10/26 05:00)

脱炭素とエネルギーの安定供給を両立させるには、イノベーションの加速と原子力発電の着実な利用が欠かせない。

政府は「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定した。最大の注目ポイントである2030年の電源構成は、再生可能エネルギーの比率を、19年時点に18%だったものから36―38%に引き上げ主力電源化を徹底する。一方で、19年時点で76%を依存する火力発電は41%と大幅に引き下げる。原子力発電は再稼働を前提に現行計画と同じ20―22%とする。

政府は31日に始まる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向け、30年時点の温室効果ガスを13年度比46%削減する目標を提出した。提出に合わせるために、7月に策定したエネ基の素案段階で指摘されたさまざまな課題をのみ込んだまま決定したといえる。

すべての電源には課題が待ち受ける。再エネをどう拡大させていくのか、コストはどこまで上昇するのか、原発の再稼働は実行できるのか。明確な道筋はほとんど見えていない。

世界のエネルギー事情を見渡せば、石炭や液化天然ガス価格の急騰など、化石燃料への過度な依存に大きなリスクが内在するのは明らかだ。一方で、再エネ拡大の調整電源として火力の役割は引き続き重要である。

水素・アンモニア発電や二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)など、火力の脱炭素技術が、一見矛盾する課題を解決する方策となる。日本は率先してこの分野の技術革新を推進し、世界に貢献すべきだ。

もうひとつの課題は原発の位置づけである。政府は今回のエネ基で新増設方針を封印したが、小型炉の研究開発は進めると明記した。安全が確認された原発の着実な再稼働を進め、使用済み核燃料の貯蔵や核燃料サイクルの推進を図るには、立地地域の協力が欠かせない。

エネルギーの安定供給は経済安全保障の根幹である。総選挙後に誕生する新政権は、将来の日本が進むべき道筋や必要なコストについて、課題から目を背けず国民に示してもらいたい。

(2021/10/26 05:00)

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